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アギーレ監督に求められる“遺産”の有効活用、「ザックジャパン時代からの上積みのなさ」への不安と課題

浅野祐介OneNews編集長

スコアは6−0。ホンジュラス戦の大勝を受けて、セルジオ越後氏は「(アルベルト)ザッケローニの遺産を使ったね。今日の試合で一番喜んでいるのはザッケローニなんじゃない?」と皮肉に笑った。スタメンに名を連ねた11名のうち、武藤嘉紀を除く10名がブラジル・ワールドカップのメンバー。同氏は「まるでザックジャパン+武藤嘉紀」と、ホンジュラス戦の陣容を表現した。

日本代表対ホンジュラス代表戦は6−0で日本が勝利した。相手の力量からして、日本のすべてがよく見える試合だったね。ゴール前であれだけフリーになれる試合はそうそうない。チャンスを逃さずに決めていれば、10点取れてもおかしくなかったよ。強化マッチ、テストマッチとしてはあまり意味を見いだせなかったのが率直な感想だ。

アギーレ監督はこの試合でブラジルW杯を戦った選手たちを多く戻した。スタメンの顔ぶれを見ると、まるでザックジャパン+武藤嘉紀、という陣容だった。アジアカップを獲ることを考えた時に現実的な路線を取ったということだろうが、つまり、これまでの4試合で試してきた多くの若手では足りなかったということだ。

アンダー世代も軒並み世界への切符を逃しており、日本の育成がうまくいっていないことの証明とも言える。相手の問題はあるにせよ、そうした若手よりも今日のメンバーの力量が大きく上回っているのは間違いない。

下からの突き上げがない、あるいは突き上げるチャンスはあってもそれを生かせられなかったという事実は、6得点大勝したこと以上に嘆かわしいね。ザックジャパン時代からの上積みが感じられないことに不安を覚える、あるいは不満に感じているのは僕だけじゃないんじゃないかな。

次のオーストラリア戦が、アジアカップまでの最後の1試合になる。おそらく今日のメンバーを中心としたチームで、熟成度を高めていくのであろうけど、仮にそれでいい戦いができたとしても、4年後の彼らの年齢を思うと手放しで喜ぶことはできない。大きな宿題を抱えたまま年越しを迎えることになりそうだ。

もちろん、「メンバーの刷新」が新監督に課せられるミッションではないし、前任者の4年間の歩みを完全にリセットする必要もない、と個人的には思う。ホンジュラス戦でワールドカップ以来の日本代表戦に臨んだメンバーで言えば、Jリーグの後半戦で好調をアピールする遠藤保仁は豪快なミドルシュートで“復帰弾”をマークし、キャプテンの長谷部誠も不慣れなアンカーの位置で奮闘。右ひざの状態が不安視された内田篤人も本田圭佑らとの右サイドでの連係で改めて存在感を示した。

一方で、ホンジュラス戦はセルジオ越後氏の指摘する「ザックジャパン時代からの上積みのなさ」を顕著に印象づける一戦となったことも事実だ。来年1月に控えるアジアカップもそうだが、ハビエル・アギーレ監督に課せられたミッションは4年後のワールドカップでの成果。アギーレ監督には、ザッケローニ前監督の遺産を最大限に有効活用しつつ、間違いのない選択と歩みを期待したい。

セルジオ越後のサッカー日本代表論まとめ

OneNews編集長

編集者/KKベストセラーズで『Street JACK』などファッション誌の編集者として活動し、その後、株式会社フロムワンで雑誌『ワールドサッカーキング』、Webメディア『サッカーキング』 編集長を務めた。現在は株式会社KADOKAWAに所属。『ウォーカープラス』編集長を卒業後、動画の領域でウォーカー、レタスクラブ、ザテレビジョン、ダ・ヴィンチを担当。2022年3月に無料のプレスリリース配信サービス「PressWalker」をスタートし、同年9月、「OneNews」創刊編集長に就任。

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