アスリートだからこそできる「まちづくり」

(写真:アフロ)

「健康なまちづくり」が必要

3月4日、筆者が所属する大阪ガス株式会社 地域共創部門 近畿圏部主催で「健康なまちづくりシンポジウム」が開催された。少子・高齢化による人口減少や人口構造の変化に伴い、まちの風景も大きく変わってきている。医療費の抑制や健康寿命延伸、地域創生などは重要な社会課題としてその解決に向けた取り組みが進められている。これらを解決し、自分の住むまちに誇りを持ち、世界一住みたいまちの担い手は地域に住む市民である。子どもから高齢者まで全ての市民が健康で生き生きと暮らせるまちづくりが、今後必要になってきている。

筆者は、今回のシンポジウムでは市民とともに子どもの健全育成や中高年の健康づくりを目指す活動をしているトップアスリートとして参加させていただいた。障がい者の立場からパラリンピックメダリストが経験を語り、病気と闘いながら自らの活動を社会課題解決に活かそうとしている団体やマスターズシンクロチームを指導するオリンピックメダリストの活動報告も行われた。そして、それらの活動をどうすれば「健康なまちづくり」に落し込めるのかを、都市計画の専門家とともに議論した。

活動報告
活動報告

筆者が主催する陸上クラブ「NOBY T&F CLUB」では、現在、小学校1年生から79歳の高齢者まで元気に体を動かしている。運動する楽しさや陸上競技の技術を学ぶのはもちろんだが、子供らが自主性を持って社会で活躍できる力を育みたい思っている。五輪メダリストの巽樹里さんが率いるマスターズシンクロチームの平均年齢はなんと71歳!健康増進や老化防止に効果があるが、それよりもレッスン後のレッスンより長いカフェタイムがメンバーの何よりの楽しみだ。がん患者の集まる「サバイバー」では、がん患者の皆さん自身が抱えている悩み不安を取り除くことだけではなく、病気を経験したからこそ、その価値を社会の課題解決に繋げようと前向きにチャレンジしている。パラリンピックメダリストの山本篤選手は競技やイベントなどで人と接することで、施設だけではなく、「心のバリアフリー」の実現を目指している。社会の一員として、障がいも個性としてとらえて欲しいとうったえかけた。そして、都市計画の専門家である関西学院大学 角野幸博教授には、それらの活動をどう「健康なまちづくり」に落とし込んでいくか意見をいただいた。ユニバーサルデザイン総合研究所 赤池学所長にコーディネートしていただいたが、一見バラバラな各々の活動が1つの方向に集約されたことが印象的であった。

登壇者によるディスカッション
登壇者によるディスカッション

アスリートが旗振り役に

これまで、「スポーツと健康」はよく語られることがあったが、実際には、健康になるためのスポーツや運動を体験する単発的なイベントが行われることが多かった。スポーツや健康に興味のある人がたまに行われる催しに参加するだけだと多様な人との繋がりも乏しく、コミュニティーの醸成には繋がりにくい。日常の生活の中にもっとスポーツや運動、健康が身近に感じられ、それ自体が目的ではなくても人が集え語り合える場所や機会を増やさなければいけない。それには施設だけではなく、参画する自治体や企業、学校、スポーツ団体、NPOなどが総合的に情報や価値観を共有し実践することが重要であるが、何よりも人の心が動かなければならない。

2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機に、市民が健康で生き生きと暮らせるまちをつくるためにアスリートが自ら活動し、けん引していくことが、ひいては我々が育ったスポーツ環境をより良いものにしていくことに繋がるのではないだろうか。