社会のために役立てる? それとも取り戻す? あなたの「休眠預金」

解約していない古い口座を探してみましょう。もしかしたら、まだ残高があるかも。(ペイレスイメージズ/アフロ)

◆どんな場合「休眠預金」になる?

 「暑い、暑い」と言っているうちにもう9月。年を追うごとに時間が経つのが早くなっていると感じる人は私だけではないと思いますが、このままだとアッという間に今年も年末を迎えそうです。

 それまでにやっておいたほうがいいことのひとつに、「使っていない銀行口座の整理」が挙げられます。少額のお金を残したまま放置している口座は思い当たらないでしょうか。「休眠預金」となっていて、来年から引き出しが面倒になる可能性があります。

 「休眠預金」とは、銀行など金融機関の口座に預けっぱなしになっている預金のこと。2016年12月に成立し、今年1月に施行された「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律(以下、休眠預金等活用法)」によると、「最終異動日等から10年を経過した預金等」と説明できます。

 この法律の施行前は、金融機関によって休眠預金扱いになるまでの年数が2年、5年、10年などまちまちでしたが、「10年」に統一されたかたちです。

 休眠預金等活用法の対象となる「預金等」には、私たち生活者が一般的に利用しているものとしては、普通預金、通常貯金、定期預金、定期貯金、定期積金などが該当します。財形貯蓄、外貨預金、仕組預金などは「預金等」には含まれません。また、郵政民営化がスタートした2007年10月1日より前に預けた定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金も、休眠預金になりうる「預金等」には該当しません。

 そして「異動」とはどういう場合かですが、全金融機関共通の「異動」にあたるのは、入出金(金融機関による利子の支払を除く)や手形・小切手の提示による第三者からの支払請求(金融機関が把握できる場合に限る)があった場合など。また、金融機関が行政庁の認可を受けて「異動」と認められるケースに、預金者による通帳や証書の発行・記帳・繰越、残高照会、預金者の申出による契約内容や顧客情報の変更などがあります。

 つまり、日常的に入出金などお金の出入りがある口座は「休眠預金」になることはありませんが、通帳の記帳や残高照会だけを行っている場合、金融機関によっては「休眠預金」になることもあり得るということです。

 過去を振り返ってみましょう。

・学生時代にアルバイト代を振り込んでもらうため口座開設したが、就職を期にメインバンクを変更した

・家賃やお稽古代などの引き落としのために指定された銀行・支店に口座を開設したが、その後引っ越したり習い事をやめたりで使わなくなった

・友人や知人、仕事の関係者などから頼まれ、義理で口座開設した

・合併で同じ銀行になったため、片方の口座を使わなくなった

・引っ越しや結婚の時に住所変更手続きや改姓手続きをせず、新しい口座を作ってしまった

などの経験はないでしょうか。少額の預金を残したまま忘れてしまっているケースも少なくありません。

 特に留意したいのは、引っ越したのに住所変更手続きをしていないケースです。残高が1万円以上ある口座の場合、金融機関は最終異動日から経過した9年~10年6か月の間に、原則郵送で注意喚起の通知を行います。届出の住所を変更していなければ、宛先不明で手元に届かず、そのまま「休眠預金」になってしまうと考えられます。無事に届いた場合は、「休眠預金」とはなりません。

 残高が1万円未満の場合は郵送の通知は行われませんから、気づかないまま「休眠預金」となります。

◆社会的事業に有効活用される「休眠預金」

 「休眠預金」の残高は増加傾向にあり、2015~2017年度は全金融機関の合計額で年間1300億円前後。払い戻された分を差し引いても、年間700億円程度が休眠したままです。9割が残高1万円未満ということですから、チリも積もれば山。大きなお金となります。

 このお金を有効活用しようということで誕生したのが「休眠預金等活用法」です。すでに、アイルランド、英国、フランス、カナダ、米国、韓国などでは「休眠預金」を福祉などの社会的事業に活用しており、日本でもできないかと2012年頃から議論されてきました。それがいよいよスタートするということです。

 具体的な「休眠預金」の活用先は、(1)子どもや若者への支援(2)日常生活や社会生活を営む上での困難を有する者の支援(3)活力の低下その他の社会的に困難な状況に直面している地域の支援、の主に3分野に係わる事業と限定されており、対象もNPOなどの民間団体への助成・貸付・出資となっています。

 活用される「休眠預金」は、2009年1月1日以降に最後の異動があった預金等、つまり2019年1月1日以降に「休眠預金」となるものが原則として対象になります。

 これまで「休眠預金」は各金融機関が管理していましたが、2019年1月1日以降は「預金保険機構」に移管され、管理されることとなります(実際に移管される時期は金融機関によって異なります)。

 そして、助成・貸付などの有効活用が始まるのは、2019 年秋以降となる見通しです。

 なお、金融機関は移管の対象となりうる預金等について、移管の前にHPなどで電子公告を行うことと定められています。いつ公告が行われるかは金融機関によりますが、前述の残高が1万円未満の口座や1万円以上でも住所不明で通知が届かなかった口座も対象。どれほどの人が自分の「休眠預金」に気づくか、はなはだ疑問ではあるものの、チェックしてみるといいかも。

 金融機関が公告を開始した日から2か月~1年を経過するまでの間に移管が行われることとなっています。

◆10年経過後も引き出すことは可能

 「預金」は預ける側にとって金融機関に対する「債権」ですが、「時効」があります(銀行預金は商法522条により5年、信金・信組の預金は民法167条第1項により10年)。そのため「休眠預金」になると預金者の権利が失われ、会計上は銀行の利益金として処理されてきました。

 ただし、没収となるわけではなく、全国銀行協会の自主ルールにより、申し出ればきちんと預入期間分の利息もつけて払い戻してくれます。

 それは今後も変わりません。預金保険機構に移管された後も、取引のあった金融機関を通じて払い戻しの手続きを行うことはできます。

 とはいえ、手続きの手間や日数がこれまでより増えることが予想されます。ですから、「休眠預金」に思い当たるのであれば、今年中に対処したほうがよいと思われます。

 いまでも状況によっては、「休眠預金」の払い戻し手続きは面倒なものです。住所が変わっている場合は旧住所が記載されている住民票などが必要、旧姓のままの口座だったら戸籍抄本を添付しての改姓手続きが必要となり、それらを揃えるのにもコストがかかります。

 数年前のことですが、実は私にも「休眠預金」がひとつありました。就職してすぐに作った口座で、その後の行動範囲では支店が不便だったため、小銭を残して放置していたのです。試しにATMで引き出し可能かどうか最寄りの支店に行ってみたところ、対応できないキャッシュカードとなっていました。

 そこで窓口で調べてもらったら、銀行の合併や支店の統廃合で当時の店はなくなってはいましたが、データの照会はでき、数10円の残高を確認できました。改姓手続きも必要など、引き出しに必要な書類を揃えるコストに見合わない残高なので、お手数をかけたことだから銀行の利益金でよしとした経緯があります。

 もし放置したままの口座があるなら、時間と労力をかけての払い戻し手続きが割に合うかどうかは残高との相談でしょう。戻せないとしても有効活用されるのならOKと割り切ることもできます。

 残高が分からない場合、通帳やキャッシュカード、運転免許証などの本人確認書類を持って最寄りの支店で相談しましょう。

 二度手間を防ぐために、まずはコールセンターに状況を説明し、必要な手続き方法を確認しておくとよいでしょう。

 なお、郵政民営化スタート前に預けた定額郵便貯金などは、休眠預金になりうる「預金等」には該当しないと前述しましたが、これらは満期の翌日から20年間払い戻しの請求がないと通知書が送られ、送付日から2か月間払い戻されなければ、旧郵便貯金法の規定により権利消滅となって国庫に入ります。

 通常貯金、通常貯蓄貯金については、民営化前に預けたものでも最終取引日から10年経過で「休眠預金」となり、ゆうちょ銀行に請求すれば払い戻しに応じてもらえます。