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10万円に足りなくても「医療費控除」できるかも、対象市販薬の購入1万2000円以上で使える新制度も

浅田里花ファイナンシャル・プランナー(CFPⓇ・1級FP 技能士)
家族で医療費が多くかかったなら、面倒がらず還付申告を行いましょう。(写真:アフロ)

納め過ぎの税金を返してもらえる「還付申告」

 16日から2017年分の確定申告期間が始まります。自営業・自由業などの事業所得者は、3月15日までに申告手続きするのが毎年の恒例行事です。1年間の売上げとそれにかかった経費を元に税額を計算し、書類にまとめて提出するのですが、帳簿をつけたり経費の証拠となる領収書を整理したり、結構面倒くさいもの。

 給与天引きで税金を支払っている会社員・公務員など給与所得者の場合、そういった面倒な作業をしなくて済むのはラッキーかもしれません。

 けれども、確定申告を行って納めすぎの税金を返してもらえる場合があります。決して税務署から「あなたは税金を納めすぎですよ」とは連絡してくれませんから、私たちが納めすぎに気づき「還付申告」する必要があるのです。

 納め過ぎになっている主な事由には、医療費がかさんだ、特定の寄附を行った、災害などで損害を受けた、住宅ローンを組んだなどがあります。それらに認められている「所得控除」で税額計算の対象となる所得額が少なくなり、税額も減るのです。しかし、すでに給与天引きで税金を納めてしまっているため、差額を返してもらうというのが「還付申告」というわけです。

 思い当たる事由があれば、ぜひ「還付申告」を検討しましょう。勤め先任せで税額計算の仕組みなど気にしなかったという人も、税金について考えるチャンスです。

 なお、「還付申告」は翌年1月1日から行うことができ、3月15日以降も5年間提出することができます。過去5年以内に思い当たる事由があるという人は、今から申告しても間に合います。

 中には医療費がかさんだ場合の「医療費控除の還付申告」をしたことがあるという人もおられるでしょう。多くのご家庭にとって、最も利用する可能性があるのが「医療費控除」と思われますが、2017年1月から「セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)」もスタートしており、従来の「医療費控除」とどちらかの選択になります。

 また、2017年分から申告手続きの方法が少し変わります。

10万円かからないとできない?「医療費控除」

 まずは従来の「医療費控除」の基本的な内容を説明すると、よく「医療費が10万円を超えたら確定申告を」と言われるように、生計を同じにする家族に支払った実際の医療費(生命保険などの入院給付金、健康保険の高額療養費などを差し引いた金額)のうち、10万円を超えた分を「医療費控除」として所得から差し引けます。たとえば、実際に支払った家族内の医療費のトータルが30万円だったとすると、そこから10万円引いた20万円が「医療費控除」の金額となります。

 総所得金額が200万円未満の人の場合は、「総所得金額の5%の金額」を超えた分が「医療費控除」として認められます。収入が給料だけの人は、年収310万円以下が総所得金額200万円未満の目安(310万円-給与所得控除額111万円=総所得金額199万円)。

 たとえば、年収250万円の人だと総所得金額は157万円なので(給与所得控除額93万円)、その5%の7万8500円を超えた部分の金額を所得控除できます。

 共働き世帯の場合、通常は年収が多い(税率が高い)人で「還付申告」したほうが、戻る税金も多くなっておトク。けれども、夫婦どちらかが「総所得金額200万円未満」に当てはまる場合などは、ケースによりそちらで申告したほうが多く返ってくることがあります。国税庁のHPでも試算できるので、どちらが多いか確認してみるといいでしょう。

https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tokushu/info-iryouhikoujo.htm#simulate

 医療機関に支払った医療費の実費以外にも、通院のための交通費、市販薬の購入代(治療目的でないビタミン剤などはNG)、治療のためのマッサージなどの施術代などを「医療費控除」の対象として合算できることも知っておきましょう。

 申告手続きに必要な書類は、1.確定申告書、2.2017年分の給与所得の源泉徴収票、3.医療費控除の明細書です。2は1月に勤め先からもらっているはずです。

 1はもよりの税務署に行けば手に入りますが、国税庁HPの下記URLの「作成開始・書面提出」をクリックし、指示どおり入力していくことで完成書類を印刷することができます。

https://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/top_web#bsctrl

 3は2017年分の申告から提出が求められるもので、次のURLからダウンロードすることができます。

http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki02/pdf/ref1.pdf

 これを提出することにより、2016年分まで「医療費控除」の還付申告に必要だった領収書の添付は必要なくなりました。ただし、税務署から確認のため領収書の提示を求められる可能性はあるので、5年間は捨てないでおきましょう。

1万2000円以上の対象市販薬を購入した場合の新制度

 新設された「セルフメディケーション税制」は、勤務先や自治体が実施する健康診断を受けているなど「健康の保持増進および疾病の予防に関する一定の取組」を行っている人が、制度の対象となる「スイッチOTC医薬品」(医師によって処方される医療用から転用された医薬品)を薬局やドラッグストアで1万2000円以上購入した場合、超えた部分を所得控除できるという内容です。

 10万円を超えるほど医療機関にはかからなかったけど、市販薬をかなり購入して治したといったご家庭の場合、当てはまるかもしれません。「スイッチOTC医薬品」であるかどうかはパッケージに記載されているほか、購入時のレシートに記載されています。

「セルフメディケーション税制」の申告手続きは、先の1.2.と3.セルフメディケーション税制の明細書

http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki02/pdf/ref2.pdf

4.健康の保持増進および疾病の予防に関する取組を行ったことを明らかにする書類(健康診断の結果通知表、インフルエンザの予防接種の領収書など)が必要になります。

ファイナンシャル・プランナー(CFPⓇ・1級FP 技能士)

㈱生活設計塾クルー取締役、個人事務所リアサイト代表、東洋大学社会学部 非常勤講師。同志社大学文学部卒業後、大手証券会社、独立系FP会社を経て現職。一人ひとり・家庭ごとに合った資産設計、保障設計、リタイア前後の生活設計等のコンサルティングのほか、新聞・雑誌等への原稿執筆、セミナー講師などを行う。著書に『50代からの「確実な」お金の貯め方、増やし方教えて下さい』、『住宅・教育・老後のお金に強くなる!』、『お金はこうして殖やしなさい』(共著)など。生活を守り続けるにはマネーリテラシーを磨くことが大切。その手伝いとなる情報を発信していきたい。

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