より良い選択のために知っておきたい「先進医療」の実際と誤解

専門性が高くても、医療情報は生活情報としてチェックしておきたい分野のひとつです。(提供:アフロ)

治療の効果と安全性を確認中である「先進医療」

 毎年1月中旬頃、厚生労働省が「前年の6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告」を公表しています。先進医療の現状を確認するのに良い資料なので、興味を持って追いかけているのですが、「平成29年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告」ではどんなことがわかるのでしょうか。

 その前に、そもそも「先進医療」とは何であるのか、生活者が医療を受ける際の意識にも関わってくるので、説明しておきたいと思います。

 「先進医療」とは、健康保険法第63条第2項第3号に記される「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、(健康保険の)療養の給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」のことをいい、「評価療養」の1つに挙げられます。

 つまり、「先進医療」は将来的に健康保険で受けられる治療として認めるかどうか、有効性・安全性を確認している段階の治療ということ。「先進」との言葉から、最先端の治療でバツグンの効果があるというイメージが持たれがちですが、本当に有効で安全かどうかはまだわかりません。それが確認されれば健康保険対象の治療と認められるわけですから、むしろ「保険診療」のほうこそ進んでいると言えそうです。

 

必ずしも高額とは限らない先進医療の技術料

 先進医療は健康保険が使えないのだから「高額」というイメージがありますが、実際のところどうでしょうか。

 まず、先進医療の技術料部分は全額自己負担となるものの、診察・検査・投薬など保険診療部分は健康保険でカバーされることを知っておきましょう。

 本来なら、保険診療と合わせて保険診療外の医療を受けた場合には「混合診療」となり、保険診療部分にも健康保険からの給付は受けられず、全額自己負担となります。それが、先進医療の場合は「保険外併用療養費制度」によって、保険診療部分は保険給付が認められているのです。

 では、自己負担となる技術料にはいくらかかるのか。「平成29年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告」によると、平成29年6月30日時点では102種類の先進医療技術数がありますが、技術料は実に千差万別です。

 102種類のうち、100万円を超える高額の技術がいくつあるかというと21種類。がんの放射線治療で知られる陽子線治療(2,765,086円)や重粒子線治療(3,149,172円)のほか、先天性高インスリン血症の治療のオクトレオチド皮下注射療法(5,410,269円)、肺がん治療のNKT細胞を用いた免疫療法(1,790,531円)などが高額です。

 一方、10万円以下の技術料も30種類あります。定量的CTを用いた有限要素法による骨強度予測評価(1,023円)、前眼部三次元画像解析(3,484円)のように1万円以下のものも。必ずしも高額というわけではありません。

 「先進医療は高額」という思い込み、「高額なもの=良いもの」という刷り込みが、「先進医療は最良の治療」というイメージに結びつけるのかもしれません。

有効との評価が固まれば健康保険で受けられるようになる

 また、保険のCMなどで見聞きする機会が多い「陽子線治療」や「重粒子線治療」が300万円前後かかることから、先進医療とはそれくらいかかるものだと思われている節があります。それらについても、健康保険が使えるケースがあるのはご存じでしょうか。

 2016年4月から、陽子線治療は小児がん、重粒子線治療は手術による切除が難しい骨軟部腫瘍については、健康保険対象の医療となっています。長年に渡る治療の実施により、それらのがんについては効果があると確認されたためです。

 さらに今年の4月から、健康保険の対象が広がるもようです。切除が難しい骨軟部腫瘍に対して陽子線治療が、また、頭頸部悪性腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)と前立腺がんに対して陽子線治療・重粒子線治療が、既存の放射線治療と比較しても十分または同等の効果があるという科学的根拠から判断された結果です。

 それ以外のがんについては、現時点ではどちらも有効とのエビデンスが出ていないようですが、将来的に効果が確認されるかもしれません。

 万一300万円かかるこれらを受けることになった場合に備え、医療保険やがん保険に「先進医療特約」を付けている方も多いと思います。この特約は、保険料も100円程度とリーズナブルなので、つけておいてもいいでしょう。

 こんなに安くて300万円(通算では2000万円が一般的)が備えられるのは、まさに保険ならではの機能。ですが、保険会社としては100円でもペイするくらい、保険金支払いに該当するケースが少ない、つまり先進医療を受ける可能性は低いということです。

 しかし、保険金が出るからと、先進医療に誘導される可能性はあります。

 白内障の手術である「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」という先進医療があり、技術料は約58万円で、555の医療機関が実施しており、1年間で1万4433人の人が受けています。平成29年6月30日時点での先進医療の実施医療機関数が885施設で、全患者数が3万2984人ですから、これがダントツに多いというのがわかります。

 受けた患者数が多いからといって、有効との評価が確立するわけではないようで、現時点では科学的根拠が十分でないとされています。

 こういった先進医療の実際を知っておくと、これから治療を選択する際にも役立つでしょう。