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ビデオリポート  『歌い継がれる懐メロ  ~ポルポト時代を越えて~ 』 2019年12月取材

阿佐部伸一ジャーナリスト
年配客や日本人を意識してではなく、日本の懐メロを歌うモーバンディダさん、21歳

 まだ内戦中だったカンボジアを新聞社の特派員として取材したのは1987年のことでした。90年代初頭までは、地方ではテレビどころか電気すらなく、首都でも停電がしょっちゅう起こる時限給電といった荒廃ぶりでした。それでも、掘っ立て小屋のナイトクラブや結婚式の宴会などには必ずといってよいほど歌姫の姿を見たものです。アンプの電源はトラック用の大型バッテリーといった具合で。

 以来30余年の間にこの国には何十回と通い、その都度耳にする日本の懐メロがずっと気になっていました。なぜかと言えば、日本で録音されたレコードやカセット、CDの再生やコピーではなく、クメール語の歌詞が付いていて、あたかも自分たちの歌のように親しみを込めて歌っているからです。しかし、個人的興味の範囲を越えず、取材テーマにはせず、年月だけが経っていました。

 近年のカンボジアは、野党政治家は亡命先から帰国できず、ジャーナリストは独裁政権のプロパガンダ以外では生業として続けられず、抗えば身の危険もあるといった民主主義からは程遠い状態と言わざるを得ません。しかし、かつてのような戦乱や飢餓がないことで良しとしているのか、年々少しずつはマシになっている日々の暮らしに満足しているのか、或は、熱帯特有の楽観的な国民性からなのか、良い意味でも悪い意味でも大きな変化はありません。

 そこで、そのずっと気になっていたカンボジアで歌い継がれる日本の懐メロを取材してみました。こうしたタイミングでしか取り組めないヒマダネですが、音楽モノだけにビデオリポート向きです。肩の力を抜いて、お楽しみ頂ければ幸いです。

(取材・撮影・編集/阿佐部伸一)

ジャーナリスト

全国紙と週刊誌編集部、ラテ兼営局でカメラマンや記者、ディレクターとして計38年、事件事故をはじめ様々な社会問題や話題を取材・報道してきました。そのなかで東南アジアは1987年に内戦中のカンボジアへ特派員として赴いて以来、勤務先の仕事とは別にライフワークとしています。東南アジアと日本は御朱印船時代から現代まで脈々と深い繋がりがあり、互いに大きな影響を受け合って来ました。日本の人口減が確実となり、東南アジアの一般市民が簡単に来日できるようになった今、相互理解がますます求められています。2017年に定年退職しましたが、まだまだ元気な現役。フリーランス・ジャーナリストとして走り回っています。

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