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蚊の「なぜ?」を解説 「ぶーん」という音は恋のため 刺されたらかゆくなるのはどうして?

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
イラストはイメージ(提供:イメージマート)

蚊の季節がやってきましたね。なぜ人を刺すのか、なぜ「ぶ~ん」というのか…今回は気になる生態を中心に「蚊」に関するあれこれをお話しします。

※記事中に蚊の触角の画像があります。苦手な方はご注意ください。

血を吸うのはメスだけ 

蚊は血を栄養源として生きていると思っている方も多いかもしれません。実は生きるための栄養として必要なのは糖分で、普段は花の蜜や草の汁などを吸って暮らしています。血を吸うのはメスだけです。産卵に必要なタンパク質をとるために、人や動物の血を吸ってくるのです。

血を吸う針は「唇」

メスの口は血を吸うために長くなっています。ほとんどの人はイメージとして、目に見えている1本の細長い針のような口を皮膚に刺して吸血すると考えているかと思いますが、実は7本あります。上唇(じょうしん)、下唇(かしん)、下咽頭(かいんとう)、2本の大顎(おおあご)、2本の小顎(こあご)の7本で、それぞれ役割を持っています。

上唇は、ストロー状になっていて血を吸い、下唇は血を吸わない時の6本の細い口(針)を鞘のように包んでいます。下咽頭は、血を固まらないようにする成分と麻酔成分を注入し、大顎は下咽頭とともに上唇を支えています。小顎には微妙なギザギザがあって、これを振動させて皮膚に穴を開け上唇を差し込むことで痛みをおこすことなく吸血できる役目をしています。このような仕組みの蚊の口をまねて、刺しても痛くない注射針が開発され人間にとっても役立っています。

アカイエカの雌(筆者作成)
アカイエカの雌(筆者作成)

アカイエカの雌(筆者作成)
アカイエカの雌(筆者作成)

なぜかゆくなるの?

私たちは蚊に刺されていても気づかないことが多く、かゆくなって初めて気づくことがよくあるかと思います。それは、蚊が麻酔成分の入った唾液を注入しているからです。麻酔効果は3分程度続くので、私たちが気付かないうちに血を吸えるのです。また、血管を広げて血を吸いやすくする成分や、血が固まらないようにする成分も注入していて、直径0.03mmという超極細のストロー状の針でも血が吸えます。この成分の多くはタンパク質なので、人の体は外から入ってきた異物に対してのアレルギー反応でかゆくなるのです。

蚊はなぜ「ぶ~ん」と鳴くの?

蚊の鳴き声が耳障りで、眠れない夜を過ごす方も多いかもしれません。あの鳴き声の正体は羽音です。なぜ蚊は羽音を出すのでしょう? 羽音がなければ私たちに気づかれずそっと吸血できるのに...と不思議に思うことはないですか? でも、あの音は子孫を残すために重要な役割を担っています。メスもオスも羽音を出すのですが、メスよりオスの方が高音で、メスとオスが出会い、2匹がきれいなハーモニーを奏でられるとカップル誕生となります。

また、蚊には人間の「耳」に相当する器官はなく、音をキャッチするために、オスの触角は羽毛のようなフワフワした長い毛がたくさん生えていて、この触角の振動でメスの羽音を感じとっています。メスの触角は短い毛しか生えていないので、オスとメスを見分けるのは意外に簡単です。

著者撮影(アカイエカ雌雄触角)
著者撮影(アカイエカ雌雄触角)

試験ではメスだけ使います

虫ケア用品(殺虫剤)の開発のために試験をするときは、メスの蚊だけを使います。メスを退治すれば刺されなくなるし、卵が産まれず発生を抑えることができるからです。また薬剤の必要量は体重によって決まるので、オスより体が大きいメスに効果のある量ならオスにも効果があるというわけです。

蚊は意外にデリケート

私は仕事で蚊の飼育を管理していますが、蚊は他の害虫と比べるととてもデリケートに感じます。幼虫(ぼうふら)には毎日餌を与えていますが、与えすぎて水面に膜が張ると死んでしまうことがあったり、温湿度も整えてあげないと卵を産まなかったりします。

盛夏になり、最高気温が35度以上の日では、太陽の光が当たるところは暑すぎるようで、木陰の草むらなどで休んでいます。ただ、朝夕は少し涼しいので、出てきて人や動物を刺しに来ます。

最後に…

蚊は1億7000万年前の化石が見つかっていて、人間よりずいぶん前から生息している生き物です。現在、蚊は「世界中で最も人を殺している生き物」とされ、マラリアなど蚊が媒介する感染症によって毎年世界中で60~80万人もの人が亡くなっています(※)。日本では2014年にデング熱の国内感染が報告されました。感染症から身を守るためにも、「蚊に刺されない」ということを第一に考えて過ごしていただきたいと思います。

東京都健康安全研究センター

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アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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