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5~6月、コンクリート壁に「小さな赤い虫」、見たことある?見つけた時の対処法

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:イメージマート)

5月から6月にかけて、家の周りの壁やベランダ、ブロック塀などさまざまなコンクリートで小さな赤い虫が集団で動いているのを見かけたことはありませんか? 赤い色なので血を吸うのだろうかと思うかもしれません。でも安心してください。この赤い虫は血を吸うことはありません。でも、なぜこの時期だけ出てくるのでしょうか? 虫の正体をお教えします。

赤い虫の名前は「カベアナタカラダニ」

私たちが5~6月にかけて目にする小さな赤い虫は「カベアナタカラダニ」という名前の虫です。タカラダニ類は日本で4属13種が確認されていますが、人家付近で一番多く見られるのはカベアナタカラダニで、北海道から沖縄まで生息しています。

カベアナタカラダニはタカラダニ科、アナタカラダニ属に分類されます。名前の「カベアナ」は壁の穴に入り込むからではなくて、「壁」にいて、眼の後ろに「穴」があることから付いています。また、「タカラダニ」という名の由来は、昔、子どもよく捕る虫にタカラダニが寄生していて、赤い宝が付いているように見えたことから、「タカラ(宝)」という名前が付いたそうです。寄生されている虫にとってはありがたくないと思いますが、虫がアクセサリーを付けているように見えたのでしょうね。

「カベアカタカラダニ」画像検索結果(Yahoo! JAPAN)

※苦手な方はご注意ください

カベアナタカラダニは花粉を食べています

カベアナタカラダニは花粉を食べて生きています。同じタカラダニでも他のタカラダニ類のように昆虫に寄生することはありません。今の時季、コンクリートなどに落ちている、人の目では見えないような微細な花粉を食べに来ているのです。

では、この虫のライフサイクルをご紹介します。春先に幼虫が出てきて、5~6月に成虫となります。成虫はすべてメスで、単為生殖でまたメスを産みます。産卵後には死んでしまうので自分の子どもたちを見ることはありません。卵は夏を越え、越冬し、翌年孵化します。成虫が見られるのは1年のうちほんの1~2ヶ月程度ですが、赤い色なので目に付きやすいのです。高温のコンクリートの上でも生きていますので、暑い日に陽の当たる場所で見かけることも多いです。

カベアナタカラダニの生態については不明な点が多く、発生を予防することは難しいので、もし見かけたときの対処法をお伝えします。

見つけたらどうすればいい?

期間限定にしか姿を見せず、刺すこともなく、人には何もしてこない虫ですが、たくさん見ると気持ち悪いという方も多いかと思います。また家の中に入ってくることもあります。

家の外で大量に見つけたときは、ホースの水で洗い流すか、不快害虫用のスプレー剤を噴霧するといいでしょう。

家の中に入ってきてしまった場合は、潰さないことが大切です。誤って潰してしまうと、体液が皮膚に付くことで皮疹ができることがあります。また、赤い色が衣服に付着するとなかなか取れないので注意が必要です。家の中では、スプレー剤を直接噴霧するか、1匹2匹であれば、潰さないよう粘着テープにそっと貼り付け、虫に触らずテープをたたんで処理するのもおすすめです。待ち伏せ効果があるスプレー剤を網戸やサッシに噴霧しておくと室内への侵入を防ぐことができます。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:アフロ

最後に…

毎年、カベアナタカラダニを見かける季節になると、自治体や保健所には多くの苦情や相談があります。「赤くて小さな虫が大量にいて気持ち悪い」「赤いから危険なのでは?」「人を刺すの?」という問い合わせがほとんどだそうです。見た目は気持ちは悪いのですが、人には危害を加えない虫なので、安心してください。年に1回しか発生しないので、家の中で繁殖して増えることはありません。共存していくのがいいと思うのですが、気持ち悪い場合は、上記のような駆除方法をとっていただくことをおすすめします。

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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