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知らないと損する「お米の保管方法」 虫がつかないようにする4つのポイント

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

ごはんが美味しい新米の季節ですね。炊き立ての真っ白いごはん、想像しただけでお腹が空いてきそうです。でも、保存方法を間違うと、お米に虫がついてしまうことも。今回は、お米に虫がついてしまう原因や、その対処法をご紹介します。

お米を食べる虫

お米につく虫はたくさんの種類がいます。コクゾウムシ、ココクゾウムシ、コナナガシンクイ、ノコギリヒラタムシ、ノシメマダラメイガ、チャタテムシなどです。舌を噛みそうな名前が多いですね。ここでは、日本でよく見かけて、秋でも発生する「コクゾウムシ」を中心にお伝えします。

コクゾウムシはどんな虫?

大きさは、3mm程度、赤褐色~黒褐色で、口器が象の鼻のように長く、穀物を食べることから、「コクゾウムシ(穀象虫)」と呼ばれています。この長い口で米粒に穴を開けて卵を産み付けます。成虫の寿命は2~7ヶ月と長く、メスは一生の間に約200個の卵を産みます。卵、幼虫、蛹(さなぎ)の期間は米粒の中にいるのでパッと見では確認できず、お米を洗おうとしたら虫が突然出てきたように感じてビックリしてしまうのです。ちなみに、幼虫はお米の中にいるので自分の周りはすべて餌。歩く必要がないため脚が退化していて、コロンと丸い形をしています。

侵入経路はどこから?

袋に入って販売されているのに、虫はどこから入るのでしょう? 理由はいくつかあります。一つは稲刈り後の製造過程で混入するケースです。精米技術が進化した今、虫が入り込むことは考えにくいのですが、米粒に産み付けられた卵が混入し袋の中で育ってしまうことがあります。また、流通経路や保管場所で、米袋の小さな通気穴から侵入するケースも考えられます。

では、お米に虫がつかないようにするにはどうしたらいいでしょう? 詳しくご説明します。

おすすめの保管方法

・密閉容器に入れて保管する

まず、購入した袋のまま保存するのはやめましょう。米袋の通気穴から虫が侵入してしまいます。侵入を防ぐため、しっかりと密閉できる容器を選ぶことが大切です。また、保管場所は、冷蔵庫や電子レンジに近いところ、シンク下などは、温度や湿度が上がりやすく、虫が好む場所なので、置かないことをお勧めします。

・冷蔵庫で保管する

冷蔵庫内の温度では、虫は成育できません。野菜室も含めスペースに余裕があれば冷蔵庫への保存がお勧めです。ただ、袋のまま保管すると、通気穴から空気が入り乾燥してしまうこともあります。また、お米はニオイがつきやすいので、ニオイが強いものと一緒に置くのは避けた方がいいでしょう。冷蔵庫保管でも密閉容器に入れた方がいいですね。

・米びつは洗いましょう

新しいお米を購入して、保管する時、米びつを洗っていますか? 洗わずにそのまま入れてしまうと、底に糠(ぬか)が毎回溜まってしまいます。この糠は虫の大好物なので、虫が来やすくなります。面倒かもしれませんが、米びつは毎回しっかり洗って、乾燥させてからお米を入れましょう。もし、米びつにカビが発生すると、「チャタテムシ」というカビを好む虫が発生することもあります。

・米びつ用防虫剤を使う

虫の発生を防ぐために、市販の米びつに入れるタイプの防虫剤がおすすめです。成分は、唐辛子やワサビ、炭など天然由来のものがほとんどで、安心して使用することができます。

・他の食品の管理もお忘れなく

お米につく虫たちは、お米だけを食べているわけではなく、パスタ、小麦粉、お菓子などにもつくことがあります。知らない間にそれらを餌にして虫が増え、その後お米に移動してくることも考えられますので、他の食品をきちんと管理することも大切です。

コクゾウムシに食害されたお米(筆者撮影)
コクゾウムシに食害されたお米(筆者撮影)

虫を見付けたときは?

上記のように予防しても虫がつく場合もあるかもしれません。その時はどうしたらいいでしょう。あまりにも大量についた場合は難しいかと思いますが、虫を取り除けば食べることはできます。ただしアレルギーが心配な方にはお勧めしません。

虫がついたお米を食べるのは気分のいいものではないですが、虫がつくということは、農薬などの化学物質の残留がない、あるいは少ない安全なお米と考えられます。そんなお米を捨ててしまうのはもったいないですね。やはりきちんと保管することが一番です。

他にはこんな虫が…。

今回の記事では、11月でも活動する「コクゾウムシ」を紹介しましたが、春になったら出てくる小さな蛾「ノシメマダラメイガ」もお米を食べます。こちらがつくと、お米にクモの糸が張ったよう状態になります。また、「チャタテムシ」という1mm程度の薄い茶色のダニに間違われやすい虫は、カビを食べるのですが、お米につくことがあります。

最後に…。

私が飼育している生物の中で、コクゾウムシはとても育てやすい虫です。餌(米や玄米など)があり、環境が整えば増えてくれます。コクゾウムシは15度以下33度以上では繁殖できませんが、家の中は空調をかけることもあり、コクゾウムシが繁殖する温度帯と重なることの方が多いでしょう。ということは、もし、キッチンの米びつにコクゾウムシがいたら、冬場でも増えてしまう可能性があるのです。せっかくの新米を虫に食べられてしまわないよう、きちんと管理して美味しくいただきたいものです。

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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