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結婚相手に求める条件に異変~男の結婚は「経済力」だけでなく「容姿」重視へ

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

結婚相手に求める条件おさらい

男女の結婚相手に求める条件といえば、「女は男の経済力を求め、男は女の容姿(年齢含む)を求める」というのが定説になっている。

社人研の出生動向基本調査でも、内閣府が行った「少子化対策に関する調査」でも、その結果は同じであることはこちらの記事にも書いた通りである。以下の過去記事にグラフは掲出している。ふたつの調査とも男女の差分を表したものであり、男女どちらがその項目をより重視するのかが一目瞭然となっている。

グラフはこちら

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この「女の経済上方婚志向(年収の高い夫を求める)」「男の年齢下方婚志向(若い妻を求める)」というふたつの相反する希望が、婚活市場におけるミスマッチを招いている。そもそも互いに「そんな無理な条件だとは思っていない」ところが悲劇の元である(以下、過去記事参照)。

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特に、「女の経済上方婚志向」は、30年間給料のあがらない経済状況の中では、特に結婚適齢年齢である25-34歳未婚男性の心理に大きく影響を与え、「金がなければ結婚できないのならもう結婚なんてしなくていいや」という状態も招いている。

写真:イメージマート

※ただし、あくまで婚活市場においては。婚活に頼らない恋愛強者の3割を中心とした「自力結婚組」は、そんな「男の経済力」や「女の年齢」などという数字にこだわることなくマッチングしている事実も存在する。

しかし、男性視点に立てば、もしどうしても結婚をしたいのなら、「経済力さえあれば結婚できる」という理解もできる。

果たして本当にそうか?

「男の容姿」が求められてきた

出生動向基本調査の経年推移をみると、この「結婚相手の条件」について、おもしろい傾向が読み取れる。近年、女性が男性に求める条件の中で「男性の容姿」を重視・考慮する割合が急速に伸びているのだ。

1997年時点、男性の容姿を重視・考慮する割合は67.3%だったが、それが2015年には77.7%と10ポイント以上も増加した。従来、約8割という高い数字だった「共通の趣味を持つ」という条件が2015年74.9%であり、女性にとっては「共通の趣味」より「男性の容姿」の重要度の方が逆転したということを意味する。

1997年と2015年とで男女別に比較したものが以下のグラフである。

女性側の条件で10ポイント以上増加したのは「男性の容姿」だけである。一方、男性側の条件では相変わらず「女性の容姿」は高いが、加えて「女性の経済力」「女性の職業」が10ポイント以上増加している。まるで、「男の経済上方婚志向」が増加しているかのようだ。

女性側の条件としての「男性の経済力」は元から高いまま推移しているので、男性は、経済力は勿論のこと、それに加えて「容姿」まで気を使わないといけない時代になってしまったのだろうか。それではますます未婚化に拍車がかかるというものだ。

男の容姿格差は年収格差

しかし、実は男性の経済力と容姿とは密接に関係している。

アメリカのテキサス大学オースティン校のダニエル・S・ハマーメッシュ教授の著書「美貌格差」によれば、容姿を5段階評価で区分した場合に(5が最高、3が平均)に、男性の場合、「5と4」の「容姿が良い」人の年収は「2と1」の「容姿が劣る」人と比べ、17%高いことが判明したそうだ。女性でも同様に12%高いのだが、男性の方がより容姿の影響が大きい。

17%というとたいした違いではないように思うかもしれないが、生涯賃金で比較すると大きな差になる。厚労省の賃金構造基本統計調査の「退職金を含めない学歴別生涯賃金比較」によれば、大企業に就職した大卒男性の生涯賃金は約3億1000万円。これより17%低い生涯賃金は約2億6500万になる。生涯で4500万円も違うとなるとこれは大きいのではないだろうか。

しかも、偶然にも、高卒大企業組の生涯賃金が2億6000万円なので、容姿の良し悪しで大卒と高卒ほどの年収格差が生まれるということになる。

ハマーメッシュ教授の調査は、アメリカ以外でも、オーストラリア、カナダ、イギリス、中国(上海)などでも実施され、すべて同様の結果が出ている。しかし、なぜか日本での調査はされていない。

というわけで、一都三県の20代から50代の未婚男性(n8363)に対して行った私の調査結果をご覧いただこう。

日本での調査結果

「自分の容姿に自信がある」かを、5段階評価(5がとても自信あり、1が自信なし)にて自己採点をしてもらい、それと年収とのクロス集計をしたものである。

結果は、見事なまでに、容姿に自信のある男性ほど年収が高いという結果になった。

(c)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(c)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

具体的には、容姿4-5評価の容姿に自信あり20~50代未婚男性の平均年収は約503万円、容姿1-2評価の場合は約430万円。その違いは16.8%で、ハマーメッシュ教授の調査結果と完全に一致した。

このように、男の容姿と経済力は海外だけではなく、日本でも密接な関係がある。

今まで、恋愛や結婚という分野における容姿の重要性は、男性より女性の方が高いのではないか、という固定観念を疑うに足る興味深いデータだと思われる。容姿に無頓着な男は、恋愛や結婚機会がないだけではなく、金も稼げない。

そして、いつも身も蓋もない話をして恐縮だが、今回もするとすれば、高年収男ほどモテるという相関は正しくても、「金を稼げばモテる」という因果は存在しない。むしろ逆で、「モテる男は稼げる」という因果になるというわけだ。

ただひとつだけ言えるのは、調査における「容姿の良し悪し」はあくまで自己採点であるということだ。客観的評価は置いておいて、主観的に「俺はイケメンだ」と自信満々な男性であれば、金も稼げるし、モテるのかもしれない。

提供:イメージマート

アメリカの社会学者ロバート・K・マートンが提唱した「予言の自己成就」という言葉がある。根拠のない思い込みであっても、自分自身がその状況が起こりそうだと考えて行動することで、事実ではなかったはずの状況が本当に実現してしまうことである。一種の自己暗示である。

大事なのは「考えるだけではなくちゃんと行動した者に結果がやってくる」ということである。

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※記事内グラフの無断転載は固くお断りします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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