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「婚難時代の到来」日本を追い抜く勢いでソロ社会まっしぐら中国の「結婚滅亡」状態

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:hachiware/イメージマート)

日本同様、中国の少子化問題

日本の少子化と同様、中国の少子化が止まらない。

中国で2021年の出生数は1062万人で、1949年の建国以来最も少なかったそうである。1062万人も産まれているのか、と思うかもしれないが、人口が日本の10倍以上もあるのだからそれくらいの規模になる。

普通出生率(人口千対出生率)の長期推移を見れば、その減少っぷりは明らかである。

ご存じの通り、中国では1979年から「一人っ子政策」が導入された。日本でも1974年に「二人っ子政策」的な「子どもは二人まで宣言」が出されていたが、1970年代は全世界的に人口抑制こそ正義だった時代である。

「子どもは二人まで」国やメディアが「少子化を推進していた」という歴史的事実

「一人っ子政策」だけが原因ではない

とはいえ、中国であっても「一人っ子政策」をしたからといって急に出生数が減るものではない。実際、中国では一人っ子ばかりではない。農村地域では、働き手確保のために「1人目が女子の場合は、2人目を産んでもいい」という規定もあった。あえて罰金を支払って第2子、第3子を産む親もいた。事実、「一人っ子政策」を導入して8年後の1987年がもっとも出生率の高い年となっている。

写真:アフロ

2015年に「一人っ子政策」が廃止され、2016年に出生率が多少上向いたが、それ以降の下落ぶりは凄まじい。中国政府は、2021年には3人目を認めると発表したが、この少子化はもう止まらないだろう。たとえ中国であったとしても。

なぜなら、問題は少子化ではなく、非婚化にあるからである。

中国の「結婚減少」の凄まじさ

中国の婚姻数は2013年の1327万組をピークに7年連続で減少。しかも2020年の婚姻数は2013年対比40%減である。日本の婚姻数も激減してはいるが、それでも同時期の2013年対比では18%減にとどまる。つまり、中国では日本の倍以上の非婚化というか、「結婚難」に陥っている。

2010年を100とした、日中の婚姻数の10年間の推移をみていただきたい。

2013年以降、中国の婚姻数の減り方は尋常ではない。実数でいうと、2019年に1000万組を割り、2020年には900万組を割って813万組となってしまった。

日本同様、中国でも婚姻数と出生数は強い相関関係にあり、婚姻が減ることは、すなわち出生が減ることを意味する。

出生数が増えない問題は「少子化」ではなく「少母化」問題であり、解決不可能なワケ

前述した通り、「一人っ子政策」下の中でも、普通出生率がもっとも高かったのは1987年だが、その年に生まれた子どもたちは現在34歳あたりの世代である。まさに、結婚適齢期の子どもたちが多く生まれているにもかかわらず、婚姻は増えないのだ。

写真:アフロ

尋常ではない中国の離婚増

婚姻が減るだけではない。もっと悲惨なのは、離婚の激増である。

グラフで一目瞭然だが、特殊離婚率換算で2012年頃まで20%以下だった離婚率が、2017年には日本に並び、2020年には45%を超えている。日本の「3組に1組は離婚」どころか、中国では「2組に1組が離婚」しているのだ。

婚姻数が2013年対比で2020年40%減しているのに、離婚数も同時期対比34%増なのである。ただでさえ結婚カップルが減っているのに、輪をかけて離婚しているのだが、それではとても出生が増えるわけがない。つまり、中国では「結婚が作られず壊される」というまさに「結婚滅亡」状態にある。

私事だが、2017年1月に拙著「超ソロ社会」を上梓し、その年の6月に公益財団フォーリンプレスセンターで、海外メディア向けの講演をしたことがある。その取材記事が最も多数掲載されたのが中国メディアだった。当時は不思議に思っていたが、なるほど中国にとっては他人事ではなかったようだ。講演では「世界に先駆けて日本はソロ社会になる」などとお話ししたのだが、むしろ中国が日本を追い抜く勢いである。

国ひとつ分男が余っている

離婚はさておき、中国のこの婚姻減を招いている要因のひとつが「男余り」である。

日本の未婚者の「男余り」現象についてはすでにご紹介した通りで、約300万人の未婚男性には結婚したくても相手がいない。

しかし、これは中国においても同様で、人口が10倍以上の中国においては、「男余り」の規模も10倍で、2018年の中国統計年鑑によれば、15歳以上の未婚者でみると、3394万人の「未婚の男余り」である。国ひとつ分の規模で、余った未婚男性が存在することになる。まさに、中国の男たちにとっては「婚難(困難)の時代」到来である。

結婚したくても、340万人もの未婚男性には相手がいない「男余り現象」の残酷

しかし、中国の未婚男性たちを「婚難」にしている要因はそれだけではない。もっと生々しい「お金」の問題が絡んでいる。それについてはまた後日。

写真:アフロ

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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