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シリアのアサド大統領はロシアのプーチン大統領と電話会談で「西側諸国のヒステリー」を非難

青山弘之東京外国語大学 教授
(写真:ロイター/アフロ)

ロシア軍がウクライナの首都キエフに迫るなか、シリアのアサド・アサド大統領は2月25日、ロシアのヴラジーミル・プーチン大統領と電話会談を行い、ウクライナ情勢とドンバス地方の民間人の保護を目的としたロシア軍の特殊作戦について意見を交わした。

シリア大統領府の声明によると、アサド大統領は、会談でプーチン大統領に次のように述べた。

現在起きているのは、世界における歴史の修正とソビエト連邦崩壊後に失われた均衡の是正である。西側諸国のヒステリーは、歴史を誤ったままにとどめ、法律に違反する者以外の誰も望んでいない混乱をもたらそうとするものだ。

ロシアは今日、自国のみならず世界、正義や人道といった原理を防衛している。

混乱と流血の責任は西側諸国にある。それは諸国民を支配しようとする西側諸国の政策の結果だ。これらの国は、シリアでテロリストを、ウクライナなど世界のさまざまな場所でナチスを支援するため、汚い戦術をとっている。

シリアは、正しい姿勢をとりたいとの信念に基づき、ロシアに寄り添う。NATOは、世界的な脅威となり、世界の安定に打撃を与えようとする西側諸国の無責任な政策を実現するための道具となっている。こうしたNATOの拡大に対抗することは、ロシアの権利である。

シリア、ロシア両軍が対峙している敵は一つで、シリアにおいて、それは過激派、ウクライナにおいてはナチスだ。ロシアは、大国が軍事力だけでなく、法律、崇高なる道徳、そして人道主義の原則を尊重することで初めて大国たり得るという教訓世界に示すことになるだろう。

これに対して、プーチン大統領は、ドンバス地方での特殊軍事作戦が安定回復と、この8年間にわたって現地住民が苛まれてきた苦しみを止めることを目的とていると明言、ロシアが過去数年にわたって対話と外交に依拠し、武力行使の決定は、西側の主人の支援を受けるウクライナ当局が、ロシア、ウクライナ両国の議会で承認された一連の合意を遵守せず、ドネツク、ルガンスク両共和国が軍事支援を要請したことを受けてなされたと述べた。

また、ロシア軍は雄々しく勇敢に戦い、眼前の目標すべてを実現するだろうと強調した。

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリア地震被災者支援キャンペーン「サダーカ・イニシアチブ」(https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』などがある。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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