米軍が違法に駐留するシリア南東部のタンフ国境通行所が11月17日深夜から18日未明にかけて再び所属不明のドローンの攻撃を受けた。

2度目のドローン攻撃

英国を拠点とするパン・アラブ系ニュース・サイトのアラビー21は11月17日深夜から18日未明にかけて、シリアのヒムス県南東部のイラク、ヨルダン国境に面するタンフ国境通行所に米軍(そして英軍)が違法に設置している基地が、所属不明の無人航空機(ドローン)複数機の攻撃を受けたと報じた。

タンフ国境通行所は、2015年3月22日にイスラーム国がシリア政府から奪取したのち、2016年3月5日、米主導の有志連合が「新シリア軍」を名乗る反体制武装集団とともにヨルダンから進攻し、これを制圧した。制圧された通行所には、米軍が基地を設置し、約200人規模の部隊を常駐させるともに、英軍も同地に技術者など約50人を駐留させている。「新シリア軍」は2016年8月に支援国との「方針の違い」を理由に一部組織が離反したことで瓦解した。だが、その後も、殉教者アフマド・アブドゥー軍団、革命特殊任務軍、カルヤタイン殉教者、東部獅子軍といった組織がタンフ国境通行所の基地を利用し、同地の教練キャンプで米英軍の教練を受けた。

ドローンには爆発物が装着され、食料庫や簡易食堂施設が狙われたが、米高官によると犠牲者は出ていないという。

英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団は、この攻撃に関して、イスラーム国によるものか、「イランの民兵」によるものか不明と発表したが、反体制系サイトのドゥラル・シャーミーヤはドローンが「イランの民兵」所属機と思われると伝えた。

「イランの民兵」とは、シーア派宗徒とその居住地や聖地を防衛するとして、イランの支援を受けてシリアに集結し、シリア・ロシア両軍と共闘した外国人(非シリア人)民兵の総称である。イラン・イスラーム革命防衛隊、その精鋭部隊であるゴドス軍団、レバノンのヒズブッラー、イラク人民動員隊、アフガニスタン人民兵組織のファーティミーユーン旅団、パキスタン人民兵組織のザイナビーユーン旅団などを指す。

「イランの民兵」、イスラエル・米国の報復合戦

タンフ国境通行所が攻撃を受けたのは、10月20日に続いて2度目。

米国防総省のジョン・カービー報道官が10月26日に「複雑で、連携が行われ、慎重な攻撃」だった評した1度目の攻撃は、ドローンによる攻撃に加えて、ロケット弾も使用され、基地内の食堂施設、モスク、食料庫が狙われた。

APによると、爆発物を装備したドローン5機によって行われ、タンフ国境通行所の基地内の米軍部隊の駐屯地とシリアの反体制派の展開地が狙われた。だが、フォックス・ニュースによると、米軍が事前に攻撃を察知し、駐留していた兵士約200人をC-130輸送機複数機で退避させたため、人的被害はなかったという。なお、攻撃時に基地にいた米軍兵士は25人程度だったという。

イランのファルス通信やレバノンのヒズブッラーに近いアフド・ニュースは10月22日、この攻撃が10月18日のイスラエル軍によるヒムス県中部のT4航空基地(タイフール航空基地)への爆撃に対する「抵抗枢軸」の報復だと伝えた。

また、APは10月26日、背後にイランがいると米国の高官らが見ていると伝えた。『ニューヨーク・タイムズ』も11月18日、米国とイスラエルの匿名高官8人から得た情報だとして、イスラエルによる攻撃への報復としてイランが指示したものと考えていると伝えた。

国営のシリア・アラブ通信(SANA)やシリア人権監視団によると武器・装備、兵站物資を積んだ米軍の貨物車輌26輌からなる車列が、11月5日に、タンフ国境通行所を通過し、「55キロ地帯」に進入し、基地を増強していた。また、11月18日には革命特殊任務軍が米軍とともに実弾を使用した軍事演習を行っていた。

シリア南東部では、11月9日、ダイル・ザウル民政評議会(クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する北・東シリア自治局傘下の自治政体)の支配下にあるバーグーズ村に面するユーフラテス川西岸上空に所属不明のドローンが飛来し、爆撃を実施した。また、同日深夜から10日未明にかけて、所属不明のドローンがシリア政府の支配下にあるダイル・ザウル県ブーカマール市にある「イランの民兵」の拠点複数カ所と武器弾薬庫複数棟を爆撃、シリア人3人と国籍不明の4人が死亡した。さらに11月15日と19日にも、ブーカマール市上空に所属不明のドローン1機が飛来し、「イランの民兵」の施設や拠点を狙って爆撃を行った。

ジェーン・サキ・ホワイトハウス報道官は10月22日、「我々には常に報復する権利を留保している」と表明しているが、一連の爆撃を行ったドローンが米軍所属か、イスラエル軍所属かは明らかではない。

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