ロシアの避暑地ソチで9月29日にウラジーミル・プーチン大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が会談した。両者の首脳会談は2020年3月以来1年半ぶり。

前回の首脳会談では、イドリブ県で激しく交戦していたシリア・ロシア軍とトルコ軍・「決戦」作戦司令室の停戦合意が交わされた。「決戦」作戦司令室とは、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構(旧シャームの民のヌスラ戦線)とトルコの庇護を受ける国民解放戦線などからなる武装連合体である。

今回の会談は、反体制派支配地が広がるシリア北西部へのロシア軍の爆撃と、政府と北・東シリア自治局(クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する自治政体)の共同統治下にあるシリア北部へのトルコ軍とシリア国民軍(国民解放戦線の上位組織)の砲撃への対応が最大の懸案事項と伝えられていた。

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会談後に共同記者会見が行われなかったことから、シリア情勢をめぐって両首脳の間で何らの合意、譲歩も行われなかったと見られるものの、シリア北部の戦況には若干の変化が生じている。

減少するロシア軍の爆撃とトルコ軍の砲撃

第1の変化は戦闘状態の緩和だ。首脳会談前、ロシア軍はシリア北西部の反体制派支配地をほぼ連日にわたって爆撃し、トルコ軍もシリア国民軍とともに、占領下のいわゆる「オリーブの枝」地域(アレッポ県北西部)、「平和の泉」地域(ラッカ県北部、ハサカ県北部)との境界地に展開する人民防衛隊(YPG)主体のシリア国民軍やシリア軍の拠点に激しい砲撃を続けていた。

会談後もロシア軍とトルコ軍の攻撃は止んではいないが、その規模は小さくなっている。

シリア軍がロシア製の自爆型ドローンを初投入

第2の変化は無人航空機(ドローン)による攻撃の増大である。

「決戦」作戦司令室の勢力圏内であるイドリブ県中部のルワイハ村で10月3日晩、ドローンによる攻撃が行われ、4人が死亡、2人が負傷した。

北部軍事監視ユニットなる反体制組織の責任者だというアブー・アミーンを名乗る人物によると、ドローンはロシア製。爆発物とパラシュートを装備し、ルワイハ村にあるシャーム解放機構の軍事拠点の一つに降下し、自爆、同組織のメンバー6人を死傷させたという。

これに関して親政府系サイトのシリア野戦ニュース・ネットは、攻撃を行ったのはシリア軍で、アブー・ウマル・アンサール、アブー・ウバイダ・アンサール、アブドゥルアズィーズ・ウーズビク、アブー・アブドゥルアズィーム・ウーズビクの4人を殺害したと伝えた。

パラシュートを備えたロシア製自爆型ドローンという「新兵器」がイドリブ県で使用されたのは今回が初めてだという。

「決戦」作戦司令室によるフマイミーム航空基地への攻撃

続く10月4日、今度は「決戦」作戦司令室側によると思われる攻撃が行われた。

シリア人権監視団やシリア前線ニュース・ネットによると、シリア駐留ロシア軍司令部があるラタキア県のフマイミーム航空基地近くで複数回の爆発音が聞こえた。

爆発音は、ロシア軍の防空システムの迎撃によるもの。基地への攻撃が、ドローンによるものだったのか、ミサイル・ロケット弾攻撃だったかは不明だが、ロシア軍は9月27日、「決戦」作戦司令室から基地近くに飛来したドローンを撃破している。

Facebook (シリア野戦ニュース・ネットワーク)、2021年10月5日
Facebook (シリア野戦ニュース・ネットワーク)、2021年10月5日

イラン製と思われるドローンの攻撃

ドローン攻撃は10月5日にも発生した。シリア人権監視団によると、爆発物を装着したドローン2機がイドリブ県中部のザーウィヤ山地方に飛来、「決戦」作戦司令室が重火器で迎撃、1機はバイニーン村近郊に墜落、もう1機は空中で爆発した。

ドローンはいずれもイラン製と見られるが、攻撃がシリア軍によるものか、「イランの民兵」と称される親政権民兵によるものかは不明である。