6月28日の米軍がシリアとイラクにあるイラク人民動員隊の拠点への爆撃を行って以降、シリア領内に対する諸外国の爆撃がにわかに激しさを増している。

7月7日には、ダイル・ザウル県のウマル油田に違法に駐留を続ける米軍の基地が無人航空機(ドローン)による攻撃を受けた。6月28日の米軍の爆撃に対する「イランの民兵」の報復の一環だと見られている。そして、こうした暴力の応酬がいつものように、シリアに執拗に干渉を続ける国々による「便乗爆撃」を誘発している。

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米軍は爆撃を否定

7月18日、緊張が高まるダイル・ザウル県でドローンによる新たな爆撃が発生した。狙われたのは、シリア政府の支配下にあるユーフラテス川西岸地域。国営のシリア・アラブ通信(SANA)によると、イラクとの国境に位置するブーカマール市近郊のスワイイーヤ村に近い街道で、食料物資を積んだ貨物車輌1輌が停車中に攻撃を受け、車輌が大破、複数が負傷した。

SANA、2021年7月18日
SANA、2021年7月18日

だが、英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団や反体制系サイトのアイン・フラートによると、ドローンが狙ったのは、イラク人民動員隊に所属するヒズブッラー大隊の軍用車輌で、攻撃により積んでいた武器弾薬は全焼し、乗っていた2人が死亡したという。

米軍、ないしは同軍主導の有志連合による攻撃だと思われた。だが、米アラビア語衛星放送のフッラ・チャンネルが伝えたところによると、有志連合のウェイン・マロット報道官は7月19日、次のように述べ、関与を否定した。

今日も昨日も合同作戦地域で爆撃は実施してない…。有志連合の作戦に関する虚偽の情報が最近になって増えている。

イスラエルの爆撃

こうしたなか、イスラエルが爆撃を実施した。

シリア軍筋の発表によると、イスラエル軍戦闘機が7月19日深夜(23時37分)、アレッポ県南東部のサフィーラ市一帯に対してミサイル攻撃を行ったのである。同筋は、シリア軍防空部隊が迎撃し、ミサイルのほとんどを撃破、被害は物的被害に限定されたと発表した。だが、シリア人権監視団によると、ミサイル攻撃はサフィーラ市近郊の防衛工場機構に近いワーハ山にある「イランの民兵」の軍事拠点や基地が狙われ、シーア派(12イマーム派)が住むアレッポ県ヌッブル市とザフラー町出身のシリア人2人、外国人3人が死亡した。

イスラエルによるシリアへの侵犯行為は6月18日以来約1か月ぶりである。

なお、この攻撃に対する報復かどうかは定かではないが、イスラエル軍の発表によると、7月20日にレバノン南部からイスラエル領内に向けてロケット弾2発が撃ち込まれ、イスラエル軍も対抗措置として、レバノン南部を砲撃した。

トルコとロシアの爆撃

こうした動きと前後して、シリア軍とアル=カーイダを主体とする反体制派の戦闘が激しさを増すイドリブ県中北部、ハマー県北西部、アレッポ県西部、ラタキア県北東部、クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導するシリア民主軍とトルコ軍およびその支援を受けるシリア国民軍が散発的に戦闘を続けるアレッポ県北部、ラッカ県北部、ハサカ県北部でも、爆撃が繰り返されている。

爆撃を行っているのはトルコとロシアだ。

トルコ軍は7月16日と19日、シリア政府と北・東シリア自治局(PYDが主導する自治政体)の共同統治下にあるタッル・リフアト市一帯などに対する攻撃にドローンを投入した。これに対して、シリア軍は19日、対抗措置としてバーブ市南東の政府支配地との境界に位置するアブー・ザンディーン村の通行所を砲撃し、シリア国民軍に所属するマリク・シャー師団の戦闘員2人を殺害、4人を負傷させた。

ロシア軍戦闘機も7月20日、反体制派の支配下にあるラタキア県クルド山地方のカッバーナ村一帯を6回にわたって爆撃した。

シリアでは7月19日からイスラーム教の犠牲祭(イード・アル=アドハー)の休暇に入った。政府支配地は、アサド大統領が17日に就任演説を行ったこともあいまって、祝賀ムードに包まれている。だが、その支配が及ばない地域では、戦闘は続いており、諸外国の横暴も繰り返されている。