クルド民族主義勢力の支配下にあるシリア東部のアラブ人部族が住民に自治を移譲するよう最後通告

Facebook(@Furat.River.Network)2020年8月11日

アラブ人部族が住民の自治による要求

クルド民族主義勢力の支配に対するアラブ人部族の抵抗が続くシリア東部のダイル・ザウル県では8月11日、有力部族のズバイド部族の族長たちがズィーバーン町に一堂に会し、県内の情勢や治安悪化への対応について協議した。

【これまでの経緯については「シリア:クルド民族主義勢力の支配地域でアラブ人部族が蜂起、米軍が鎮圧に加勢」「シリアのアラブ人部族はクルド民族主義勢力に最後通告を突きつける一方、米軍へのロビイングを開始」「シリアのダイル・ザウル県でのアラブ人部族の蜂起はクルド民族主義勢力側と政府側の非難の応酬に発展」「混乱が続くシリアのダイル・ザウル県でアラブ人部族、シリア民主軍、米主導の有志連合が三者会合を開催」「シリアのアラブ人部族がクルド民族主義勢力からの「独立」を要求、米国の占領に対する人民抵抗の開始を宣言」を参照】

「ダイル・ザウル・ズバイド諸部族子息会合」と銘打たれた会合の開催を呼びかけたのは、アカイダート部族の族長の一人で、8月2日に殺害されたマトシャル・ハンムード・ジャドアーン・ハフル氏の甥にあたるマスアブ・ハリール・ハフル。

アカイダート部族はズバイド部族に所属している。

会合に参加した族長らは、「アカイダート部族のための声明」を発表し、ダイル・ザウル県を事実上軍事支配するクルド民族主義民兵の人民防衛隊(YPG)を主体とするシリア民主軍が、軍事、民政、経済といった面で自治に失敗したと指弾する一方、米主導の有志連合に治安悪化と不安定の責任があると非難した。

そのうえで、以下の要求を発表した。

  1. マトシャル・ハンムード・ジャドアーン・ハフル殺害事件を調査するための独立専門家調査委員会の設置。
  2. いかなる当事者の指導も受けない住民へのダイル・ザウル県の自治の移譲。
  3. 無垢の逮捕者の釈放、国内避難民(IDPs)キャンプからの女性と子供の開放。
  4. 有志連合およびすべての関係勢力によるシリアでの政治解決プロセス推進。

そして、これらの要求が実施されるため、1ヶ月という猶予期間を設けると締めくくった。

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有志連合の説得続く

一方、反体制系サイトのダイル・ザウル24は8月11日、米主導の有志連合の匿名高官の話として、有志連合が3日にわたって、ダイル・ザウル県のアラブ人部族の族長や名士との会合を行っていたと伝えた。

会合には、シリア民主軍の使節団も同席し、治安悪化、経済支援の不足、インフラ、社会サービスなどが話し合われた。そのなかで、最重要の議題は、地域の統治と治安における部族の役割増加だったという。

匿名高官は、会合に関して、米国務省、アラブ人部族が治安状況の改善においていかなる役割を果たすべきかを話したという。

シリア民主軍による鎮圧

国営のシリア・アラブ通信SANAは、シリア民主軍が8月11日、スワイダーン・ジャズィーラ村で住民の抗議デモを制圧するため、民家複数棟に立ち入り、住民9人を逮捕、連行したと伝えた。

一方、英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団によると、シリア民主軍は、シュハイル村のユーフラテス川河畔に設置されている水上通行所を経由して政府支配地域から、クルド民族主義勢力の民主統一党(PYD)が主導する北・東シリア自治局の支配地に戻ろうとした住民2人に発砲した。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)