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イスラエル軍、米軍、そしてトルコ軍がシリア各地を爆撃

青山弘之東京外国語大学 教授
(写真:ロイター/アフロ)

シリアで爆撃が頻発している。爆撃を行っているのはシリア軍とロシア軍ではなく、トルコ軍、そしておそらくイスラエル軍と有志連合を主導する米軍。狙われたのは「イランの民兵」、イスラーム国、そしてクルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する自治政体の北・東シリア自治局だ。

イスラーム国幹部殺害

英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、トルコの占領下にあるアレッポ県北部バーブ市近郊で6月20日、所属不明の無人航空機(ドローン)がオートバイを狙ってミサイル攻撃を行い、乗っていた2人を殺害した。

殺害されたのは、トルコ占領下のアフタリーン市の自治を担う地元評議会の職員とイスラーム国の幹部司令官だったという。

イスラエル軍によると思われる攻撃

一方、国営のシリア・アラブ通信(SANA)は6月22日、ラタキア県に展開するシリア軍航空部隊がハマー市上空に飛来したドローン複数機を迎撃したと伝えた。

反体制系のEldorarによると、飛来したドローンはイスラエル軍所属機と思われる。

攻撃は続いた。

SANAによると、6月23日午後9時17分、ヒムス県タドムル市の東方および北東方面から敵飛翔体が複数飛来、ダイル・ザウル県クバージブ村一帯とヒムス県スフナ市一帯にあるシリア軍の拠点複数カ所にミサイル攻撃を行う一方、スワイダー県サルハド市近郊の拠点も攻撃を受けた。

シリア軍筋によると、この攻撃でシリア軍兵士2人が死亡したほか、多数が負傷、物的被害が出た。

シリア人権監視団によると、攻撃を行ったのはイスラエル軍戦闘機。

ヒムス県スフナ市とダイル・ザウル県ダイル・ザウル市を結ぶ街道沿線に配置されている「イランの民兵」の拠点複数カ所を攻撃し、軍事拠点1カ所を破壊、同拠点に駐留していた民兵5員が死亡、多数が負傷したという。

また、スワイダー県に対する攻撃では、「イランの民兵」も駐留するサフン丘地区のシリア軍通信レーダー拠点1カ所が被弾し、シリア軍防空部隊の隊員2人が死亡したという。

トルコ軍も爆撃を敢行

6月23日には、シリア政府と北・東シリア自治局の支配下にあるアレッポ県北部のアイン・アラブ(コバネ)市近郊でも爆撃が確認された。

爆撃を実行したのは、トルコ軍のドローン。

アイン・アラブ市近郊のハルナジュ村の上空に飛来し、北・東シリア自治局傘下で活動する女性団体「スィタール女性大会」が主催する会合が行われていた民家を爆撃、中にいた女性3人を含む5人が死亡した。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリア地震被災者支援キャンペーン「サダーカ・イニシアチブ」(https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』などがある。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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