シリアで復興とポスト・コロナを見据えた新たな動き

ANHA、2020年5月25日

夜間外出禁止令と県外への移動制限解除へ

イマード・ハミース内閣の新型コロナウイルス感染症対策チームは、5月25日の会合で、政府の拡大防止策と経済生活維持にかかる措置の包括的な評価・検証を行った。そして、3月24日に発出されていた夜間外出禁止令と同月31日に発出されていた県外への移動制限を5月26日付に全面解除し、団体での移動や、商店の営業時間を夏季期間中に限り午前8時から午後7時まで認めることを決定した。

一方、外国からの帰国については、帰国者に感染者が多く確認されていることを踏まえて、5月13日に発出された受け入れ停止措置を継続することを確認した。

また、冠婚葬祭の自粛、公園、スポーツ・クラブ、プール、文化センター、劇場、観光施設、娯楽施設、レストラン、カフェの閉鎖は継続し、来週に感染状況を改めて検証することで解除の是非を判断することを決定した。

しかし、シリア国内での感染者数は増加傾向にある(「コロナ禍のラマダーン月が終わりを迎えたシリアで感染者数が増加傾向に」を参照)。

保健省は5月20日、新たに20人の新型コロナウイルス感染者が確認されたと発表した。

新たに感染が確認されたいずれも外国からの帰国者。内訳は、クウェートからの帰国者が15人、スーダンからの帰国者が3人、ロシアからの帰国者が1人、そしてUAEからの帰国者が1人。

これにより、5月25日現在のシリア国内での感染者数は計106人、うち死亡したのは4人、回復したのは41人となった。

SANA、2020年5月25日
SANA、2020年5月25日

イラク国境からアレッポ市にいたるM4高速道路全線再開

国営のシリア・アラブ通信(SANA)は5月25日、イラク国境に面するハサカ県のヤアルビーヤ町からハサカ市を経由し、アレッポ市に至るM4高速道路沿線全域の安全が確保され、民間車輌の往来が再開されたと伝えた。

ヤアルビーヤ町は、クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する自治政体の北・東シリア自治局の支配下にある。ハサカ市は市内中心部の治安厳戒地区を政府が、それ以外の地区を北・東シリア自治局が支配する。アレッポ市は、シャイフ・マクスード地区を北・東シリア自治区、それ以外の地域を政府が支配する。

M4高速道路は、トルコによる「平和の泉」侵攻作戦(2019年10月)を受けて2019年11月に閉鎖された後、2020年1月までにシリア軍が沿線に駐留、再開された。だが、トルコが支援する国民軍(Turkish-backed Free Syrian Army、TFSA)の攻撃が続いていた。

最近では、トルコ軍と国民軍が5月20日、M4高速道路の沿線に位置するラッカ県アイン・イーサー市近郊のフーシャーン村、ハーリディーヤ村を砲撃し、両村の農地で火災が発生したことで、一時通行できなくなっていた。

PYDに近いハーワール・ニュース(ANHA)によると、M4高速道路の全線再開は、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍とシリア軍が、ロシアを保証国として合意したもので、住民の移動を容易にし、その負担軽減するのが目的で、北・東シリア自治局とそれ以外の各地を結ぶ大動脈になることが期待されているという。

ANHA、2020年5月25日
ANHA、2020年5月25日

ANHAによると、高速道路の通行が認められるのは毎日4回。

民間車輌は車列を編成し、午前8時と11時に、ロシア軍憲兵隊の護衛を伴って、北・東シリア自治局とシリア政府の共同統治下にあるラッカ県のアイン・イーサー市とハサカ県のタッル・タムル町を往来する。

なお、シリア人権監視団によると、これを受けて、トルコの支援を受ける国民軍は、タッル・タムル町一帯からアブー・ラースィーン(ザルカーン)町にいたるM4高速道路沿線から北7キロの地点まで撤退した。

撤退は、2019年10月の「平和の泉」作戦終了時にロシアとトルコが交わした合意に基づくものだという。

イドリブ県のM4高速道路は?

一方、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構やトルコの後援を受ける国民解放戦線(国民軍)、さらにはトルキスタン・イスラーム党やフッラース・ディーン機構といったアル=カーイダ系組織が活動を続けるイドリブ県では、ロシア・トルコ両軍がアレッポ市とラタキア市を結ぶM4高速道路での合同パトロールの実施範囲を拡大し、同道路の安全確保をめざしている(「シリア:政府軍、米軍、ロシア軍、トルコ軍の街道をめぐる小競り合いと駆け引きは続く(映像あり)」を参照)。

こうしたなか、英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、所属不明の無人航空機(ドローン)が5月25日、ザーウィヤ山地方のバーラ村近郊で国民解放戦線の第1歩兵師団の司令官の車輌を爆撃し、乗っていた司令官を殺害した。

ドローンは「イランの民兵」のものと思われるという。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)