米国の影響下にあるシリア北東部の刑務所でイスラーム国メンバーが脱走を企てて暴動を起こす

Euphrates Press、2020年3月29日

イスラーム国の暴動発生

シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるシリア北東部のハサカ市にあるスィナーア刑務所で29日、収監中のイスラーム国のメンバーが脱走を企てて暴動を起こした。

北・東シリア自治局はクルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する自治政体。スィナーア刑務所は、シリア政府ではなく、この自治局の自治下にある市南のグワイラーン地区にある。

Liveuamap、2020年3月30日
Liveuamap、2020年3月30日

PYDに近いハーワール・ニュース(ANHA)や英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、暴動発生を受けて、北・東シリア自治局所轄の内務治安部隊(アサーイシュ)が市内で厳戒態勢を敷く一方、同自治局の武装部隊であるシリア民主軍が、米軍主導の有志連合とともに事態収拾にあたった。

シリア民主軍は、PYDが創設した民兵組織の人民防衛隊(YPG)を主体とし、有志連合の「協力部隊」として、シリア北東部(ユーフラテス川以東地域)でのイスラーム国に対する「テロとの戦い」に取り組んできた。

ANHA、2020年3月29日
ANHA、2020年3月29日

反体制系サイトのユーフラテス・プレスは29日、シリア民主軍が暴動鎮圧をできずにいると伝え、その映像を公開した。

鎮圧成功

シリア人権監視団によると、暴動を起こしたイスラーム国のメンバーは、看守複数人を人質にとり、刑務所長との交渉を要求した。

だが、シリア民主軍のテロ撲滅部隊が有志連合とともに刑務所を包囲したのち、敷地内に突入、暴動を鎮圧した。

突入に際して、有志連合のヘリコプターが上空を旋回、燃料気化爆弾を投下し、地上部隊を支援した。

テロ撲滅部隊はまた、脱獄を図った4人を刑務所の敷地内で拘束した。

シリア民主軍のキーヌー・カブラーヒール報道官は30日に声明を出し、「スィナーア刑務所に収監中のイスラーム国メンバーが雑居房の扉を破壊し、居房棟の壁に穴を空け、地上階を制圧、脱獄を試みたが、シリア民主軍が脱獄を阻止、収監者を完全に制圧した」と発表した。

SDF Press、2020年3月30日
SDF Press、2020年3月30日

カブラーイール報道官はまた、「事件は、シリア民主軍がイスラーム国のテロリストたちの身柄を確保し続ける能力を有していることを改めて示すものだ。だが、イスラーム国のテロリストとその家族を収容している拘置所やキャンプの安全を確保するため、我々には、国際社会、有志連合からのさらなる支援が必要であることも明らかになった」と強調した。

一方、シリア民主軍のマズルーム・アブディー総司令官は、ツイッターを通じて声明を出し、有志連合と国際社会に対して、ダーイシュのメンバーの収監や彼らの家族の収容にかかる問題を根本的に解決するための行動を加速させるよう呼びかけた。

シリア国内のイスラーム国メンバーとその家族

シリア民主軍と有志連合は、2019年3月までにユーフラテス川以東地域のイスラーム国支配地を制圧したが、イスラーム国メンバー約6,000人とその家族約30,000人を収容することを余儀なくされている。

イスラーム国のメンバーとその家族の出身国は50カ国以上にのぼり、メンバー約1,000人とその家族約12,000人が外国人だとされている。

ドナルド・トランプ米政権は、自国を最大の後援者とするシリア民主軍への負担を軽減するという思惑から、外国人メンバーと家族を出身国が引き取るよう各国に求めた。だが、西欧諸国を中心に多くの国が受け入れに消極的である(「イスラーム国に対する勝利宣言:シリア情勢2019(5)」を参照)。

なお、暴動が起きたスィナーア刑務所には、ダーイシュのシリア人および外国人メンバー5,000人以上が収監されている。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)