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シリアでの新型コロナ感染者は5人に:反体制派はシリア軍、「イランの民兵」にも感染が拡がっていると主張

青山弘之東京外国語大学 教授
Sawt Beirut、2020年3月19日

政府支配地域の新型コロナウィルス感染者数が5人に増加

シリアの保健省は25日に声明を出し、4人の新型コロナウィルス感染者が新たに確認されたと発表した。

22日に感染が確認された女性1人と合わせて、シリア国内の感染者は5人になった。

新たに感染が確認された4人のうち、1人は数日前に湾岸諸国から帰国した男性で、隔離センターとして3月17日から転用されているダマスカス国際空港のホテルに滞在していたが、23日に感染が確認された。

残る3人(性別は不明)は、ダマスカス郊外県ドゥワイル地区の隔離施設内で同居していた。

アフマド・フライファーウィー保健大臣補によると、感染者は検疫センターに入院し、検査で陽性の結果が出るまで、経過観察が続けられるという。

保健省はデマ拡散を非難

ダマスカス郊外県保健局は26日に声明を出し、ダマスカス国際空港のホテルに隔離されている帰国者のうち94人がPCR検査の結果、陰性と判診断され帰宅したと発表した。

帰宅した94人は自宅で経過観察の対象となる。

なお、保健局によると、ダマスカス国際空港のホテルの隔離施設の帰国者の総数は138人。うち、これまでに検査の結果陰性と診断され帰宅したのが124人、陽性と診断され隔離されているのが3人、検査結果が出ていないのが11人だという。

一方、保健省は26日に声明を出し、新型コロナウィルス感染者5人の健康状態が安定しており、SNSで拡散されている患者の1人が死亡したとの情報は事実無根と発表、恐怖と煽ろうとするものだと批判した。

イドリブ県の前線に従軍するシリア軍兵士が新型コロナウィルスに感染か?

反体制系サイトのサウト・アースィマは26日、「某消息筋」の話として、イドリブ県ザーウィヤ山一帯の前線に展開するシリア軍兵士1人が新型コロナウィルスに感染したと伝えた。

感染が確認されたとされるのは、ダマスカス郊外県東グータ地方ドゥーマー市出身のムウタッズ・トゥウマ氏なる兵士。

トゥウマ氏は「イランの民兵」の一つでアフガン人から構成されるファーティミーユーン旅団と共に行動していたが、体調を崩し、休暇をとってドゥーマー市の自宅に帰宅していた。

帰宅に先立って、ヒムス県の病院で新型コロナウィルスへの感染を確認するためのPCR検査を受けていたが、23日に陽性と診断され、ダマスカス郊外県の第601軍事病院に搬送、隔離されたという。

首都近郊に展開するイラン・イスラーム革命防衛隊の間でも感染拡大か?

また、反体制系サイトのジュルフ・ニュースは26日、「複数のメディア筋」の話として、ダマスカス郊外県のサイイダ・ザイナブ町一帯に展開するイラン・イスラーム革命防衛隊の間で新型コロナウィルスの感染が拡がっていると伝えた。

同サイトによると、これまでに90人の感染が確認され、イラン・イスラーム革命防衛隊は首都ダマスカス近郊のジャミール・プラザ・ホテルを隔離センターとして転用し、感染者を収容しているという。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリア地震被災者支援キャンペーン「サダーカ・イニシアチブ」(https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』などがある。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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