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シリアのイドリブ県で「テロ組織」がトルコ軍を再び襲撃か?:M4高速道路の橋も何者かによって爆破

青山弘之東京外国語大学 教授
Enabbaladi.net、2020年3月23日

イドリブ県で「テロ組織」がトルコ軍を再び襲撃か?

ラタキア県フマイミーム航空基地のシリア駐留ロシア軍司令部に設置されている当事者和解調整センターのオレグ・ジュラフロフ・センター長(海軍少将)は声明を出し、「トルコに従わないテロ組織」が24日、イドリブ県南西部のスフーフン村に近い路上に爆弾を仕掛け、トルコ軍部隊が通過するのに合わせてこれを爆発、装甲車2輌に被害を与え、兵士2人を負傷させたと発表した。

しかし、反体制系サイトのEldorarは25日、複数の現地情報筋の話として、爆発はロシア・トルコ首脳会議が停戦に合意した3月5日以前の戦闘に際して反体制派が敷設した地雷によるもので、トルコ軍を狙ったものではないと伝え、ロシア側の発表を否定した。

同サイトは、トルコ軍部隊がハマー県シール・マガール村に設置されている監視所に向かう途中で爆発に巻き込まれたことは事実だとしつつ、被害を受けたのも1輌だけで、負傷者はなかったと付言した。

トルコ軍が新たな拠点を設置

英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、トルコ軍は24日、イドリブ県のM4高速道路沿線に位置するジスル・シュグール市近郊のガッサーニーヤ村に新たな拠点を設置した。

これにより、シリア領内のトルコ軍監視所・拠点は以下51カ所となった。

トルコ軍の監視所・拠点が設置されている場所は以下の通り:

監視所

  • イドリブ県:サルワ村、タッル・トゥーカーン村、サルマーン村、ジスル・シュグール市(イシュタブリク村)
  • アレッポ県:登塔者聖シメオン教会跡、シャイフ・アキール山、アナダーン山、アレッポ市ラーシディーン地区(南)、アイス村(アイス丘)
  • ハマー県:ムーリク市、シール・マガール村
  • ラタキア県:ザイトゥーナ村

拠点

  • イドリブ県:マアッル・ハッタート村、サラーキブ市(3カ所)、タルナバ村、ナイラブ村、クマイナース村、サルミーン市、タフタナーズ航空基地、マアーッラト・ナアサーン村、マアッラトミスリーン市、マストゥーマ軍事キャンプ、タルマーニーン村、バルダクリー村、ナフラヤー村、ムウタリム村、ブサンクール村(2カ所)、ナビー・アイユーブ丘、バザーブール村、バータブー村、ラーム・ハムダーン村、アブザムー町、ムシャイリファ村、タッル・ハッターブ村、ビダーマー町、ナージヤ村、ズアイニーヤ村、ガッサーニーヤ村
  • アレッポ県:アナダーン市、アレッポ市ラーシディーン地区、ジーナ村(2カ所)、カフル・カルミーン村、タワーマ村、第111中隊基地、アターリブ市、ダーラ・イッザ市、カフル・ヌーラーン村
  • ハマー県:ムガイル村

なおこのほかにも、トルコ軍はM4高速道路沿線に監視ポスト14カ所を設置している。

M4高速道路の橋が爆破される

シリア人権監視団によると、「正体不明の武装集団」が25日、M4高速道路沿線のジスル・シュグール市近郊のクファイル村の橋(クファイル橋)を爆破した。

爆弾を仕掛けたのは、ロシア・トルコ軍の合同パトロールに反対する「ジハード主義グループ」だと思われるという。

国営のシリア・アラブ通信(SANA)も、「テロ組織」が、M4高速道路でのロシア・トルコ軍の合同パトロールの通行を阻止するため、M4高速道路沿線のジスル・シュグール市近郊のクファイル村の橋一本を爆破したと伝えた。

Facebook、2020年3月6日
Facebook、2020年3月6日

一方、トルコ軍は24日と25日、M4高速道路のサラーキブ市とムサイビーン村を結ぶ区間で7度目となる単独パトロールを実施した。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリア地震被災者支援キャンペーン「サダーカ・イニシアチブ」(https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』などがある。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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