Yahoo!ニュース

アルツハイマーは“鬼畜”なのか? 息子介護の衝撃作・テレ東「和ちゃんとオレ」

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
画像

■映画「和ちゃんとオレ」

テレビ東京のCSR担当の方のご好意により、試写会(+パネルトーク)なるものに参加してきました。一般人ですので、試写会なんて初めてでしたが、色々考えさせられる映画でしたので、“ネタバレしない視聴レポート”と、テレビ局のCSR(企業の社会的責任)について考えてみます。

「和ちゃんとオレ」は、息子介護をテーマにしたドキュメンタリー映画。テレビ東京が2008年「“母”が壊れて〜息子介護の時代〜」、2012年「いま助けてほしい〜息子介護の時代〜」を放送し、それぞれTXNドキュメンタリー優秀番組賞、TXNドキュメンタリー大賞を受賞。2番組に追撮と再度編集を加えた、現代社会への警鐘を鳴らす話題作。

未来が見えない”仕事”をこなすという介護のその先に見たものは何か。2014年1月18日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー。介護者割引有り。

映画「和ちゃんとオレ

映画「和ちゃんとオレ」予告編

息子の介護が普通の時代になった。「介護と家族」という重い課題に迫った力作。「介護の社会化」がさらに求められている。

舛添要一(元厚生労働大臣、政治学者)

ずっと一緒だった母と息子が離れた、たった1日……その間に母が旅立ったのは息子を思う最後の親心だったのだろうか。

田原総一朗(ジャーナリスト)

■映画「和ちゃんとオレ」の雑感

75分の中に編集された物語は、決してキレイな親子愛の物語ではありません。とても、残酷で、苦しく、自分がこうなったら…と考えると寒気がするくらいでした。“息子介護”をするオレこと、野田明宏さんが、母親の“和ちゃん”を介護した10年の軌跡です。

介護は本当に辛い。被介護者も介護者も、先の見えない戦いを続けなければなりません。社会は少子高齢化となり、被介護者も増えるし、介護者も増える一方です。

ただ、介護の現場は大変ですね、で終わらせてもしょうがいないのですが、一対一の介護は相当辛いと、改めて映画を見て思いました。

実は、僕の祖母・祖父(母方)は母が自宅介護していました。最初は、祖父の、次は祖母の介護を連続で合計10年くらいですかね。母だけでなく、大学進学で上京するまで、僕も少し手伝っていました。僕の兄弟もいたので、トータルでそこまで大変ではなかったと思います。

パネルトークで野田さんも監督さんがおっしゃっていたのですが、男性介護者の場合、助けを求めない傾向が強く、自分を追い込み虐待につながるケースがあるそうです。

主役の野田さん
主役の野田さん

■介護の実態

内閣府の高齢社会白書、厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、「同居」の主な介護者のうち、男性は3割超。いまや、男性介護者は100万人を超えるとしています。

このうち、60歳未満の人の割合は35%あまり。かつては「息子の嫁」が担っていた親の介護ー、少子化や晩婚化、非婚化の影響で、いまや働き盛りの独身の息子が介護を担うケースが増え続けています。 

また、厚労省は認知症高齢者が推定462万人、予備軍を含めると800万人に上ると発表しており、単純計算で被介護者とほぼ同数の介護者が必要となるので、今後経済にも大きな影響を与えることは間違いないでしょう。

介護離職という、介護のために退職しなければならない事例も多くなっており、その数は10万人とも言われており、その課題を浮き彫りした映画となっています。

誰もが、いつか、対峙させられる課題である介護。

野田さんがパネルトークで「今日を乗り切ることを重要視していたけど、今後は多分悪くなるし、不安から暴力的になったりすることもある。特にアルツハイマーは鬼畜だった。本当に。」とおっしゃっていたのが印象的でした。

徐々に何もできず、何もわからなくなる親を見るのは、本当に辛かったと。

ただ、親子の絆が深くなったというメリットもあったし、今となっては、よかったことも多いかもしれないとも言っていました。

■テレビ東京のCSRアクション

監督が、TVで介護ネタは視聴率が取れない、介護モノの本も売れない。テレビでは見れなかった層の人にも、映画として想いを届けたい。とおっしゃっていました。

しかし、テレビ東京さん、よく作ったなという感じです。作っても儲からないだろうし、恐縮ですがムーブメントになるとも思えません。また、介護のドキュメンタリーを映画化するのは初めてとも言っていました。他社テレビ局にこういった社会問題の啓発映画って作れるのでしょうか?

日本テレビさんも、「画期的なCSRの取組み! 日本テレビの社会貢献番組「PEOPLE MAGNET TV」」という記事に書いた通り、素晴らしい取り組みをしているのですが、「なぜか毎年起きる、チャリティー番組の芸能人ギャラ問題」という話題も毎年あるので、もったいないなぁ、と。

テレビ局だけではないですが、大手メディアのCSRは今まで皆無だったので非常に興味深いのですよ。皆さんも、感じていると思います。マスメディアの「社会的責任と役割」って何なのか、と。

マスメディア(テレビ局)がこういった映画製作と配給活動をするって素晴らしいです。まさに自分たちの、基幹事業領域での、社会問題啓発運動です。

拙著『この数字で世界経済のことが10倍わかる--経済のモノサシと社会のモノサシ』でも書いたのですが、介護問題のように「実感しやすい社会問題」をもっと、マスメディアに取り上げて欲しいです。

ちなみに、テレビ東京のCSRを取材した去年の記事「メディアのCSRとは何かーテレビ東京のCSRウェブコンテンツ」もご参考までにどうぞ。

明日、親が倒れるかもしれない(介護者になる)、自分が倒れるかもしれない(被介護者になる)という現実に、あなたは立ち向かう準備はありますか?

ぜひ、コメントで教えて下さい。また、映画をご覧になった方のご意見・ご感想もお聞きしてみたいです。

(『テレビ東京のCSR活動! 息子介護を追った映画「和ちゃんとオレ」で思った事』を修正・加筆して転載)

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。

安藤光展の最近の記事