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ガソリン急騰で知らなきゃ損! クルマの燃費を悪くするダメな運転方法5選

安藤眞自動車ジャーナリスト(元開発者)
ガソリン価格の高止まりを乗り切るには、運転技術の改善がいちばん。

 昨年末には120円台だったレギュラーガソリンの価格は右肩上がりで上昇を続け、7月上旬の全国平均価格は150円を超えてしまいました。ガソリン代節約のためには、少しでも安いスタンドで入れたいところですが、安いところに入れに行くのにガソリンを使ってしまっては本末転倒。そこで見直したいのが、運転技術です。クルマの燃費は運転の仕方によって、10%程度は簡単に変わってしまうのです。

 燃費を悪くする大きな要因は、「雑なアクセル操作」です。逆に言えば、ていねいなアクセル操作を心がければ低燃費運転できるのですが、具体的には、どう「ていねいに」操作すれば良いのでしょうか。そのポイントを順次、説明して行きます。あなたの運転は「燃費を悪くするダメな運転」になっていないでしょうか? 

1.ルーズな履き物で運転している。

 まず、履き物をチェックして下さい。暑い季節だと、サンダル履きで運転したくもなりますが、底が足裏に密着しないタイプのサンダルでは、ていねいなアクセル操作はできません。それ以前に、かかとが固定できないサンダルの場合、安全運転義務違反に問われる可能性もあります。また、かかとがストラップ等で固定できても、極端に底が厚い物、ヒールが高いものも同様です。アクセル操作だけでなく、ブレーキへの踏み替えもやりにくくなりますから、運転するときにはスニーカーなど、底が薄く足裏にフィットするものを選んで下さい。

 「服装と合わない」という場合、専用のドライビングシューズを用意しておき、運転するときだけ履き替えるというのも良いと思います。特に女性のかたは、こういう取り組みがあることも、知っておいてください。

マツダとミズノが共同開発したドライビングシューズ。ここまで本格的でなくても、運転専用の靴を一足用意しておくと、降車時のコーディネートと両立できます。
マツダとミズノが共同開発したドライビングシューズ。ここまで本格的でなくても、運転専用の靴を一足用意しておくと、降車時のコーディネートと両立できます。

2.発進加速がせっかち。

 自転車で走り出すときを想像すればわかるとおり、発進するときには大きなエネルギーを必要とします。このとき必要以上に速く発進しようとしてアクセルを深めに踏み込めば、エンジン回転数が高くなり、多くの燃料を消費してしまいます。

 上手な発進は、ブレーキからアクセルに踏み換えるタイミングを少し遅らせることです。AT車には「クリープ」といって、アクセルを踏まなくてもジワジワ進む機能が付いています。ブレーキペダルから足を放したら、クリープで動き出すのを確認して、それからゆっくりとアクセルを踏むのが、効率の良い発進のしかたです。イメージでいうと、平常時の呼吸に合わせ、息を吸いながらブレーキを放し、吐きながらアクセルを踏むという感じでしょうか。

 アクセルを踏む際も、クリープで動き出した加速度が滑らかにつながるよう、優しく丁寧に踏み込みましょう。同乗者の首が後ろに大きく揺れるようでは、アクセルの踏みかたが強すぎます。

発進時のアクセル操作は穏やかに。スイッチのように踏むのは、燃費の点で好ましくありません。
発進時のアクセル操作は穏やかに。スイッチのように踏むのは、燃費の点で好ましくありません。

3.必要な速度に達するまで、アクセルを踏みっぱなしにしている。

 発進して加速をしたあと、目標速度になるまでアクセルを踏みっぱなしにしていると、たいていは目標速度をオーバーしてしまい、ブレーキをかけて調整することになります。フットブレーキは「走行エネルギーを熱に換えて捨てる装置」ですから、踏んだ分だけエネルギーが無駄になってしまいます。目標の速度に達する少し前からアクセルを戻し始め、目標速度になったときに、アクセル操作がピッタリ止まるのが上手な燃費運転です。

 また、自動変速機(AT)の場合、アクセルをメリハリ良く戻すと、トランスミッションのコンピューターが「もう加速は必要ないのだな」と判断して、高いギヤへと変速します。するとエンジン回転数が低下して、燃費の良い走行が可能になります。

 ハイブリッド車の場合、アクセルをメリハリ良く戻すと、エンジンが停止して電動走行に切り替わるものも少なくありません。このテクニックを利用して、なるべくエンジンをかけずに走らせるようにするのは、ハイブリッド車を低燃費運転する大事なポイントです。

なるべくエンジンをかけずにハイブリッド車を走らせるコツは、アクセルの優しい踏み込みと、メリハリの良い戻しです。(私有地で安全を確保した状態で撮影した写真です)
なるべくエンジンをかけずにハイブリッド車を走らせるコツは、アクセルの優しい踏み込みと、メリハリの良い戻しです。(私有地で安全を確保した状態で撮影した写真です)

4.車間距離を詰めすぎる。

 車間距離が短いと、先行するクルマが減速した際に慌ててブレーキを踏むことになり、必要以上に減速してしまいます。そこから速度を回復するためには、余計にアクセルを踏まなければなりませんから、燃費は悪くなるばかりです。

 十分な車間距離を取っていれば、前のクルマが減速しても、フットブレーキを踏まずにエンジンブレーキだけで対処できる機会が増えます。すると、ブレーキで熱にして捨てるエネルギーを出さずに済みますし、速度低下も必要最小限に抑えられますから、再加速するエネルギーも少なくて済みます。

 また、エンジンブレーキならストップランプも点きませんから、後続のクルマが連鎖してブレーキを踏むこともなくなり、渋滞の要因を減らすことになります。

 シフトレバーに手動変速モードが付いていたり、パドルシフトが付いているクルマなら、これを活用してフットブレーキを踏む回数を減らすというのも、低燃費運転をするポイントになります。

 車間距離を確保すると同時に、2〜3台前のクルマの動きにも注目しながら走ると、よりスムーズな燃費運転ができます。

車間距離の詰めすぎは、燃費に悪いだけでなく、渋滞の原因にもなります。
車間距離の詰めすぎは、燃費に悪いだけでなく、渋滞の原因にもなります。写真:Paylessimages/イメージマート

5.高速道路で制限速度いっぱいまで出さないと気が済まない。

 クルマにとって、もっとも大きな走行抵抗が、空気抵抗です。そして空気抵抗は、速度の2乗に比例して大きくなりますから、速度を出せば出すほど、燃費は急速に悪くなっていきます。

 特に国産車の多くは、60〜70km/hの速度域でもっとも燃費が良くなるように作られています。新東名高速道路や東北自動車道などの一部区間など、最高速度が120km/hまで引き上げられた路線がありますが、これはあくまで「そこまで出してもいいですよ」という数値であり、そこまで出さなければならないわけではありません。交通流を乱さないことや、燃費の悪化を考慮すれば、90〜100km/hで走るのが、もっとも合理的です。ぜひ一度、90km/h巡航でどれだけ燃費が伸びるのか、試してみることをお勧めします。

制限速度が120km/hに引き上げられた区間でも、「そこまで出さなければいけない」ということではありません。流れを乱さない範囲で、安全と燃費に配慮した速度で走行しましょう。
制限速度が120km/hに引き上げられた区間でも、「そこまで出さなければいけない」ということではありません。流れを乱さない範囲で、安全と燃費に配慮した速度で走行しましょう。

 運転方法以外にも、タイヤの空気圧が低いと、燃費を悪化させたり、高速走行中にバーストしやすくなったりします。連休中に長距離ドライブをお考えなら、ディーラーやガソリンスタンドに寄ったついでにタイヤの空気圧も調整してもらいましょう。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

自動車ジャーナリスト(元開発者)

国内自動車メーカー設計部門に約5年間勤務した後、地域タブロイド新聞でジャーナリスト活動を開始。同時に自動車雑誌にも寄稿を始め、難しい技術を分かりやすく解説した記事が好評となる。環境技術には1990年代から取り組み、ディーゼルNOx法改正を審議した第151通常国会では参考人として意見陳述を行ったほか、ドイツ車メーカーの環境報告書日本語版の翻訳査読なども担当。道路行政に関しても、国会に質問主意書を提出するなど、積極的に関わっている。自動車技術会会員。

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