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色覚障害者にはほとんど見えない! オリンピック専用レーンの識別ペイントは反バリアフリーか!?

安藤眞自動車ジャーナリスト(元開発者)
東京オリンピック専用レーンが運用開始されたが、バリアフリーに大きな問題が(共同)

 東京オリンピックの開幕を4日後に控えた7月19日から、オリンピック車両専用レーンの運用が、東京都と千葉県の一部道路で開始された。専用レーンは道路標識と路面標示、路面ペイントで識別できるようにされており、期間中に専用車両以外で走行すると、違反点数1点、反則金6000円が科せられる(普通車の場合)。

P型色覚とD型色覚の人には、ピンクのラインはほとんど見えない!

 ところが、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)の伊賀公一副理事長は、バリアフリーの点で大きな問題があると指摘する。専用レーンの中央に引かれたピンク色のラインは、P型およびD型色覚の人には”灰色”に見えてしまうのである。

 下の写真は、伊賀さんが「色のシミュレータ」という色覚多様性アプリを使用して加工したものだが、これを見れば一目瞭然。一般型(C型)色覚の人にはピンク色に見えても、P型やD型の人には「消えかかった線」にしか見えない。これに気付かず違反してしまったとしても、果たして罪に問えるのだろうか。ペイントによる文字や道路標識もあるとはいえ、不平等との批判を免れることはできまい。

「色のシミュレータ」アプリで色弱者の見えかたを検証。上段が一般色覚、中段がP型、下段がD型色覚。P型とD型の人には「消えかかった線」にしか見えない(共同通信社の写真をもとに伊賀公一さんが作成)
「色のシミュレータ」アプリで色弱者の見えかたを検証。上段が一般色覚、中段がP型、下段がD型色覚。P型とD型の人には「消えかかった線」にしか見えない(共同通信社の写真をもとに伊賀公一さんが作成)

 一般型以外の色覚を持つ人は、日本では成人男性の20人にひとり程度、いると言われており、これを放置しておけば、誤って専用レーンに進入してしまう人が出る可能性は少なくない。なにより、バリアフリーを理念とするパラリンピック大会の施策としては、お粗末であると言わざるを得ない。

 伊賀さんは「灰色の道路に対して、どれくらいの太さでどういう配色ならラインがはっきりと見えるかというのを、当事者協力してテストすれば簡単に決定できる」と指摘する。開幕までわずかな日数しかないが、早急に対応するべきではないか。

 なお、タイトルでは一般のかたにも分かりやすいよう「色覚障害」という言葉を使用しましたが、現在は「色覚多様性」または「色覚特性」と呼ぶようになっており、障害ではなく色覚に対する「個性」であることを申し添えておきます。

自動車ジャーナリスト(元開発者)

国内自動車メーカー設計部門に約5年間勤務した後、地域タブロイド新聞でジャーナリスト活動を開始。同時に自動車雑誌にも寄稿を始め、難しい技術を分かりやすく解説した記事が好評となる。環境技術には1990年代から取り組み、ディーゼルNOx法改正を審議した第151通常国会では参考人として意見陳述を行ったほか、ドイツ車メーカーの環境報告書日本語版の翻訳査読なども担当。道路行政に関しても、国会に質問主意書を提出するなど、積極的に関わっている。自動車技術会会員。

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