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日本で一番きれいな虫その①=ヤマトタマムシ

天野和利時事通信社・昆虫記者
ヤマトタマムシが体の隅々までキラキラと美しいのには理由がある。

 日本のきれいな虫と言えば、多くの人がすぐに思いつくのがヤマトタマムシ。大型でこれほど美しい虫が、熱帯のジャングルではなく、日本の公園で普通に見られるのは「奇跡」と言ってもいいぐらいだ。

 「普通に見られる」と言うと、「えー、見たことない」という人がいるかもしれない。しかし、東京都区部でも、明治神宮、新宿御苑、代々木公園など、大きな公園にはかなりの数が生息している。

ヤマトタマムシの派手な色彩は背中側だけではない。
ヤマトタマムシの派手な色彩は背中側だけではない。

ヤマトタマムシは、裏返した腹側も宝石級の美しさ。
ヤマトタマムシは、裏返した腹側も宝石級の美しさ。

・ヤマトタマムシの探し方、見つけ方その①=伐採木

 「どうすれば見つけられるの」という質問も予想される。一番簡単なのは、7月下旬から8月ごろ(まさに夏休み)に、大きな倒木や、伐採木置き場を見て回ることだ。産卵中だったり、産卵場所を探してウロウロしたりしているヤマトタマムシを何匹か見つけることができるだろう。木の種類はエノキ、ケヤキ、サクラなどがいいとされるが、クヌギ、コナラの材にもいる。かなり太い材が、タマムシのお気に入りだ。薄暗いとこには比較的少なく、日が照り付けているような伐採木置き場に多い。

伐採木置き場を見て回ると、産卵中のヤマトタマムシが意外と簡単に見つかる。
伐採木置き場を見て回ると、産卵中のヤマトタマムシが意外と簡単に見つかる。

・ヤマトタマムシの探し方、見つけ方その②=エノキの樹冠

 ヤマトタマムシは、夏のカンカン照りの時間帯に、エノキ、ケヤキなどの樹冠付近を飛び回っていることが多い。つい先日も大田区の東京港野鳥公園のエノキで見かけた。

 ヤマトタマムシの成虫は、エノキなどの葉を食べる。交尾場所もエノキの枝先が多いようだ。

 なぜカンカン照りがいいのか。それは、タマムシのキラキラの美しさと関係しているらしい。虫たちの天敵である鳥の多くは、キラキラ輝く金属光沢を嫌う。そのキラキラが一番効果を発揮するのが、カンカン照りの時なのだ。そのせいなのか、日がかげってしまうと、さっきまで飛び回っていたタマムシの姿が急に見えなくなる。

 ヤマトタマムシは、体の表だけでなく、裏もきれいだ。翅を広げた時の無防備な腹部さえ美しい。無駄にきれいなようだが、そのキラキラには、鳥よけという理由があったのだ。

ヤマトタマムシの成虫はエノキなどの葉を食べるので、エノキの樹冠に多い。
ヤマトタマムシの成虫はエノキなどの葉を食べるので、エノキの樹冠に多い。

夏のカンカン照りの時間帯にエノキの樹冠付近を飛び回るヤマトタマムシ。
夏のカンカン照りの時間帯にエノキの樹冠付近を飛び回るヤマトタマムシ。

 いよいよ夏本番。さあヤマトタマムシを見つけに行こう。でも伐採木置き場では 蚊にさされないよう虫よけスプレーを忘れずに。カンカン照りの広場のエノキの前では、熱中症にならないよう、帽子や日傘、冷たい飲み物を忘れずに。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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