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雌雄同体?頭瘤?恋矢?梅雨時が見頃のカタツムリは謎だらけ

天野和利時事通信社・昆虫記者
カタツムリの頭にできる瘤(頭瘤)は、交尾準備完了の印という。

 梅雨と言えば、デンデン虫、カタツムリの季節。雨の日や雨上がりの日に、のんびりとカタツムリを眺めていると、雌雄の違いはあるのか、交尾はどうするのか、恋の季節に頭にできる瘤の正体は何なのかなどなど、さまざまな疑問が湧いてくるだろう。

 まず知っておくべきは、カタツムリが雌雄同体だということだ。つまりオスメスの区別がないので、交尾の際には2匹のカタツムリが互いにオスとメスの役割を果たせるらしい。

 2匹のカタツムリが絡まり合うようにうごめいていたら、恐らくそれが交尾現場だ。しかし、そうしたシーンを野外で目撃する機会は少ない。カタツムリは、雨の日には昼間も動き回るが、基本的に夜行性なので、交尾の機会も圧倒的に夜が多いと推察される。

 かつて、アフリカマイマイの交尾を目撃したのも真夜中だった。真夜中にグニャグニャ、ネチネチ、ベトベト絡み合うカタツムリの姿は、官能的でもあり、不気味でもある。

交尾態勢のアフリカマイマイ。
交尾態勢のアフリカマイマイ。

 しかも、カタツムリが交尾する際には相手を恋矢(れんし)と呼ばれる角のようなもので突き刺し合うことが多いというから、暴力的でちょっと怖い。だが、この矢に含まれる成分は、卵子を受精しやすくするらしいので、キューピッドが放つ恋の矢に近いとも言える。

 夜行性のカタツムリの交尾を見たいなら、同種のカタツムリ2匹を部屋で飼って、夜通し観察すればいいのだろう。その際には、成熟したカタツムリを選ぶ必要がある。殻の口がめくれ上がっているのが、成熟した個体の印。さらに、恋愛シーズンに入ると、頭の上に頭瘤(とうりゅう)という瘤ができて、そこから性フェロモンを出すという。この頭瘤があれば、交尾に向けて準備完了ということらしい。

成熟したカタツムリの殻の開口部は反り返っている。
成熟したカタツムリの殻の開口部は反り返っている。

頭瘤を出して交尾相手を探すカタツムリ。
頭瘤を出して交尾相手を探すカタツムリ。

 昆虫記者はこれまで、繁殖目的でカタツムリを飼ったことがなかったが、今回色々書いているうちに「今年は飼育してみよう」という意欲がわいてきた。雨で虫探しの機会が減る梅雨時の暇つぶしには最適かもしれない。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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