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子どもが拾ってきたドングリを放置すると、虫が出てきて大惨事になることも

天野和利時事通信社・昆虫記者
枝ごと落ちている緑のコナラ・ドングリ(左)にはハイイロチョッキリ(右)の幼虫が

 秋はドングリの季節。でも「子どもが拾ってきたドングリを部屋に放置していたら、ウジムシみたいなのがたくさん出てきて大変なことになった」という話をよく聞く。ドングリの中には、かなりの確率で虫の幼虫がいる。拾ってきてしばらくすると、その幼虫たちがはい出してくる。土にもぐって蛹になろうとするからだ。

 ドングリコロコロ、ドングリコ、虫が出てきてさあ大変♫。

 「ドングリは好き。でも虫は嫌い」というのが、今時の普通の子どもたちの感覚だ。しかし虫好きの反応は違う。そもそも、虫好きがドングリを拾う理由は、どんな虫が出てくるか楽しみだからだ。

 しかし、ドングリ拾いの際の注意点は、虫嫌いでも、虫好きでも同じだ。まず、枝ごと落ちているコナラのドングリには、たいていハイイロチョッキリというゾウムシの仲間の幼虫が入っている。このチョッキリはなぜか、産卵した後のドングリを枝ごと切り落とす。

枝ごと落ちているコナラ・ドングリの帽子の部分にある黒い点は、ハイイロチョッキの産卵痕
枝ごと落ちているコナラ・ドングリの帽子の部分にある黒い点は、ハイイロチョッキの産卵痕

うわー!ドングリの山、と喜んではいけない。これはすべてハイイロチョッキリの仕業だ
うわー!ドングリの山、と喜んではいけない。これはすべてハイイロチョッキリの仕業だ

上の写真のドングリを放置すると、中でこんな虫が成長し、いずれ外に出てくる
上の写真のドングリを放置すると、中でこんな虫が成長し、いずれ外に出てくる

外に出た幼虫は、土の中でこんな蛹になって
外に出た幼虫は、土の中でこんな蛹になって

夏にこんな成虫(ハイイロチョッキリ)になる
夏にこんな成虫(ハイイロチョッキリ)になる

 単独で落ちているドングリの場合は、小さな穴が開いていれば、中に幼虫がいる。大きな穴が開いていれば、幼虫が脱出した跡だ。幼虫の種類はシギゾウムシの仲間が多いが、蛾のこともある。

 虫嫌いの人は、そういうドングリを捨てるが、虫好きはそういうドングリばかりを集める。よくゾウムシの幼虫が出てくるドングリは、コナラ・ドングリとクヌギ・ドングリ。特にクヌギは要注意だ。

クヌギ・ドングリから、ゾウムシ(たぶんクヌギシギゾウムシ)の幼虫が出てきた
クヌギ・ドングリから、ゾウムシ(たぶんクヌギシギゾウムシ)の幼虫が出てきた

クヌギ・ドングリの帽子の部分に穴を開けているクヌギシギゾウムシ。たぶん産卵の準備だろう
クヌギ・ドングリの帽子の部分に穴を開けているクヌギシギゾウムシ。たぶん産卵の準備だろう

トゲトゲの帽子の丸いドングリがクヌギ・ドングリ
トゲトゲの帽子の丸いドングリがクヌギ・ドングリ

 コナラ・ドングリからは、コナラシギゾウムシが出てくることも。長い口(口吻)が、シギゾウムシの仲間の特徴。

たぶんコナラシギゾウムシの成虫
たぶんコナラシギゾウムシの成虫

 虫嫌いの人は、虫が出てこないように、ドングリを冷凍したり、熱湯に漬けたりする。中には電子レンジで加熱する人もいる。その場合、虫は死ぬが、ドングリが爆発してさらなる大惨事を招くことが多いので、お勧めはしない。

 虫好きは、ドングリの下に土を敷いたりして、出てきた幼虫を大切に育てる。しかし、土の中の蛹が成虫になるのは、翌年の夏。あまりにも気の長い話なので、普通の人々は、こんな面倒な趣味に手を出さない方がいい。

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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