見えてきたNASA有人宇宙船計画の日程。野口宇宙飛行士の搭乗はいつごろ? 遅延リスクは?

Credit: NASA

2019年8月8日、NASAはスペースXの有人宇宙船「クルードラゴン」に搭乗する宇宙飛行士の訓練画像を公開した。カリフォルニア州のスペースX社内で実施された訓練では、NASAのボブ・ベンケン宇宙飛行士とダグ・ハーレー宇宙飛行士が船内用の宇宙服(フライトスーツ)を着用し、実際のクルードラゴンと同じシートへの着席やスーツのリークチェックなどの手順を実行した。

ボブ・ベンケン宇宙飛行士、ダグ・ハーレー宇宙飛行士によるスペースXのフライトスーツ着用訓練。Credit: NASA
ボブ・ベンケン宇宙飛行士、ダグ・ハーレー宇宙飛行士によるスペースXのフライトスーツ着用訓練。Credit: NASA

クルードラゴンの有人試験飛行Demo-2に搭乗する予定のベンケン、ハーレー両宇宙飛行士が着用したスーツは、映画『バットマン』『ワンダーウーマン』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』などのコスチュームデザインを手掛けたホセ・フェルナンデス氏にスペースXがデザインを依頼したもの。スペースXはフライトスーツの機能を公表していないが、同様のフライトスーツはNASAの有人宇宙船プログラムに参加しているボーイングのスターライナー宇宙船向けにも製作されている。スターライナー用フライトスーツは、NASAの旧来のフライトスーツよりも軽量で動きやすく、緊急事態に備えた与圧機能などを備えているという。

ボブ・ベンケン宇宙飛行士、ダグ・ハーレー宇宙飛行士によるスペースXのフライトスーツ着用訓練。Credit: NASA
ボブ・ベンケン宇宙飛行士、ダグ・ハーレー宇宙飛行士によるスペースXのフライトスーツ着用訓練。Credit: NASA

フライトスーツ着用など、Demo-2を見据えた予定が公開されるようになった。では、実際の試験飛行はいつ実施されるのか。NASAからの正式発表はないが、米メディアは、スペースXのDemo-2打ち上げ日程を2019年11月15日とみている米SPACEFLIGHT.COMの報道では、NASAの飛行計画部門の内部文書に日程の記載が見つかったという。

報道によれば、クルードラゴンによる7日間(11月15日~22日)の飛行試験の後、11月30日にはボーイングのスターライナーによる有人飛行試験が予定されている。こちらはマイク・フィンク宇宙飛行士、ニコール・マン宇宙飛行士、クリス・ファーガソン宇宙飛行士が搭乗すると見られる。一連の飛行試験が完了すれば、国際宇宙ステーション(ISS)へ民間宇宙船による宇宙飛行士の輸送(クルー・ローテーション・ミッション)が開始される。こちらは2020年5月と見られており、搭乗クルーにはJAXAの野口聡一宇宙飛行士の名前が挙がっている。

JAXAは7月23日に野口宇宙飛行士が日本人宇宙飛行士として初めて新型有人宇宙船への搭乗に向けて準備、訓練を行っていることを発表した。打ち上げ時期、またスペースX、ボーイングどちらの宇宙船に搭乗するかは決まっておらず、今後発表される予定だ。

2019年内の米国有人宇宙船(USCV)飛行試験と2020年春の野口宇宙飛行士のUSCV搭乗は、どの程度確実なのだろうか? これまで何度も試験日程の遅延があり、またクルードラゴンは4月20日にエンジンの火災事故により損傷している。スペースXは事故原因の一部について公表したものの、調査完了の日程は公表しておらず、「将来の飛行日程よりも前に完了する」と述べるにとどめている。

まず、日本人宇宙飛行士の日程から考えてみる。野口聡一宇宙飛行士、星出彰彦宇宙飛行士は2020年に向けて、「東京2020聖火リレースペースアンバサダー」に就任しており、ISSから東京2020聖火リレーへメッセージを送ることが予定されている。東京オリンピックの場合、聖火リレーは2020年3月20日に宮城県東松島市に到着し、3月26日に福島県楢葉町・広野町からグランドスタート、7月24日まで日本全国47都道府県を回る予定だ。

星出宇宙飛行士は2020年5月ごろから約半年間、第64次/第65次長期滞在クルーとしてISSに滞在する(第65次長期滞在ではISSコマンダーを務める)。2020年5月以降、また8月13日から8月25日まで予定されている東京2020パラリンピック聖火リレーへ向けて、聖火リレー応援メッセージのミションが可能だ。星出宇宙飛行士が「聖なる火をつなぐリレーを、野口聡一宇宙飛行士とともに盛り上げ」とコメントしているところから、2020年の3月~8月のどこかでISSに野口宇宙飛行士、星出宇宙飛行士の同時滞在するタイミングが計画されていると考えられる。このことから、野口宇宙飛行士が搭乗するUSCV打ち上げが2020年5月ごろという日程には一定の可能性がある。

一方で、NASA側の事情を見てみる。2019年7月10日にNASAが発表した文書によると、もしUSCVの実現が2020年2月以降に遅れることになった場合、2020年4月以降のISS滞在クルーが1名ないし2名になってしまうというリスクがあった。クルーはISSメンテナンス等に追われ、計画されていた宇宙実験に大幅に遅延する可能性がある。実験の中には水再生処理や火災対策など、将来の有人宇宙探査につながるものが含まれている。また、2024年に計画されている月面有人探査の再開「アルテミス計画」に必要な新型宇宙服の開発にも影響がある。

コリンズ・エアロスペースとILCドーヴァー発表による次世代EVA(船外活動)用宇宙服のプロトタイプ。Credit: Collins Aerospace Systems,  ILC Dover
コリンズ・エアロスペースとILCドーヴァー発表による次世代EVA(船外活動)用宇宙服のプロトタイプ。Credit: Collins Aerospace Systems, ILC Dover

コリンズ・エアロスペースとILCドーヴァーは7月25日に新型宇宙服のプロトタイプを発表した。40年以上前に設計された現行の宇宙服をはるかに上回る着用性を備え、軽量小型化しかつ二酸化炭素除去機能や通信機能などを備えている。新型宇宙服は、2024年までのISS運用期間中に試験を完了することが急務とされており、すべてのカギとなる宇宙船開発の遅延は容認し難い事情だ。

とはいえ、USCVは安全性が確認され、万全の状態でを飛行させなければならない。米会計検査院(GAO)は、度重なるUSCV開発遅延について6月20日に警告文書の最新版を発表している。USCVの認証は元のスケジュールではスペースXが2019年9月、ボーイングは2020年1月に終える予定だった。しかし2019年第2四半期の段階で、宇宙船各部の認証完了はボーイングが25パーセント、スペースXは11パーセントしか進んでおらず、開発状況は依然として不透明だという。

NASAは2020年9月までロシアのソユーズ宇宙船の座席を購入しているが、GAOはそれ以降の「非常時対応計画」の策定を推奨している。GAOの悲観的な見方からすれば、2020年後半にもUSCVが実現していない可能性は十分に高いということだろう。