インド、月探査機チャンドラヤーン2打ち上げ成功

GSLV-Mk III ロケットのチャンドラヤーン2打ち上げ。(C)ISRO

2019年7月22日、インド宇宙研究機関ISROは、インドの月探査機Chandrayaan-2(チャンドラヤーン2)を打ち上げた。探査機は20分ほど後に予定の軌道でGSLV-Mk IIIロケットから切り離され、打ち上げは成功した。7月15日の予定日では直前でヘリウムガスのリークとみられる不具合が見つかり延期されていたが、1週間ほどで問題を克服し打ち上げを実現した。

サンスクリット語で「月へ行く乗り物」を意味する月探査機チャンドラヤーンは、2009年に打ち上げられたチャンドラヤーン1に続く2回目の計画となる。打ち上げ時1380キログラムで月面から高度100キロメートルを周回探査したチャンドラヤーン1に対し、チャンドラヤーン2は月周回機、着陸機、ローバーから構成され、3機の合計で3.8トンと3倍近くなった。

ヴィクラム着陸機とローバーのプラギヤン。Credit: ISRO
ヴィクラム着陸機とローバーのプラギヤン。Credit: ISRO

チャンドラヤーン2のヴィクラム着陸機には、X線分光器、赤外線分光器、合成開口レーダー、光学カメラ、温度計などが搭載され、月の地質学や極域の地図作成などを行う。ローバーには月震の観測機器が搭載され、着陸地点付近で月の地震計測を予定している。50年前のNASA アポロ11号のミッションでは、7月21日に地球-月間のレーザー測距を行う反射鏡レーザー・レトロリフレクターが設置された。NASAから委託された同様のレーザー・レトロリフレクターが搭載され、50年間続けられてきた地球と月の距離計測に貢献することになる。

チャンドラヤーン2の月周回機。Credit: ISRO
チャンドラヤーン2の月周回機。Credit: ISRO

今回の最大の目標は、インドが初めて実施する月の南極域への軟着陸だ。Vikram(ヴィクラム)と名付けられた着陸機は、南緯70度付近にある2つのクレーター「マンチヌス C」と「シンペリウス N」の間の領域へ、9月6~7日に着陸する予定だ。ヴィクラム着陸機から6輪のローバーPragyan(プラギヤン)が放出され、月面を500メートルほど走行し探査を行う。着陸機とローバーの探査は月の昼間(地球時間でおよそ14日)に行い、その後は周回機が1年ほど探査を行う。

チャンドラヤーン2のヴィクラム着陸機。Credit: ISRO
チャンドラヤーン2のヴィクラム着陸機。Credit: ISRO

月の極域は、永久影と呼ばれるまったく日の当たらない場所があり、氷が存在する可能性があるとされる。着陸機とローバーの探査による水の発見は、日本にとっても重要な成果になる。月の極域の水を資源として利用することができるか解明するため、日印共同探査が計画されているためだ。2023年度打ち上げ目標の月着陸探査は、JAXAとISROが共同で実施。インド側が着陸機を、日本側はローバーと打ち上げロケットを担当することが検討されている。月の着陸探査の成否は、JAXAとトヨタが共同で開発する月面「有人与圧ローバ」のミッション実現にも影響する。

6輪の「プラギヤン」ローバー。Credit: ISRO
6輪の「プラギヤン」ローバー。Credit: ISRO

月の南極域への着陸探査は、世界的に競争が激しい。特に無人ロボット探査の分野で「月レース」を刺激している中国は、2018年に世界で初めて月の裏側へ着陸探査を行った嫦娥4号に続いて、2020年頭に嫦娥5号が月の西側に位置する「嵐の大洋」から玄武岩などのサンプルを採取し、持ち帰る計画だ。サンプル分析よって、月の火山活動を解明する目的があるとされる。

続いて2020~2030年に行う嫦娥6、7、8号計画では、これまで培った着陸、ローバー探査とサンプルリターン技術を活かし、まず嫦娥6号で月の南極域からサンプルリターンを行う。続いて嫦娥7号で南極域の資源利用可能性を調査し、嫦娥8号で3Dプリンティング技術による月での施設建設技術の確立に乗り出すという。

連続し一貫した計画を持つ中国に対し、ロシアがルナ計画との相互協力を、米NASAも嫦娥6号での協力関係を発表している。民間参入も含め多極化が進む月探査の中で、インドが打ち上げロケットと周回機に加えて9月の着陸を成功させ、着陸探査機の技術を確立できるか注目される。