火星探査機の搭乗チケットをもらおう!

9月30日まで、NASAサイトで火星探査機の搭乗チケットがもらえる。

NASAは2020年に打ち上げられる火星探査機MARS 2020(マーズ2020)ローバーに名前を載せられる“搭乗チケット”のキャンペーンを開始した。2019年9月30日まで日本を含め世界中どこからでも応募でき、登録した名前は専用のマイクロチップに記されて探査機と共に火星へ届けられる。火星に名前を残せるチャンスだ。

火星探査機「Mars 2020」ローバー。NASA/JPL-Caltech
火星探査機「Mars 2020」ローバー。NASA/JPL-Caltech

マーズ2020は、NASA ジェット推進研究所(JPL)が開発中の火星ローバー。火星の表面を走行し、過去の微生物が生存していたかどうかを示す痕跡や火星の気象、地質などを探査する。「マーズヘリコプター」と呼ばれる回転翼機の飛行実験や、将来の有人探査に備えた酸素生成の実験にも挑む。2012年に火星に着陸し、現在も走行しながら探査中のキュリオシティや、2018年まで15年間も火星を探査し続けたオポチュニティ、双子のスピリットなどの後輩として火星ローバーの仲間に加わることになる。

マーズ2020ローバーは2020年7月に打ち上げられ、2021年2月に火星へ着陸。火星年で1年(地球時間でおよそ687日)は活動する目標となっている。

「火星ローバーに乗って飛んでいこう」キャンペーンの応募は、専用サイトで名前、名字、国名(選択式)と郵便番号、メールアドレスを登録するだけ。登録すると名前を記した搭乗チケットの画像をダウンロードできる。5月21日にスタートし、すでに88万人以上が登録している。

名前を応募して搭乗チケットをもらえるキャンペーンは、火星震を観測中の探査機Insight(インサイト)も打ち上げ前に行っている。繰り返し応募すると「フリークエントフライヤー」として、マイルももらえる。

意外に多い、宇宙へ名前を届けるチャンス

宇宙探査機に名前を載せる打ち上げ応援キャンペーンは、日本が早くから行っている。2002年6月には、宇宙科学研究所(ISAS)が小惑星探査機はやぶさの一部であるターゲットマーカに応募者の名前を刻んだアルミニウムのフィルムを載せる「星の王子さまに会いに行きませんか」キャンペーンを実施した。88万人の応募があり、名前を載せたターゲットマーカは無事に小惑星イトカワに投下され、はやぶさのタッチダウンミッションの目印となった。ターゲットマーカは今でもイトカワ上にあり、小惑星と共に太陽を回っている。

はやぶさ2を応援した18万人の名前が乗せられたフィルムの見本。撮影:秋山文野
はやぶさ2を応援した18万人の名前が乗せられたフィルムの見本。撮影:秋山文野

2014年12月に打ち上げられた小惑星探査機はやぶさ2もこのキャンペーンを踏襲し、同じくターゲットマーカに名前を刻んだフィルムを載せた。はやぶさ2は5月末に2個めのターゲットマーカを小惑星リュウグウに投下する予定で、リュウグウには応募者の名前の記念碑となるターゲットマーカが2箇所になる可能性がある。また、応援者のメッセージや寄せ書き、イラストなどを記録したマイクロチップが小惑星のサンプルを収める「再突入カプセル」に載せられていて、こちらは2020年に地球に戻ってくる予定だ。

はやぶさ2と同様、応募者の気持ちを込めた作品を受け付けたのがNASAとアリゾナ州立大学が共同で運用する小惑星探査機OSIRIS-REx(オサイリス・レックス)。2016年の打ち上げ前に「#WeTheExplorers」というアート作品募集キャンペーンを行った。旅立つ探査機に寄せる期待や想いをイラストや詩、音楽などのデジタル作品にして投稿。作品はマイクロチップに収められ、オサイリス・レックスと共に小惑星ベンヌに向けて旅立った。

唐の詩人、韋応物『聽江笛送陸侍御』臨書。撮影:小林伸
唐の詩人、韋応物『聽江笛送陸侍御』臨書。撮影:小林伸

筆者もこのアート応募キャンペーンに、祖母の臨書を撮影して投稿している。中国・唐の詩人、韋応物による『聽江笛送陸侍御』という、旅立っていった友人を思う詩である。祖母は晩年、持病のため大好きだった散歩に行くこともままならなかった。作品を探査機に託したことで、小惑星への長い散歩に祖母を送り出したような気持ちを抱いている。打ち上げ前の名前応募キャンペーンは、遠い宇宙で活躍する探査機と地球とをつなぐファンの楽しみなのだ。