リュウグウとベンヌはきょうだい小惑星? NASAのOSIRIS-RExがサンプル採取候補地選定へ

OSIRIS-RExチームのダンテ・ローレッタ教授とJAXA吉川真准教授

JAXAのは小惑星探査機はやぶさ2がサンプル採取を成功させた小惑星リュウグウと、アメリカの小惑星探査機OSIRIS-REx(オサイリス・レックス)がターゲットとする小惑星ベンヌは、同じ母天体から分かれたきょうだい小惑星の可能性がある。OSIRIS-RExチームが来日し、相互協力するはやぶさ2チームと小惑星の起源に迫るサンプル採取技術に関する意見交換を行った。

小惑星のサンプル採取に挑むOSIRIS-REx Credit: NASA Goddard Space Flight Center
小惑星のサンプル採取に挑むOSIRIS-REx Credit: NASA Goddard Space Flight Center

OSIRIS-RExは、米アリゾナ大学とNASA ゴダード宇宙飛行センターが共同で取り組む小惑星探査機。2016年9月に打ち上げられ、はやぶさ2と同じ2018年に目的地の小惑星ベンヌに到着した。現在は小惑星の観測を続けており、この夏には小惑星のサンプル採取を行う候補地の選定を行う予定だ。2020年夏にサンプル採取を実施し、2023年に地球に帰還、米ユタ州の砂漠に小惑星の物質が入ったカプセルを届ける。

小惑星リュウグウとよく似たベンヌの姿。Credit: NASA/Goddard/University of Arizona/Lockheed Martin
小惑星リュウグウとよく似たベンヌの姿。Credit: NASA/Goddard/University of Arizona/Lockheed Martin

昨年ベンヌに到着したチームを驚かせたのは、ベンヌとリュウグウ、2つの小惑星の相似だった。どちらも同じようにコマ、またはそろばん珠を思わせる形状。そして表面はゴツゴツした岩塊に覆われ、探査機の接近を難しくしている。さらに、米国の宇宙探査が探査機ニュー・ホライズンズのカイパーベルト天体ウルティマ・トゥーレ接近に沸く2018年の大晦日、ベンヌにも新たな発見があった。まるで彗星のように、ベンヌ表面から物質が吹き上がって宇宙へ放たれているというのだ。

ベンヌ表面からは岩石の破片が吹き上げられて宇宙へと飛び出している。Credit: NASA/Goddard/University of Arizona/Lockheed Martin
ベンヌ表面からは岩石の破片が吹き上げられて宇宙へと飛び出している。Credit: NASA/Goddard/University of Arizona/Lockheed Martin

驚異の小惑星ベンヌからのサンプル採取を確実にするため、この4月にはやぶさ2と協力関係にあるOSIRIS-RExチームが日本のJAXAを訪問した。元々の計画では、OSIRIS-RExは半径25メートルの平らな砂地を見つけてサンプル採取(タッチ・アンド・ゴー:TAG)を行う予定だったが、候補地をもっと狭い範囲にしてより精密な着地を行う必要がある。そこで、岩塊だらけのリュウグウで精密着陸を成し遂げたはやぶさ2チームの知見を参考に、採取計画の練り直しを行おうというのだ。

小惑星ベンヌの表面もリュウグウ同様にボルダー(岩塊)が多く過酷な環境だった。Credit: NASA/Goddard/University of Arizona
小惑星ベンヌの表面もリュウグウ同様にボルダー(岩塊)が多く過酷な環境だった。Credit: NASA/Goddard/University of Arizona

OSIRIS-REx計画の主任研究員でアリゾナ大学のダンテ・ローレッタ教授は、現在「サンプル採取候補地は50か所以上あり、この夏に絞り込みを行う」と述べた。これまでの観測でベンヌには水のある環境でできた物質であるマグネタイト(酸化鉄)やクレイ(粘土)などの鉱物が見つかっており、こうした物質を採取することができればベンヌ進化の過程に迫ることができる。また、ベンヌから放出されている物質は、表面の水を含む岩石が太陽に暖められて吹き上がっている可能性があることも明かした。

OSIRIS-RExがサンプル採取を行う候補地点。「DL」は提案者の頭文字。Credit: NASA/Goddard/University of Arizona/Lockheed Martin
OSIRIS-RExがサンプル採取を行う候補地点。「DL」は提案者の頭文字。Credit: NASA/Goddard/University of Arizona/Lockheed Martin

ベンヌという小惑星の不思議を解明する意味でも重要なOSIRIS-RExのサンプル採取だが、リュウグウとの関係においても大きな期待がある。2つの小惑星は同じ母天体から分かれたきょうだいの可能性があるのだ。

2019年3月、はやぶさ2チームは米科学誌Scienceにリュウグウ観測結果を元にした論文を発表した。

リュウグウのような1km程度の小惑星は、太陽系初期に形成した大きな母天体の衝突破壊で産まれたと考えられている。本研究は、母天体からリュウグウへの進化の全体像を提唱した。

リュウグウの母天体が小惑星ポラナかオイラリアである可能性が高い。

出典:The geomorphology, color, and thermal properties of Ryugu: Implications for parent-body processes

論文ではこのような可能性を提唱している。小惑星ポラナ(142)、小惑星オイラリア(495)はどちらも火星と木星の間にある小惑星帯(メインベルト)の内側の小惑星で、リュウグウはこのどちらかの小惑星から衝突によって分かれた破片がさらに衝突と再集積を繰り返して現在の形になったものではないか、とされている。

小惑星が衝突による破壊と再集積を繰り返した関係で、いわば「親子」関係にあるものを“族”と呼ぶ。小惑星ベンヌは、B型と呼ばれる炭素を含む物質からできており、同じく炭素を含んで黒っぽいC型のリュウグウと近い関係にある。どちらもポラナ-オイラリア族と呼ばれるメインベルトの古い小惑星グループに起源を持つ可能性がある

2つの小惑星の関係に迫るには、探査機によるその場観測に加えて、地球に持ち帰ったサンプルの分析が必須だ。ローレッタ教授によれば、「同位体分析によってより確実なことがわかる」という。日米2つのチームが協力し、競い合いながら行う小惑星探査は、2つの小惑星の家族関係を解き明かす試みでもあったのだ。