コロナ禍の影響は、芸術分野にも。芸術の秋にちなんで、初めてのオリジナル商品を開発された老舗画材店の彩雲堂さんの取り組みをご紹介します。1色だけに特化した「だけえのぐ」セットが、評判を呼び全国から注文が押し寄せているんです。

岡崎市内に画材屋さんは3軒あり、彩雲堂さんは創業から75年、岡崎市の中心商店街・康生通りで画材店やギャラリーを展開しています。

地域の学校からの注文も受けている彩雲堂ではコロナ禍で休校などの影響があったり、外出自粛で店頭来客が減ったりするなど、ニーズの変化を実感していました。

そのため店頭とは別の販売方法が必要だと感じ、新たにネットショップを開設したのですが、問題は差別化。

画材はメーカーから仕入れをして販売する業態…ということは、他の画材屋さんでも同様の商品の取り扱いがあるわけです。

まして、都市部の大規模な画材屋であれば規模を活かして、より安くネットで販売しているようなこともあり…ネットショップを開設しても、どのように選ばれ購入してもらうかが大きな課題でした。

オカビズでじっくりとお話をお伺いしていくと、実は店長の山田さんには絵具メーカーに勤めていた経験があり、まさしく画材のプロ。その後彩雲堂に移ってからも、長年、絵具メーカーとは取引相手として柔軟な関係性を築いてこられました。

このつながりを活かし、また文具人気やコロナ禍での絵画人口の増加を背景に、赤だけ・青だけ・黄だけ・緑だけ、日本で初めてそれぞれの同系色だけを集めプロが選んで組み合わせた12本の透明水彩絵具セット「だけえのぐ」が誕生しました。各セット12本入りで価格は赤・黄が3500円、青・緑が3000円。絵具の種類はホルベイン製の透明水彩です。今回、特別にメーカーの許可を得て、彩雲堂オリジナルセットとして発売されました。

赤だけのえのぐセット、のチラシ(彩雲堂提供)
赤だけのえのぐセット、のチラシ(彩雲堂提供)

初の自社商品の開発は山田さんの豊富な知識とつながりがあってこそ実現することのできた今までにない商品となりました。

「だけえのぐ」が全国の絵画好きや文具好き、そして特定の色ばかり使う子どもや大人に届くことで、感性を刺激して新たな可能性を広げるきっかけになれば、そんな想いが込められています。

販売開始当日の新聞掲載に続いて、SNSで1.3万人以上の方に拡散されるなど大きな話題を呼び、わずか3日間で数百セットを売り上げるヒットを記録しました。

また、地元CBCラジオのリポーターさんは、青だけのえのぐで絶妙なグラデーションを表現しながら、地元中日ドラゴンズのマスコット「ドアラ」を描いている様子をツイッターに投稿しています。

赤、青、緑、黄色…とあるだけえのぐの中でも、一番人気は「青だけの絵の具」だそう。

だけえのぐのラインナップ(彩雲堂提供)
だけえのぐのラインナップ(彩雲堂提供)

この取り組みは、なにも全く新しいものを生み出そうとしなくても、今あるものの組み合わせから新たな魅力を作りだすこともできるという事例でしょう。

発想法の古典ともいうべき名著に「アイデアのつくり方」(著:ジェームス・ウェブ・ヤング、1940年)という本がありますが、そこで書かれていることを思い出しました。

アイデアとは、0から1を生み出すものではなくて、むしろ2や3の要素から1を生み出すということ。つまり、これまでにある既存の要素を組み合わせ、コンビネーションを通じて新たなものを生み出す、というお話なんです。

一見差別化の利かない商品でも、知恵一つで新たな可能性が広がりました。購入者たちは、ご自身の大好きな同系色の色で絵を描き究極のグラデーションを楽しんだりするなど思い思いに楽しんでいるようです。

昨今では、文具女子というキーワードが新たなトレンドとなり、インク沼や推し色といった新たなニーズも生まれています。こうした背景のなか、新たなひらめきから生まれた商店街の画材屋さんの新商品物語をご紹介しました。