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売上大幅減、予約キャンセル、操業停止、人出不足…新型コロナ中小企業への影響の実際

秋元祥治やろまい代表取締役/武蔵野大学EMC教授/オカビズ
新型コロナ感染症へ、支援策を伝える経済産業省のサイト

私がセンター長をつとめる岡崎ビジネスサポートセンター・OKa-Bizでは、毎日地域の中小企業やお店屋さんの経営相談を受けています。そんな中2月半ば以降、新型コロナウイルスに関する経営相談が、かなり増えてきました。感染拡大と、それを抑える取り組みとともに、経済への影響がかなり広がっているのを実感します。テレビや新聞でみるマクロなニュースや経済指標以上に、一社一社のお話を聞くにつけて「これは、大変な状況が広がっている」と実感とともに思うのです。

毎日10-20組の小さな会社やお店の方々が経営の相談にやってくるOKa-Biz(日によってアドバイザーの勤務人数が違うので、相談対応の件数が日によって違うのです)の窓口の現場で実感していることをちょっと書いてみようと思います。

外国人観光客だけでなく、催事や出張減で売上大幅減の宿泊業

とにかくやはり2月の早い段階から経営に悪影響を実感しているのは、外国人観光客を受け入れるインバウンドに注力してきた観光業の方々でしたね。予約は半減というのも決して珍しくない状況。そして、しばらくすると国内客を主な対象とした宿泊施設でも大きなダメージが感じられるようになってきました。

2月半ば以降、スポーツや観光、文化関連に至るまで大規模イベントの自粛がまとまった宿泊客のキャンセルにつながっています。そして、国内出張は原則控えるように…といった企業内での指示が出ている会社も多いようで、出張ビジネス客も大幅な減少につながっています。とあるビジネスホテルの経営者は、2-3月でキャンセルは400件超、売上も昨年対比70%減(つまり、昨年の3割しか売上がないとのことです)とのことです。。

歓送迎会の中止などで売上に響く飲食店、休校の影響も

飲食店にも3月に入ってくると大きなダメージが続々と顕在化してきています。やはりイベント自粛の政府方針を受け、歓送迎会が軒並みキャンセル…との厳しい声も。街の小さなビストロでは「ランチママ会」がすべてキャンセルになった、とあきらめ顔。聞くと、小~高校の一斉休校を受けて子どもが自宅にいる事になったため、という理由だそうです。

キッチンカーを運営する個人事業主の方は、イベント中止が続出する中で出店機会を失いやはり売上は半減だとか。プロスポーツも延期や無観客試合となり、お花見シーズンのイベントも中止が伝えられる中、先を見通せない状況とのこと。まずは当面の資金繰りのための制度融資の活用を準備しています。

また、中には休校措置を受けてお仕事を休むスタッフの穴埋めをどうするか、と四苦八苦する経営者さんも。そして、買い控えや休日夜間の出足も鈍る中で、幅広く小売り・サービス業の方々の売上も、3月に入り縮小してきていることを様々な方とお話する中で、やはり感じます。

部品の調達に課題を感じている、町工場

1月後半など早い段階から影響を受けている前述の観光・宿泊業などに比べ、製造業関連の方々への影響は比較的当初は浅かったように感じます。しかし、新型コロナの影響が長期化するなかで、徐々に広がってきているのが部品・素材などの調達懸念。東日本大震災以降複数の仕入先の開拓をすすめ、品薄ながらも確保を安定的にできている事業者さんもいますが、中国からの仕入れの滞りの影響はじわりじわりと広がってきているよう。先週相談にお越しになった樹脂加工を行う事業者さんは一部資材の仕入れが途絶え、このままだと3月下旬には資材在庫も尽きてしまい生産を止めざるを得ないとのこと。また、精密機械加工のある事業所ではすでに原料調達が滞り生産調整のためパート・アルバイトスタッフを自宅待機にしているケースも生まれています。

2月上旬には、岐阜県関市では市指定の可燃ごみ収集袋が一時販売中止に。中国で製造したものを商社さんが仕入れ販売していたとのことですが、新型コロナの影響でこちらも仕入れが一時ストップ。幅広い流域で、今後さらにこうした問題は広がりそうです。

すでに政府などからは、中小企業向けの資金繰り支援や雇用調整助成金などに関する中小企業支援策が発表されています。また、都道府県や自治体の中には、独自でさらなる資金繰り支援(利子補給や、追加の保証枠付与など)などのほか、リモートワーク促進のための機材購入やオンラインサービス利用費用を支援する取り組みもあるようです。

そして、公的支援サービスは続々と新たなものが整備されつつあり、今後も更新されていくので、注目ください。

経済産業省 新型コロナウイルス関連ページ

https://www.meti.go.jp/covid-19/

厚生労働省 新型コロナ関連ページ「働く方と経営者の皆さまへ」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html#hatarakukata

日本国内だけでなくヨーロッパやアメリカ本土への感染が広がる中、中小企業を取り巻く経済環境はちょっと見通せない状況です。株価の下落や急激な円高などの影響も、今後広がるかもしれません。こうした景気の後退局面では、まずは手元資金を確保し、資金繰りをまずは強化したいところ。

そしてこうした状況下でも、知恵と工夫で売上を上げていくこともできるはず。

私自身も支援制度も活用しつつ、一社ずつ丁寧にサポートをしていく中で、すこしでも売上アップや維持につなげていけるようにサポートしていきたいと思います。

やろまい代表取締役/武蔵野大学EMC教授/オカビズ

01年より、人材をテーマにした地域活性に取り組むG-netを創業し03年法人化。現在理事。13年オカビズセンター長に就任。開設9年で約3300社・2万2千件超の来訪相談が押し寄せ、相談は1ヶ月待ちに。お金をかけずに売上がアップすると評判で「行列のできる中小企業相談所」と呼ばれている。2022年より武蔵野大学アントレプレナーシップ学部教授に就任。内閣府・女性のチャレンジ支援賞、ものづくり日本大賞優秀賞、ニッポン新事業創出大賞・支援部門特別賞ほか。内閣府「地域活性化伝道師」等、公職も。著作「20代に伝えたい50のこと」、KBS京都「KyobizX」・ZIP-FM「ハイモニ」コーナーレギュラーも。

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