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上西小百合衆院議員「くたばれレッズ!」は政治家を目指す若い女性のイメージを悪くする。

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

7月15日にJ1浦和レッズとドルトムントとの親善試合について「浦和酷い負けかた。親善試合は遊びなのかな」、「サッカーの応援してるだけのくせに、なんかやった気になってるのがムカつく。他人に自分の人生乗っけてんじゃねえよ」などとツイッターで批判していた上西小百合衆院議員。

22日には「浦和レッズファンを名乗る人間が押しかけて来ました」と、“殴り込み”をされたことを呟いた後に「くたばれレッズ!」とツイッターに投稿し、再びインターネット上で物議を呼んでいます。

私はこれまで政治家がツイッターなどのSNSを利用する目的としては「自分の政策を知ってもらいたい」、あるいは「毎日さまざまな仕事をこなして頑張ってます!」ということを有権者にアピールする場なのだと考えていました。そのため、上西小百合衆院議員がなぜサッカーファンとトラブルになっているのか理解ができません。単純に知名度を上げたいとか、メディアへの露出を増やしたいと考えているだけなのであれば、それは若い女性議員やこれから政治家を目指す若い女性たちのイメージを悪くするだけではないでしょうか。

有権者と、議員秘書や官僚に対する態度が全く異なるケースも

有権者に対する態度と、議員秘書や官僚に対する態度が全く異なる政治家も存在します。少し昔ですが豊田真由子衆院議員と一度お会いしたことがあるのですが、そのときは子育て政策について熱く語っていてとても真面目な議員だなと感じました。そのため先月、元政策秘書に対する暴言・暴行問題について知り、とても驚きました。

しかし、今回の件にかぎらず政治家の世界では議員秘書や官僚は自分たちの手足だ、奴隷だと思っている方もけっこういるようです。この問題の報道直後から他の政治家からの発言も相次ぎ、ある自民党の男性議員は「男(の国会議員)だったら、あんなのいっぱいいる。あんなものではすまない」などと語り、その後発言を撤回する騒ぎもありました。

そのため、こういった秘書に対する暴言・暴行問題は男性議員・女性議員など関係なく存在し、今回はたまたま豊田議員の元政策秘書が告発しましたがこれは氷山の一角でしかありません。今後は議員秘書のあり方や課題を考える必要があるのではないでしょうか。

代議士というのは有権者の声を聴く耳であり、代弁者

しかし、今回の上西小百合衆院議員の騒動に関しては彼女のツイッターや報道などいろいろ見てみましたが、なんでこのような事態になっているのかよくわかりません。そもそも、代議士というのは一般的には「国民から公選され、国民を代表して国政を議する人」であり、なんでその国民の代表がツイッター上で「くたばれレッズ!」などと投稿しているのか。もはや本来あるべき代議士の姿から逸脱しているとしか思えません。

最近では鈴木貴子衆院議員が第1子を妊娠したことについて「辞職しろ」という意見があったり、金子恵美衆院議員が公用車で自分の子どもを保育園に送っていたことが批判されたりと女性議員に対する風当たりが強いようです。

今、少子化対策や子育てについて様々な議論がされているわけですから、出産や育児を現在進行中で経験している女性議員というのは政策を作る上でも貴重な存在だと私は考えています。若い女性が議員になれば出産や育児だってもちろん経験するでしょうし、何かしらの障害を持った方が議員になる可能性もあります。誰が議員になっても働ける環境を作っていかなければ政治の世界に多様な人材を揃えることは不可能です。

そのような意味でも上西議員にはたとえば先輩議員として若い女性が政治の世界に進出できる環境整備をしたり、出産や育児で批判されている女性議員を擁護したりと他にできることがたくさんあるのではないでしょうか。

『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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