食べられるのに廃棄される食品は年間632万トン!貧困世帯の子どもを支援する『フードバンク』を広げよう

全国フードバンク推進協議会 事務局長の米山広明さん

『草の根ロビイング勉強会』運営メンバーとして一緒に活動している全国フードバンク推進協議会事務局長の米山広明さんにインタビューしました。

全国フードバンク推進協議会について

明智 今回は「フードバンク」についてお聞きしたいと思います。それでは始めに自己紹介をお願いします。

米山 私は山梨県南アルプス市出身です。2008年のフードバンク山梨設立時よりフードバンク活動に携わっています。これまでフードバンク活動全般、組織基盤強化事業、困窮世帯への生活相談支援、農作業を通じた自立支援等、新規事業の立ち上げや自治体への事業提案を担当してきました。現在は全国フードバンク推進協議会の事務局長を務めています。

明智 ありがとうございます。今回のテーマである「フードバンク」について教えてください。

米山 フードバンク活動とは一般家庭からの余剰食品や、まだ安全に食べられるのに包装の印字ミスや、外箱の変形などで通常の販売ができない食品を企業から引き取り、福祉団体や食品の支援を必要とする困窮世帯に無償で提供する活動のことです。

明智  全国フードバンク推進協議会はどのような団体ですか?

米山 国内フードバンク団体の抱える課題解決やフードバンクと取り巻く社会的な環境整備を行なうことにより食品ロス削減、貧困問題の解決に寄与することを目的として、2015年11月に設立されました。2017年4月現在、全国各地のフードバンク21団体が加盟しています。主に政策提言、広報活動、既存のフードバンクへのノウハウ提供、新設団体の立ち上げ支援、食品企業から加盟フードバンク団体への食品寄贈の仲介などに取り組んでいます。

食の不均衡(食品ロスと貧困問題)

明智 このフードバンク活動によって具体的にどのような社会課題が解決されますか?

米山 まだ食べられるのに廃棄される食品のことを「食品ロス」といいます。日本国内ではこの「食品ロス」は年間632万トンと推計されています。これは国連世界食糧計画(WFP)の飢餓に苦しむ国々への食料援助量(2014年で320万トン)の約2倍に相当します。

その一方で子どもの貧困率は年々上昇しており、2012年時点で16.3%。実に6人に1人の子どもが貧困状態であるとされています。見えていないだけで、1日のうち十分な栄養がある食事が給食だけという子ども達が、潜在的に存在しているというのが現状です。

膨大な量の食品が捨てられている一方で、十分な食事ができない子ども達がいる。フードバンク活動はこのような「食の不均衡」を是正することのできる活動です。フードバンクは「もったいないを、ありがとう」に変える活動とよく表現されることがありますが、その方が分かりやすいかもしれませんね。

3つの食品寄贈ルート

明智 食品ロスが年間632万トンとか、子どもの貧困率が16.3%とか深刻な問題ですよね。それでは、食品はどのように入手しているのですか?

米山 フードバンクには様々な食品が寄贈されていますが、食品が寄贈されるルートは主に3つあります。

まず1つ目のルートは、本業で食品を扱っている食品企業からの寄贈です。そして寄贈元の食品企業を細分化すると、食品メーカー、卸、小売に分けられます。これらの食品企業からは、外箱が凹む等の包装不良、印字ミス、欠品を回避するための余剰在庫、売れ残った季節商品、賞味期限が近くなった食品など、様々な食品が寄贈されています。

次に2つ目のルートは、食品を扱っていない企業や団体が備蓄している防災食品です。特に2011年の東日本大震災以降、防災食品を備蓄する企業が増加しました。防災食品は賞味期限が数ヶ月残っている時点で、新しい防災食品と入れ替えられるのが一般的です。この入れ替えの際に発生する、賞味期限が数ヶ月残っている防災食品がフードバンクに寄贈されることになります。

防災食品を寄贈する企業には、例えば電子部品を製造している工場や保険会社、病院や市役所や県庁など多種多様です。たとえ本業で食品を扱っていなくても、防災食品を備蓄している全ての企業や組織は、フードバンクへの潜在的な寄贈者になり得ると言えます。

最後の3つ目のルートは一般家庭です。一般家庭からは、フードドライブという活動を通して食品が寄贈されています。よくフードバンク活動とフードドライブが混同されることが多いので簡単に説明します。

フードバンク活動は企業や一般家庭から食品を集め、保管、配布するまでの一連の流れ全体を指します。

それに対してフードドライブは一般家庭から食品を集める取り組みを指します。フードドライブでは学校や職場、社会福祉協議会、行政等が食品の回収拠点となり、一般家庭から余剰食品が集められます。そのようにして集まった食品がフードバンク団体等に寄付されることになります。

国内におけるフードバンクの歴史

明智 たしかに外箱が凹む等の包装不良や、印字ミスなどで食品が捨てられてしまうなんてもったいないですよね。日本ではフードバンクの取り組みってどうなっていますか?

米山 日本では2000年頃にフードバンク活動がスタートし、2017年4月現在では約80団体が全国各地に設立されています。

フードバンクの活動目的は細かく見ると様々あるのですが、ザックリ大きく分けると2つのテーマがあります。それは前述したとおり食品ロスと貧困問題です。しかしながら、2008年以前においては、多くの団体が食品ロスを削減するという活動目的に基づき設立されていました。

それがなぜかというと2008年以前は日本国内では貧困問題は存在しないという認識が一般的だったからです。そもそも生活に困っている人はいないと考えられていたので、生活に困っている人を助けたいという人もほとんどいなかったのです。その後、2008年を境にして貧困問題の分野で生活困窮者への支援を活動目的として、設立される団体が徐々に増えてきました。

そのような変化には、リーマンショックによる貧困問題の深刻化が大きく影響していました。リーマンショック後は世界的な景気後退に陥り、日本でも多くの企業が倒産したり、大規模なリストラが行われました。その結果、多くの人が職を失い、生活に困窮する人が急増することとなりました。

また、貧困問題の深刻化に伴い、メデイアでも貧困問題が多く取り上げられるようになり、社会的な認知も進みました。そして、このような社会情勢の変化により、困っている人を助けたいという思いからフードバンク活動を始める団体が徐々に増えて来ました。

ただ注意点としては、フードバンク団体の活動目的は、食品ロスの削減か、生活困窮者への支援のどちらか一方という事ではありません。二つが共存していることもあれば、元々食品ロスの削減を活動目的にしていた団体が生活困窮者の支援に力を入れるようになるケースもあります。さらに、一重に生活困窮者への支援といっても、路上生活者、高齢者、外国人など、どの層への支援を優先するかは、各団体の考え方や活動地域の地域性によって様々です。

最近では特に貧困世帯の子どもへの支援を活動目的として活動をスタートさせる団体が増加傾向にあり、日本国内で1年間に設立される団体数も年々増えています。現在では毎月2団体程度のスピードで全国各地のどこかで、フードバンク団体が設立されているという状況です。

日本国内のフードバンクの歴史を振り返ってみると、社会的な情勢の変化とともに、フードバンクのあり方や、フードバンクに求められるニーズも変化し続けてきました。そして、この流れは今後も変わらないと私は考えています。つまり、今後も社会的なニーズの変化に伴い、フードバンクのあり方も常に変化し続けるだろうと私は考えています。

明智 フードバンクに食品が寄贈されるルートは主に3つあると伺いましたが、この記事によって協力してくれる企業や団体が増えれば良いですね。今日はどうもありがとうございました。