社会を変える方法は『デモ』や『選挙』だけではない。これからは『ロビイング』も必要だ!

(写真:ロイター/アフロ)

昨年、安全保障関連法制をめぐってSEALDs(シールズ)などによるデモ活動が活発に行われました。しかし、デモだけでは社会を変えることも、政治を変えることもできません。なぜならデモやロビイングはそれぞれが一つの手法であるからです。例えるならデモが北風で、ロビイングは太陽にあたるのではないでしょうか。社会を動かしていくためにはこれらの手法を上手く組み合わせていく必要があるのです。

そして、ロビイングという手法を知ってもらうことによって有権者が政治に関わる機会がデモや選挙で投票するだけではなく、自分の意見や要望を政治家に対して伝えることが当たり前になる社会に変わって欲しいです。職業としてのロビイストまではいかなくても、市民の立場で政治家に対して直接モノが言える環境をこれから作っていく必要があります。

ここでは、ロビイングのことや、ロビイングに関係してくるアドボカシーのことなどについて簡単に説明していきます。

アドボカシーの重要性

「アドボカシー」は、社会的弱者やマイノリティなどの権利擁護をするために社会に対して「課題広報」や、「政策提言活動」を行うこと全般を指しています。この「アドボカシー」の中でも、特に「政策提言」にあたる活動をロビイングと呼びます。

「課題広報」については、これまで私が関わってきたLGBTの自殺対策を例に説明してみます。まず政治家や官僚に「LGBTの自殺対策やってください」と要望書を持って要望しに行きます。そうすると政治家や官僚は「世論が盛り上がらないと動けない」と言ってきます。そこで世論を盛り上げるために「課題広報」を行うことが必要になってきます。私の場合だとメディアと連携したり、SNSを活用したり、Yahoo!ニュースで記事を書いたりしています。それでいくつかの新聞やテレビとかで取り上げられると、政治家や官僚が「そろそろ世論が盛り上がってきたから動かないと」ということで話が進んでいくことになるのです。そのためアドボカシーを進めていくには、ロビイングと課題広報がワンセットになります。

草の根ロビイストとは

政治に影響を及ぼしたり、法律や条例を変えたり作ったりするために、議員や官僚、行政などに働きかけを行う人、つまりロビー活動をする人のことを「ロビイスト」と呼んでいます。

これまで日本で行われてきたロビイングは、経団連や日本医師会、農協などの業界団体が「もっと金よこせ」と言って政治家に圧力をかけることがメインでした。また、労働組合も政治運動の一環として政策提言活動を行ってきています。これらの組織は圧力団体と呼ばれ自分たちの利益を図るべくロビイングなどの政治活動を行ってきました。

さらにこれらの圧力団体は組織内候補を選挙のときに出馬させて自民党や民進党などに送り込んでいます。これらの組織内候補が当選したら、この議員を中心として圧力団体はロビイングを行っていくことが可能となるのです。

その一方で、これまで弱者やマイノリティを守るためのロビー活動を行う人材が足りませんでした。私はNPOやソーシャルビジネスの担い手が事業と結びつけて、弱者やマイノリティを守るロビイングを行うのが良いと考えています。

もともと「草の根ロビイスト」は認定NPO法人フローレンスの駒崎代表が使い始めた言葉でした。圧力団体が行うロビイングと、NPOやソーシャルビジネスが行うロビイングとは目的がぜんぜん異なるので「草の根ロビイスト」という違う名称を使用しているのです。フローレンスでは「ロビイング」と「事業」を車の両輪と考えています。事業だけでもなく、ロビイングだけでもなく、その両方をまわすことによって、社会を変えていけるという発想です。困っている人を減らすためには、事業で対応するだけではなく、困った人を生み出す仕組み自体を変えていかなければならないのです。

草の根ロビイストを増やすために

私の場合はこれまで民間企業に勤めながら時間をつくってボランティアでロビー活動を行っていました。平日の昼間に有給休暇を取得して国会議員の事務所に通い続けたのです。民間企業にいたときは私がLGBT当事者であることも、ボランティアでロビイングしていることも全くカミングアウトしていなかったので、けっこう気を遣っていました。

しかし、フローレンスに転職してからはロビイストとして給料が貰えることも、ロビイストが職業の一つとして認められている職場が日本にあったということも嬉しいことでした。社会的な課題を解決するためにロビイストに対して給料を払えるNPOやソーシャルビジネスが、もっと増えて欲しいと考えています。

ロビイングはそれぞれテーマや、人によってやり方が異なるためこれまでマニュアルというものは存在しませんでした。そこで、『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)では暗黙の了解となっていたロビイングのルールと、様々な立場からロビイングに関わってきた方たちのテクニックを紹介しています。ぜひ、「ロビイングやってみたい!」という方たちにはこの本を読んで実践していただきたいです。