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産みの親のもとで育つことのできない子どもは約4万人。すべての子どもたちに温かい家庭を!

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
大道芸人とバルーンアーティストによるパフォーマンスショー「子どもステージ」

日本では産みの親のもとで育つことのできない子どもが約4万人おり、このうち約85%が施設で暮らしています。海外では、こうした子どもたちは、養子縁組や里親制度を通じて家庭で育つことが中心となっています。

そこで、日本財団では4月4日を「養子の日」に制定し、養子縁組への理解を深めてもらう周知啓発イベントを開催しています。

「すべての子どもは家庭環境の下で成長すべきである」

日本財団の「ハッピーゆりかごプロジェクト」では、産みの親がなんらかの事情で育てることのできない子どもたちが、特別養子縁組によりあたたかく愛情のある家庭で育つことのできる社会を目指し、周知啓発および政策提言や、妊娠SOS相談窓口の強化とネットワーク形成、民間養子縁組団体への資金協力などを行っています。

「国連子どもの権利条約」では、「すべての子どもは家庭環境の下で成長すべきである」と宣言しています。また、2009年の国連総会で採択された「子どもの代替養育に関するガイドライン」には、「乳幼児、特に3歳未満の子どもの代替養育は、家庭を基盤とした環境で提供されなければならない」と書かれています。

しかし現在の日本では、産みの親が何らかの事情で育てることのできない子どもの8割以上が施設で育っており、0歳から2歳までの約3000人の乳幼児が乳児院という施設で暮らしています。また、虐待死する子どもで一番多いのは0歳0ヶ月児であり、その原因として予期せぬ妊娠が原因であるケースが多いことが推測されています。

子どもは産みの親の元で育つのが最も望ましく、まず実家庭への支援を充実させることが必要ですが、支援があっても産みの親が育てることが難しい子どもについては、特別養子縁組によって恒久的な家庭で育つことが子どもにとって望ましいと考えられています。

「よ〜しの日2016」に行ってきた

日本財団では「特別養子縁組」をより多くの人に知ってもらい、子どもたちが特別養子縁組であたたかい家庭で育つことのできる社会を目指して、養子縁組への理解と深めてもらう周知啓発イベント「よ〜しの日2016」を開催しました。

1Fのロビーでは大道芸人とバルーンアーティストによるパフォーマンスショー「子どもステージ」や、自分の好きな色を探してサラサラと砂のお化粧をする「砂絵ワークショップ」といった子どもと一緒に楽しめるプログラムを開催。

2Fの会議室では民間の養子縁組団体の説明会や、ブース出展コーナーがありました。

養子縁組を仲介する機関一覧

8Fの食堂では身体に優しいオーガニックランチプレートやドリンク等を販売している「子どもカフェ」を開催。

イベント全体で親子が楽しめる会場作りになっていました。

「子どもカフェ」
「子どもカフェ」

制度についてはポジティブな印象だが精神的重圧も

特別養子縁組とは子どもの福祉のため必要があるときに、血縁関係のない夫婦と親子関係を結ぶ制度です。1988年から始まりました。半年以上の試験養育期間を経て、家庭裁判所の審判で許可されます。養子は6歳未満、養親となる者は配偶者があり、原則として25歳以上の者で、夫婦共同で養子縁組をする必要があります。特別養子縁組の場合は子どもと実親との親子関係は消滅し、戸籍上も実子と同様に記載されますが、普通養子縁組では養子が戸籍上は実親との関係は残り、二重の親子関係になる縁組になります。

なお、里親制度と養子縁組は混合されがちですが、里親委託は里親が(実親の生活が安定するまでなどの)一時的に子どもを養育する制度であり、里親と子どもの戸籍上の繋がりは発生しない点が養子縁組と違います。

日本財団の調査によると「特別養子縁組制度」の認知率は45.9%、「里親制度」の認知率は58.0%でした。「里親」と「特別養子縁組」の違いまで理解している人は2割程にとどまります。

2つの制度とも印象は「どちらともいえない」という回答が最も多く、その理由としては「よく知らないから」でした。その他の理由を見ると「産みの親が育てられない場合に必要な方法だから」「不妊など子どもを迎えたい夫婦にとっても良い制度だから」「子どもが家庭で育つために必要な制度だから」といったポジティブな印象が両制度ともに上位にあがり、ネガティブな印象は持たれていません。

また、「里親」になってみたいかという点では、9割以上が「いいえ」と回答し、理由は「自信がない、責任が重すぎるから」が最も多く、「経済的な負担から」が続いています。心理的な重圧感・金銭的な問題から実際に里親を希望する声は少ないようです。

特別養子縁組が当たり前になる社会の実現に向けて

同じく日本財団の調査によると「養子の日」の認知はわずか2.3%(前回調査2015年3月 3.1%)、日本財団が特別養子縁組に関わる活動をしていることの認知は5.1%(前回調査2015年3月 6.3%)となっており、前回の調査と比較しても認知率の伸びは見られませんでした。

特別養子縁組制度と里親制度については、知らないのでニュートラルな印象しか持っていないという実態もあったため、これらの制度や日本財団の活動などの認知率向上を目指していく必要があるようです。

『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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