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WTAファイナルズ:初の大会で覚える戸惑いと次戦への決意……大坂なおみ、生き残りをかけケルバー戦へ

内田暁フリーランスライター
(写真:ロイター/アフロ)

■WTAファイナルズ:●大坂なおみ 5-7, 6-4, 1-6 S・スティーブンス■

 昨年の全米オープン優勝者と、今年の全米優勝者が初戦で対戦――それが、年間上位8選手のみが集う、この大会の特性を端的に物語っていると言えるでしょう。

 スティーブンスと大坂なおみの両選手にとり、ツアー・ファイナルズは初のステージ。しかも会場のサーフェスは、やや独特だと多くの選手が声を揃えます。そのような環境に適応する困難さは、両者ともにブレークでスタートした、立ち上がりの数ゲームに投影されます。

 「湿度のせいか、バウンドが他と違う」とスティーブンスが言えば、大坂も「タイミングを合わせるのがとても難しかった。ベースラインの遥か後方に構えてしまい、それは私のスタイルではない」と眉根を寄せる。そのようにお互いリズムをつかむのに手こずるなかで、ジリジリと主導権を手繰り寄せたのは、守備力とプレーの多様性に勝る昨年の全米優勝者でした。大坂の強打を拾い、スライスやアングルショットで前後左右に走らせるスティーブンス。大坂も粘り強く打ち合いますが、どうしても先にじれてミスをするのは大坂の方です。

 それでも、第2セットは我慢強く打ち合った大坂が奪い返しますが、最終セットではまたも第1ゲームでブレークを許します。そして恐らくは、この試合最大のターニングポイントとなったのが、続くゲーム。3連続ブレークポイントの好機をつかむも、サービスの質を上げてきたスティーブンスに反撃の芽を摘まれます。最後はダブルフォールトで、大坂のデビュー戦は2時間25分の熱戦の末の黒星となりました。

 コート上では試合終盤、ラケットを落としたり膝から崩れるようにしゃがみ込むなど、取り乱した姿も見せていた大坂。しかし試合から約1時間後の会見では、落ち着き払った表情で冷静に試合を振り返る彼女がいました。

 この大会は、例え初戦で負けても二日後には、次の試合が待っています。「落ち込んだのは試合後5分間くらいだけ。その後は、今日の試合を見直し、次に向けて修正しようと考えていた」と笑みすら見せました。

 その次の対戦相手は「お互いに、プレーの特性を知り尽くしている」というアンジェリーク・ケルバー。ケルバーも初戦で破れたため、次は両者ともに決勝トーナメントへの生き残りをかけた重要な一戦になります。

「敗戦からの方が、より多くを学べる」

 落ち着き払った表情でそう断言する大坂は、今年のウインブルドンで破れた相手との戦いに挑みます。

※テニス専門誌『スマッシュ』のFacebookより転載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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