Yahoo!ニュース

BNP パリバオープン:大坂なおみ、世界5位撃破でベスト4進出! その躍進を支えるものとは……

内田暁フリーランスライター
大坂を支えるチームスタッフ。右奥からコーチのバヒン、隣がS&Cコーチのシラー(写真:Shutterstock/アフロ)

■女子シングルス準々決勝 大坂なおみ 6-2,6-3 Ka・プリスコワ(CZE)[5]■

 試合の趨勢を決定づけるフォアのクロスを叩き込むと当時に、この日最大の「カモーーーーン!」の声が、センターコートに響き渡った。

 第2セットの、ゲームカウント4-3とリードして迎えた自身のサービスゲーム。大坂なおみはフォアの打ち合いでプリスコワをジリジリと押し込み、相手のボールが浅くなるや、踏み込みストレートに展開してウイナーを奪います。第2セットは、2度ブレークしながらその都度追いつかれましたが、第7ゲームをブレークした直後のこのゲームでは、焦らず、なおかつ自ら決めにいく冷静さと闘志を発揮。終わってみれば試合時間1時間18分、6-2,6-3のスコア。世界5位から、完勝と言える勝利をつかみとりました。

 試合後のプリスコワは、「敗因は相手ではなく、自分の中にあった」と言います。ナイトセッションに組まれた一戦は、始まったのが夜9時近く。気温は日没と共に一気に下がり、さらには強風がインディアンウェルズの町を吹き抜けます。それらの要因も影響したか、プリシュコワは「サービスもリターンもうまくいかなかった。今日の私は不調だった」と抑揚の無い声で言いました。

 対する大坂は、難しいコンディションに苛立つ相手の心理を早々に察し、「ボールを確実に返し、相手に多くのボールを打たせる」策を取ります。そのプランを完遂し、第2セット序盤のもつれた中から抜け出したことを、「誇りに思う」と彼女は言いました。

 今季の大坂が、幾度も「重点的に取り組んでいること」として挙げているのが、「ポジティブな精神状態を保つ」こと。それは一つの試合のみならず、今大会のここまでの1週間、計4試合を通じて持続できていることでもあります。

 その理由を大坂は、「周囲の人達から良い影響を受けている」と、チームスタッフの相性や人間性に求めました。今大会、公私に渡り大坂をサポートするのは、コーチのサーシャ・バヒンに加え、ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチのアブドゥル・シラー、トレーナーの茂木奈津子、ナショナルチームの吉川真司コーチに、父親という面々。しかもシラーはセレナ・ウィリアムズのS&Cコーチを4年に渡って務めた人物であり、正に今回は大坂のために“女王育成チーム”が結成されたと言えるでしょう。それら、プロフェッショナルなスタッフに囲まれた大坂の心身の充実は、緊張感と笑い声が交錯する練習風景からも見て取ることができました。

 今大会の準決勝進出で4つの勝ち星を連ねた大坂ですが、実はこれは彼女にとって、一大会での最多連勝記録タイ。というのも、これまでグランドスラム4回戦やWTAツアー準優勝などの実績を持つ大坂ですが、ITF大会も含め、トーナメント大会での優勝がないのです。だからこそ本人もスタッフたちも、一大会を通じて勝ち抜くだけの心身の安定感を、彼女に求めているのでしょう。

 これまで跳ね返されてきた壁を打ち破るべく、プレミア・マンダトリー大会の準決勝という大舞台に挑む大坂。その彼女を待ち受けるのは、世界1位の、シモナ・ハレップです。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。連日大会情報やテニスの最新情報を掲載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

内田暁の最近の記事