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BNPパリバオープン:パワーショットは敢えて封印し、大坂なおみ、試合巧者のラドワンスカにも完勝

内田暁フリーランスライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

2回戦 大坂なおみ 6-3, 6-2 A・ラドワンスカ

 時速200kmを越える高速サービスや、目を見張るスーパーショットがあった訳ではありません。しかしその事実こそが逆説的に、今の大坂なおみの強さを物語ります。

「彼女(ラドワンスカ)を、ふっ飛ばそうと思っていた訳ではないわ。彼女は、ペースを作るのがとてもうまい。だから私はいろんな球種を混ぜながら、リズムをつかませないようにしたの」

 それが、相手が私にやってきたことでもあるけれどね――そう続けて彼女は、いたずらっぽい笑みを広げます。「精神的に落ち着いていること」、そして無理をせずに来たるチャンスをしっかり待つこと……それが大坂が、“マジシャン” “忍者”などの異名を取るテニス界随一の試合巧者のラドワンスカから、完勝を手にした要因でした。

 

 セレナ・ウィリアムズのヒッティングパートナーを8年の長きに務め、昨年末から大坂のコーチとなったサーシャ・バヒンが、就任当初から言い続けてきたことが「君のショットは力を抑えてコースを狙っても、ほとんどの女子選手に打ち勝つ力がある」ということでした。

「僕はセレナやビカ(アザレンカ)のボールを受け続けてきたんだ。その僕が言うんだから、間違いない!」

 新コーチのその言葉は、彼が積み重ねてきた実績に裏打ちされ、大坂のテニスに一本の芯を通します。

 この日の試合でも大坂は、本人が語った通り、球種やコースを打ち分けながら、ラリーを重ねるごとにジリジリと主導権を引き寄せました。相手はウィンブルドン準優勝の実績を持つ元世界2位ですが、上位選手の貫禄漂うのはむしろ大坂の方です。

 さらには、試合終盤に向けて加速する“20歳のライジングスター”は、第2セットの第7ゲームではフォアの3連続ウイナーで、事実上勝利を決定づけるブレークを奪いました。そうして試合を決めたのは、浮いたリターンを豪快に叩き込むジャンピングスマッシュ。相手のお株を奪うショットバリエーションと守備力で試合を組み立てつつ、最後は持ち前の攻撃性とパワーを見せつける、心憎いまでの快勝でした。

 大坂が取り組む“安定感”と“ポジティブな姿勢”の獲得は、一つの試合のみならず、大会を通じて掲げる課題でもあります。初戦でシャラポワ、2回戦でラドワンスカというビッグネームを立て続けに破った大坂が、3回戦で対戦するのは、世界100位のサーシャ・ビッカリー。挑戦を受ける側に立っての戦いは、大坂の成長を測る、新たな試金石となるでしょう。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。大会レポートや、テニスの最新情報を連日掲載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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