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上地結衣、世界1位破り全豪OP車いすテニスシングルス初優勝 同期の“94年組”から刺激も

内田暁フリーランスライター
(写真:ロイター/アフロ)

○上地結衣 6-7(2) 6-3 6-3 グリフォン

勝利の瞬間目元をぬぐったその仕草に、客席や取材陣から「泣いている?」の声も上がりましたが、本人はそう思われたことすら意外だったようで、「汗です」と笑顔で断言しました。

全豪のシングルス優勝は初。しかも決勝の相手は、世界1位にして去年のリオ・パラリンピックの金メダリスト。しかし栄冠を勝ち取った次の瞬間には、上地の視線は既に、自らの課題や次の試合に向いていたと言います。

「本当は自分でポイントを取って勝ちたかったという気持ちがある。相手のダブルフォールトなどに助けられたので…」

バックのスライスが鋭いこと、そして緊張の場面になるとフォアのミスが増えること……それら対戦相手の特性は、幾度も重ねた対戦経験から重々分かっていました。それにも関わらずバックでリターンウイナーを何本も決められた事実、そして自身のバックのスピンショットでなかなかポイントを奪えなかった現実が、優勝してなお、彼女の表情を引き締めさせていたのでしょう。

若い選手たちの成長も目立ち、選手層が年々厚くなっている女子車いすテニス界。

その現状の中で「再び世界1位に戻る」ことを自らに課す上地にとっては、今大会の優勝も、単なる通過点に過ぎないようです。

ところで、普段は一般のテニスを見ることはあまりないという上地ですが、今大会では、女子ダブルスでベスト4に躍進した穂積絵莉/加藤未唯の試合を熱心に観戦する彼女の姿がありました。

「お二人とも、私と同じ歳なので」。

そう……実は上地も、今大会で活躍した“女子テニス94年組”の一人。

「同じ年齢だし、日本人の女子ダブルスだということで見たいと思って、準々決勝と準決勝の2試合を見させてもらいました」。

世界の頂点に肉薄する二人の姿を見て、刺激をもらったという上地。

同期による切磋琢磨は、ここでも相乗効果を生んでいたようです。

※テニス専門誌『Smash』のfacebookから転載。連日テニスの最新情報を掲載しています。

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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