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快勝で全豪4回戦進出の錦織圭。驚異のプレーを見せるフェデラーと「楽しみ」な対戦へ――

内田暁フリーランスライター

○錦織圭 6-4 6-4 6-4 ラッコ

「そういえば、フェデラーってもう35歳なのか……」

3回戦を快勝し、記者会見までの短い期間に遅めの夕食を取りながら、次の対戦相手になるであろうフェデラーの試合を見ていた錦織は、ふと、そんなことを思ったと言います。

「自分が35になった時に、あれだけの……身体とモチベーションで戦えているのかな?」

それが、モニターの中で縦横にコートを駆けるフェデラーを見ながら、彼が率直に感じていたことでした。

錦織を改めて驚かせたその年齢に加え、フェデラーは手術とケガによる戦線離脱から、半年ぶりに戻ってきたばかりです。公式戦という意味では、今回の全豪オープンが復帰後初の大会。にも関わらず彼は僅かに3試合目にして、第10シードのベルディフが手も足も出ないほどのサービスを叩き込み、繊細なタッチでボレーを沈めていきます。

錦織の勝利から遅れること、約1時間――鮮やかなバックハンドのウイナーを決めるとともに、フェデラーはロッド・レーバー・アリーナの観客の大声援を浴びながら、4回戦進出を決めました。試合開始からは、僅か1時間30分。相手に一つのブレークポイントも与えることのない完勝でした。

「こんなにサービスの調子が良く、ブレークポイントを与えずに勝てるなんて、正直予想していなかった。自分でも驚いているよ」

会心のプレーをそう振り返るフェデラーは、来たる錦織との対戦について、表情を引き締め語ります。

「今日のようにサービス、サービスという訳にはいかないだろうね。打ち合いは当然多くなるだろう」。

一方の錦織が、3回戦で2時間11分の快勝を手にした訳も、サービスの好調さにありました。2回戦では、ストレート勝利ながら「ブレークされたゲームが多かった」ことを反省材料とした彼は、3回戦ではサービスでリズムを作り、可能な限り早く試合を終えることを心掛けます。190キロを軽く超えていく高速サービスに加え、効果的に決まったのがワイドに鋭く切れるスライスサーブ。

加えて夜の試合であったことや、降雨による多湿の気象状況が、ボールをいつもより重くしていました。その影響もあり比較的スローペースになる打ち合いの中、錦織は「思いっきり攻められた」と言います。46本のウイナー、そしてファーストでは82%、セカンドでも67%を叩きだしたサービスポイント獲得率が、スコア以上に圧倒した試合内容を示していました。実際には相手に2本与えていながら、試合直後に「たぶんブレークポイントを与えてないと思う」とコメントしたのは、それだけ心地よくサービスを打てていたからでしょう。

お互いに持ち味を存分に発揮し迎える4回戦での対戦を、錦織は「楽しみです」と明言します。

「もちろんタフな相手ですし、今日のテニスを見る限りとても調子も良さそうなので、思いっきりプレーしたいですね」。

フェデラーは、錦織が少年時代に憧れの視線を向けた選手であり、そして自らもトッププレーヤーとなった後は、時に自身のテニスへの想いを重ね、時には将来像を映す対象となりました。

その元世界1位と初めて練習でボールを打ち合ったのは、錦織が17歳、フェデラーは25歳の時。

それから、10年――。7度目の顔合わせにして初めて、ランキング上では錦織が上位として、両者はこの一戦を迎えます。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。連日テニスの最新情報をお伝えしています。

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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