全豪オープン6日目 メルボルン現地リポート:チャレンジャーたちをはねのけ、錦織圭、堂々の16強入り

※こちらの記事は、テニス専門誌『スマッシュ』facebookの転載です。連日、全豪オープンの現地レポートを掲載しています

錦織圭 67(7) 61 62 63 S・ジョンソン

「第2セット最初の数ゲームが鍵だった。あそこを取られたことでケイに完全に流れをつかまれ、一気に走られた」

そう試合のターニングポイントを振り返ったのは、敗者のスティーブ・ジョンソンでした。彼は、こうも続けます。

「だからケイは、世界の5位なんだよ」

錦織圭とジョンソンは同じ1989年生まれで、誕生日もわずか5日違い。過去の2度の対戦では、いずれも競った内容ながらも錦織が勝っています。直近の対戦は、約3週間前のブリスベン。既にお互い手の内を知る相手であり、特にジョンソンにしてみれば、同期の出世頭にひと泡吹かせてやろうとの野心も強かったはず。

「僕にはゲームプランがあるし、それを遂行するつもりだ」

試合前には、そのような決意も口にしていました。

ジョンソンのゲームプランは、試合序盤に凝縮されていたでしょう。通常、ジョンソンはバックの大半をスライスで打ちますが、立ち上がりは両手で強打する場面が多く見られました。第2ゲームではバックのリターンをダウンザラインに叩きこみ、ウイナーも奪います。先にブレークしたのは錦織ですが、ラリーでリズムがつかみ切れずに追い付かれ、タイブレークの末に第1セットを失うことに。追い風は、相手に吹いているかに思われました。

第1セットと第2セット間の90秒、錦織は頭を働かせ、試合を分析し、戦術を練り直します。

「第1セットはバックを狙い過ぎた。勇気を持ってフォアにも打ち、相手を左右に走らせよう」

その勇気は、第2ゲームで実を結びます。相手のダブルフォールトにも乗じ、2度のデュースの末にブレーク。続くサービスゲームでは、センターに196キロのエースを叩きこむなどラブゲームでキープ。ジョンソンが嘆いたように、この数ゲームで錦織は、誰がコート上のボスであるかを示しました。第2セットのセットポイントでは、ネットすれすれを鋭角に滑るバックのスライスを打ち込み、返球をオープンコートにふわりとボレーで返す錦織。変幻自在のテニスが、1万人の観衆を大いに沸かせました。

日本人のみならず地元のファンをも味方につけた大会第5シードは、高まる「ニシコリ」コールを背に、第3セット以降ますます加速します。ボールを捉えるタイミングはより速まり、左右への展開にジョンソンはついていけなくなりました。「第2セット以降、彼はボールを捉えるのが速くなり、時間を与えてくれなかった。多くの局面で、ラケットを振り遅れると感じるようになった」。そうジョンソンは、述懐します。

結果的に最終ゲームとなった第4セット第9ゲームは、錦織の多彩なショットのオンパレード。バックのダウンザライン、ライジングのフォアのクロス、そしてリターンで押し込んでからの鮮やかなドロップショット。最後はフォアの逆クロスの返球が、大きくラインを超えていきました。

ここまでの3試合を振り返り錦織は、相手がこれまでと戦術を変え、失う物のないチャレンジャーとして向かってくるプレッシャーを感じたと言います。誰からも標的にされる立場――それがトップ5の宿命であることを、彼は静かに受け入れているようでした。

向かってこられる……と言えば、会見場でもこれまで以上に“チャレンジング”な質問が向けられていたように感じます。この日も海外記者からの問いは、様々なバリエーションに及びました。

「アジアのトップ選手としてどう感じているか?」

「同じIMGアカデミーの出身であり、今季大躍進を見せている米国女子選手のマディソン・ブレングルについてどう思うか?」

果てには、サッカーの「アギーレは、日本の代表監督を続けるべきか?」というものも。

試合内容のみならず、笑いや話題性、あるいは世間全般の関心事項について意見を求められる――それもまた錦織圭が、一テニス選手の枠を超えた、スポーツ界のスターになった証でしょう。