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新型コロナウィルスによる一斉休校等で ひとり親は半数近くが減収と回答

赤石千衣子しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長 
(写真:アフロ)

 

突然の一斉休校

 

 新型コロナウィルスの感染防止のため、今週から小中高特別支援校等の春休みまでの一斉休校がほぼ始まっている。突然の方針に、子育て世帯や関係者に激震が走った。

 特に、ひとりで子どもを育てているひとり親と子どもたちにはどのような影響が出ているのだろうか?

 子どもを預かってくれる人がいないので仕事に行けなかった、あるいは時間を減らしたなど働く状況にも影響が現れていると推測された。また子どもたちの時間の過ごし方にもいろいろな懸念がある。新コロナウィルスによるさまざまな事業所でそれぞれ、売り上げ減によって仕事時間を減らされたりと多様な影響が出ていると言われる。

 そこで、シングルマザーと子どもたちを応援する「NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ」は、会員2800人にメールマガジンを使い、「新型コロナウィルスの一斉休校などでのひとり親と子どもたちのくらし調査」のアンケートフォームを送り3月2日〜3月5日にかけて232人の回答を得た。その速報をお伝えし、暫定的な提言も行いたい。

 ちなみに、回答者は18歳以下の子どもがいるひとり親であり(別居含む)、第1子の年齢は小学校低学年55人、小学校高学年45人、保育園・幼稚園通園 24人、中学生45人、高校生42人で、第1子がすでに大学生成人の子どものいる親(第1子以下に小・中・高・保育園等に通う子どもがいる)数人であった。

小学生低学年の子のいる親の回答が比較的多かったのはこの層にこまりごとが集中している結果であると推測している。

学童に預けられない親がかなりいる

 まず、子どもたちはどこで過ごしているのかを聞いた。

 

学童クラブに行っている 28

学校と学童       2

家で親と過ごしている   6

同居の親族がみてくれている 8

自宅で子どもだけで過ごしている 3

遠方の親族がきてくれて子どもをみてくれている 2

 小学校低学年の子どもたちの親55人のうち、約半数の28人が子どもは学童クラブに通っており、また授業時間のあるうちは学校に登校している子もいた。在宅ワークになったり仕事が減って仕事にいかなくなった親と一緒にいる例もあったが、自宅で親族がみてくれている、遠方から親族に来てもらい子どもをみてもらっているひとり親もいた。

 2月27日、「小中高特別支援校等の春休みまでの一斉休校」の一報を聞いた直後に「保育園と学童クラブが開かれる」と聞いて少しほっとしたのだった。しかし翌週から突然朝から子どもたちを預かるというのは大変なことだ。どうも実態はずべての子をあずかれているということでもないようなのだ。

 学童クラブに預けられなかった人の中にはこんな声があった。

小学校1年生の子供を持つ親です。学童も利用制限があり、再申請が必要で、書類の提出が間に合いませんでした。また、時間も17時までのため、仕事を時短または休暇の相談をしたところ、通常の春休み開始までの3週間は休暇になりました。そのため、家で一緒に過ごします

具合が悪い子が出たりマスク無しで咳をしている子がいたり、37.5℃にならないように解熱剤を飲ませて来ているかも知れないと学童の先生に言われ来週から休んで欲しいと言われ来週から春休みが終わるまで仕事に行けなくなりました

 学童クラブは場所も狭く(密度が高くなれば感染リスクも高くなる)、朝から子どもたちが来るためには支援員も確保しなければならない。そこで、この一斉休校時期には「なるべく休んでほしい」という要請が強く、「やむをえない人だけ」と言われたりする。また再申請が必要でできない親もいて、結局学童クラブに預けられずに仕事にいけない親がいて、一方では子どもだけで過ごしている、ということになる。

 この学童クラブの開所を十全にするためには、職員体制を十分に行えたりする予算措置が必要である。

 また学校のほうが広さも十分なので登校できるようにすることもひとつの方策であると思える。

 また使いかってのよいベビーシッター補助やファミリーサポート等の支援も必要だ。

 その結果といってもいい。 

 小学校低学年の子どもたち55人のうち約5%にあたる3人は、子どもだけで家にいた。

 何歳から子どもたちはひとりで留守番ができるのだろうか。たぶん小学校高学年になってから徐々にできるようになるのだろう。30分だけの留守番から練習していき、徐々に1日でも大丈夫になっていくのは小学校5.6年生くらいかもしれない。

 当然小学校低学年でひとりで過ごさせるのは親も葛藤が強い。

勤務先の人員不足により、休むことができず、また勤務時間の調節も不可能なため子どもだけで留守番させることへの強い躊躇を抱えながらも出勤せざるを得ない状態。(パート、小学2年、1年)

 週1日程度は在宅勤務になった。その分出社日の業務過多がひどく残業がやばい。寝ている子どもしか見ていない。結果子どもがお風呂に入ってない。(正社員、小学校3年)

 小学校3年生の子の寝顔しかみられない。

 このお母さんはこのあとに、「子どもが突然癇癪を起こすのが心配だ」と書いている

お弁当づくり、食事をおいていく親

 食事についても聞いた。多くの親がお弁当を作って子どもにもたせるか、食事をつくりおいていた。

 お弁当を毎日つくる生活が突然やってきたわけだ。

 また弁当づくりの費用もかさんできていることだろう。

 お米や食材の支援があってもいい。

 給食費については、就学援助と相殺されている家庭が多いので、支払いについての問題は特に聞かれなかったが、突然食費が増えてしまっているという声は聞かれた。

約半数が収入源、あるいは無収入に

 では、新型コロナウィルスの感染予防のために、いったい個人の収入の変化はどうなのだろう。収入の見込みについて聞いた。

 43%が収入が減ると答え、5%が収入がなくなると答えた。48%が収入が減るのである。

 

画像

 

 ご存知のように、ひとり親世帯の相対的な貧困率は50%を超えており、収入、特に母子世帯の母親の収入は2016年の全国ひとり親世帯等調査によれば就労平均年収は200万円、パートアルバイトなどの平均年間収入は133万円である。さらに預貯金が少ないこともわかっている。同全国調査では50万円以下が50%であったが、しんぐるまざあず・ふぉーらむが実施したさらに低所得のひとり親対象の新入学お祝い金事業の受給者調査では、預貯金ゼロが23%、10万円以下と合わせると39%となっていた。まさに預貯金が少なく非正規の層に今回の新型コロナウィルスによる仕事の変化による減収が直撃しているのである。さらに追い討ちをかけているのが、一斉休校であることは間違いない。

一斉休校になって、子供を預けないとどうにもならない生活をしている惨めさや、親としての不甲斐なさを感じていて、鬱のようになっています。集団を避けなければならないとは分かりつつ、子供を集団の中へ入れ、職場では「帰らないの?」と心配されるものの、帰ってしまうと非正規雇用のため収入が減ってしまうので、バランスが全く取れずに困っています。

 子どもを育てている親の場合、危ういバランスで子育てと仕事を両立させているのだが、今回の新型コロナウィルス感染の広がりにより、子どもの感染防止という親の責任がさらに重くなるとともに、一方では、収入を得なければならないという責任がより強くなっているのだ。

 こうした傾向も、楽観的な親であれば「子どもはかかっても軽症だし」と笑っている親もいる一方で、子どもの健康を守らねばと必死になっている親もいるのが実情なのである。

 また今回の調査では、収入の変化については聞いたが、支出増について聞いていなかったが、回答者の何人かは収入が減り、支出(子どもの昼食代、休みの間のドリルなどの勉強の費用、マスク、衛生費)などが増えることも大変だと指摘していた。

ではひとり親の要望にはどのようなものがあるだろうか。

 休業保障をしてほしい, 児童扶養手当を2倍にしてほしい, 子どもが安心していける場所を増やしてほしい, 雇用保険に入っていない人にも休業保障をしてほしい, 有給休暇を取得できるように(あるいはたくさん取得できるように)してほしい、ベビーシッターを使いやすくしてほしい、こうした希望を多くのひとり親が書いていた。

 また在宅就労のためのスキルを身につけたいという人もいた。

 政府は今回企業が新型コロナウィルスの影響による休み、一斉休校による休業などでの休業保障をした場合は、1日8330円まで保障するとしている。だがそもそも企業が新コロナウィルスの影響による休みとして休業を有給にするのだろうか。

 あるいは自営業の親たちは、どうするのだろうか。

 改めて思うのは、こうした間接的な援助よりも、直接的な所得保障の仕組みをつくることこそ重要ではないか、という点だ。

 すでに直接的な手当支給のスキームとして子どもたちへの児童手当やひとり親世帯への児童手当がある。この児童扶養手当へ上乗せ支給をすることは仕組みとしては成り立つ。

 せめてもの救いは、3月に児童扶養手当の支給があることではあるが、しかし、その先が苦しい。

 休業保障のいくつもの穴を塞いでいくよりも、思い切って、児童手当や児童扶養手当のスキームを使うことを検討してもらいたい。

 そして、しんぐるまざあず・ふぉーらむは、ひとり親のみなさんへ、支援の計画を立てているところであることも付言しておきたい。

しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長 

NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長。当事者としてシングルマザーと子どもたちが生き生きくらせる社会をめざして活動中。社会保障審議会児童部会ひとり親家庭の支援の在り方専門委員会参考人。社会福祉士。国家資格キャリアコンサルタント。東京都ひとり親家庭の自立支援計画策定委員。全国の講演多数。著書に『ひとり親家庭』(岩波新書)、共著に『災害支援に女性の視点を』、編著に『母子家庭にカンパイ!』(現代書館)、『シングルマザー365日サポートブック』ほかがある。

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