今トレンドの検察庁法改正について、きのう11日【“不要不急”の検察庁法改正が、安倍官邸と黒川氏には“必要至急”のワケ】という記事をハーバー・ビジネス・オンラインに出し、Yahoo!ニュースにも配信されました。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200511-00218851-hbolz-soci

https://hbol.jp/218851

 黒川弘務氏は検察ナンバー2とされる東京高検検事長で、63歳の定年を迎える直前の今年1月、それまでの法解釈を覆す“超法規的”措置により、いわゆる定年延長(正式には勤務延長)された人物です。森友事件をはじめ政権に不都合な数々の事件を“闇”に葬ったとされ、“政権の守護神”と異名を取っています。違法性が指摘される定年延長は、黒川氏を検察トップの検事総長につけるためではないかと見られています。

 その後、ツイッターで次のようなご質問が寄せられました。

『法案応接団は「施行日の関係上黒川氏には無関係」と言い出していますが、まさに相澤さんの記事にもある通り、今法案を強行する理由は8月までに「再度の定年延長も不可能ではなくなる」ようにする事しか考えられないのです。この辺り、何か法案の抜け道があるのでは。相澤さんのお考え知りたいです。』

「政権の検察支配法案」であることが問題

 そこで改めて問題を整理してみました。

 今回の検察庁法改正案の主な内容は次の通りです。

1)検察官の定年を63歳から65歳に引き上げる。

2)検事長、検事正などの幹部は63歳で役職を降り、平の検事に戻る。

3)ただし内閣が必要と認めた場合、役職を続けることができる

 「定年延長がなぜ問題なの?」と疑問に思う方にお伝えしたいのは、それだけであれば誰も問題にしないということです。1)と2)はもともと去年秋にこの法案が検討された段階で入っていました。それが今年になって急に3)が加わったのです。

 これによってこの法案は、内閣の判断で、政権に都合の良い人物を検察幹部に残すことができるようにする仕組みに性格が変わりました。つまり、リンカーンの有名な演説「人民の、人民による、人民のための政治」になぞって言えば、この法案は「安倍官邸の、安倍官邸による、検察支配のための法案」であり、「政権の検察支配法案」と呼ぶのがふさわしい法案です。

 従って、不偏不党が求められる検察の独立性が侵されることになり、民主主義の理念にてらしてダメですよとなります。これは黒川氏の定年延長に関わりなく言えることです。

検察庁法改正案は黒川氏と無関係ではない

 では黒川氏との関係でいくとどうなるでしょう?

 まず施行日の問題です。検察庁法改正法案は国家公務員法など複数の改正案の一部であり、附則で施行日は令和4年(2022年)4月1日と定めています。しかし但書に「必要な施行期日を定めるものとすること」とあります。これは検察庁法の施行日を早めて、黒川氏の退職前に間に合わせることを可能にする裏ワザかもしれません。

 もう1点は施行日に関係なく、この改正案が検事長らのいわゆる定年延長を正面から認めているから、施行前でも延長正当化の根拠になりうる。つまり1月に行われた超法規的定年延長の再現がありえます。

 いずれにせよ黒川氏の定年再延長に道を開くもので、「黒川氏には無関係」という主張はあたらないでしょう。

 野党側はこの2点について、政府に「施行日を前倒しするのではないか?」「黒川氏の定年再延長をするつもりはあるのか?」と質問し、言質を取っておいた方がよいと思います。

黒川氏は検察庁法改正で68歳まで検事総長を務めることができる、と法務省

 これについて検察庁法を所管する法務省はどういう見解でしょうか?

 野党共同会派の小西洋之参議院議員が法務省刑事局に見解を尋ねました。「黒川氏が」と固有名詞をあげて聞くと答えないため、一般論として「今年2月に63歳の定年を迎える検事長がいた場合(黒川氏のこと)、今の法制度と改正される新たな検察庁法の規定により、検事総長を続けることができるのは何歳までか?」と尋ねました。回答は「68歳まで続けられる」というものでした。

 まず大前提として、今の制度は検事の定年は63歳。検事総長だけが65歳で、定年延長の規定はありません。しかし今年1月に政府は、一般の国家公務員は定年を最大3年延長できるという規定を検察官にも適用するという、これまでにない“超法規的”解釈変更を行って黒川氏の退職を半年先の8月に延ばしました。

 この解釈変更が通用するなら、今の法制度のもとでも8月に再び定年延長し、最大で3年、2022年2月に65歳になるまで定年を延ばせます。それまでに検事総長になっていれば、そこからさらに定年延長ができます。そして2022年4月に改正検察庁法が施行されれば、その規定に基づき検事総長の定年は内閣の判断で68歳まで延長できるため、めでたく68歳までの“長期政権”を維持できる。そして“官邸の守護神”としての役目を存分に果たすことができるというわけです。

「#検察庁法改正案に抗議します」のツイートが500万件超

 政権のため事件を握り潰してきたとささやかれる“官邸の守護神”を最強の捜査機関トップに据える。そんなことを正当化する法案が、コロナ問題の真っ只中に、最優先で審議されようとしています。

 そのことを「さすがにヤバイ」と感じた、これまであまり政治的発言をしてこなかった著名人が、続々と声を上げています。

 例えば俳優の井浦新さんは、妻が自民党の山本有二衆議院議員の娘ですが、こんな投稿を。

「もうこれ以上、保身のために都合良く法律も政治もねじ曲げないで下さい。この国を壊さないで下さい。#検察庁法改正案に抗議します」

https://twitter.com/el_arata_nest/status/1259235523056431105

 そしてキョンキョンこと小泉今日子さんは、9日から10日にかけて7連投し、大きな話題となりました。

もう一度言っておきます!#検察庁法改正案に抗議します」

1.000.000 超えました。この目に焼き付けました。おやすみなさい #検察庁法改正案に抗議します」

https://twitter.com/asatte2015/status/1259181644356829185

 しかし、こうしたツイートに対し「勉強不足だ」「政治的発言をするな」という投稿で圧力をかける人たちが大勢います。

 歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさんも「#検察庁法改正案に抗議します」と投稿していましたが、コメント欄で激論が繰り広げられて削除してしまいました。

https://twitter.com/pamyurin/status/1259647790604447746

 それでも「#検察庁法改正案に抗議します」というツイートは500万件を超え、反対の意思表示が急速に広がっています。

 しかし安倍官邸にとっては「必要至急」の法案ですから、与党側は抗議の広がりにおかまいなく、あす13日に衆議院内閣委員会で1日だけの審議で採決を行い、14日には衆議院本会議で可決させる構えだとみられています。

ツイッターだけでは動かない 有権者の声が政治家を動かす

 これに対し、直接国会議員に抗議の声を届けることで流れを変えようという動きが出ています。

 選挙で選ばれる国会議員は、地元選挙区の有権者の動向に敏感です。そのもとに「#検察庁法改正案に抗議します」というメッセージが有権者から大量に届くだけでも効き目があります。まして「賛成するなら次の選挙で対立候補に投票します」などと書かれていたら、平静ではいられないでしょう。

 弁護士有志が呼びかけているのは「国会議員いちらんリスト」(下記にリンク)というサイトを使って内閣委員会や地元選出の議員を探し、メールや電話、ファックスなど、どんな手段でもいいので、できる方法で国会議員に直接意見を届けましょう、という方法です。

https://democracy.minibird.jp/

 また「国会議員を探すのが難しい」という方には、もっと簡単な方法があります。与党、自民党・公明党のウェブサイトから意見を届けることです。党のウェブサイトに市民のご意見を受け付けるページがあります。

自民党 https://www.jimin.jp/voice/

公明党 https://www.komei.or.jp/etc/contact/

「#検察庁法改正案に抗議します」をさらに継続

 この問題については、あす13日(水)発売の週刊文春でも、公文書改ざんで命を絶った赤木俊夫さんと妻、雅子さんのお話にからめて記事にします。

 その上で、15日(金)20時からユーチューブで配信する「メディア酔談」で、高校新聞部仲間でメディアコンサルタントの境治と一緒に、このテーマについてきっちりお話ししたいと考えています。

【相澤冬樹&境治 メディア酔談「検察庁法改正の問題に迫る! #赤木さんを忘れない」】

https://www.youtube.com/watch?v=yqwOCFiQLC0

#検察庁法改正案に抗議します

#赤木さんを忘れない

【執筆・相澤冬樹】