「障害者は我慢せえ」と言うに等しい判決~障害者代筆訴訟 全面敗訴

判決を前に大阪地裁に入る原告の中田泰博さん(中央)と大川一夫弁護士(右端)

 障害があって自分で投票用紙にうまく書けない人が、投票で代筆してくれる人を自分で選びたいと訴えた“障害者代筆訴訟”。きのう2月27日、大阪地裁で判決を傍聴していた私には、要するに次のように言っているように聞こえた。

「障害者なんやから投票の秘密が守られなくても仕方ないやろ。我慢せえ

「公務員は政治的に中立なんやから代筆は公務員に任せておけばええんや

 …そうか? 違うやろ! ツッコみたくなるのは私だけではない。判決を傍聴していた車いすの方が報告集会で発言した。

「この国は障害者なんてどうでもいいんですね」

大阪地裁の判決は「障害者は我慢せえ」と言っているように聞こえた(画像撮影はすべて相澤冬樹)
大阪地裁の判決は「障害者は我慢せえ」と言っているように聞こえた(画像撮影はすべて相澤冬樹)

投票の秘密を守るため「自分が信頼できる相手にだけ代筆をお願いしたい」

 7年前に公職選挙法が変わり、障害者が代筆によって投票しようとする場合、投票所の担当者(公務員)に代筆を依頼しなければならなくなった。これでは見ず知らずの公務員に自分の投票先を教えることになり、憲法が定める投票の秘密が守られないではないか!? 脳性マヒで投票用紙に自分ではうまく書けない原告の中田泰博さん(47)はそこを訴えた。自分が選んだ信頼できる相手にだけ代筆をお願いしたいと。

「自分が信頼できる相手に代筆を頼みたい」そんな思いで…
「自分が信頼できる相手に代筆を頼みたい」そんな思いで…

判決は「代筆者を自分で選ぶ権利はない」

 ところが判決で大阪地裁の三輪方大裁判長は、中田さんが以前から知人に代筆を依頼していたことを捉えて「もともと投票の秘密は制約されていた」と指摘。「代筆者を自分で選ぶ権利はない」とした上で「公務員は政治的に中立で守秘義務もあるから、代筆を投票所の担当者に限るのは合理的」と判断。中田さんの訴えをすべて退けた。

判決後に記者会見する原告の中田さんと弁護団
判決後に記者会見する原告の中田さんと弁護団

自分が選んだ人に代筆してもらっても何も不都合はなかった

 だが中田さんは、まさに「公務員に言うのがイヤ」なのだ。公務員に不信感があるから、投票先を公務員に告げたくない。まして森友事件以降、公務員の政治的中立に疑問の付く出来事が相次いでいる。これで信用しろと言う方が無理だ。

 だから中田さんは、代筆者を自分で選べなくなってから選挙で投票していない。唯一の例外が、2年前、中田さんが住む大阪・豊中市の市長選挙だ。この時、中田さんは弾んだ声で電話してきた。

「相澤さん、私、投票できちゃいました!

 選挙のたびに投票所に出向いては断られていたが、この日はなぜか代筆者を自分で選ぶことが認められたというのだ。

 私は当時NHKの記者で、このことをニュースにした。障害のある中田さんが自分で選んだ人に代筆してもらっても何の問題も起きなかったし、中田さんの1票は有効票となった。それがニュースだ。これでいいではないか? 何がいけないと言うのだろう? 一審判決は「投票管理者が違法な運用を行っただけ」と一蹴したが…

誰しも障害を負う可能性はある。自分のことと受けとめよう

 判決からにじむのは「障害者は権利を制約されても仕方がない」という考え方だ。だがそれこそ差別の温床だろう。私たちは誰しも事故等で明日にも障害を負う可能性がある。他人事と思わず自分のことと受けとめたい

 中田さんの代理人、大川一夫弁護士は、森友事件追及の端緒となった豊中市の木村真市議の裁判の代理人でもある。その大川弁護士は語る。「今の政治や公務員に信頼はない。なんで障害者だけ公務員に投票先を言わないかんのか? そんな中田さんの声を裁判官は聞いていないとしか思えない」

 中田さんも判決後の記者会見で訴えた。

「愕然としました。私は勝てるもんだと思っていましたが、ほぼほぼ完敗です」

 その上で力強く宣言した。

「こんな判例を確定させるわけにはいきません。控訴します

【執筆・相澤冬樹】

こんな判決を確定させるわけにはいかない
こんな判決を確定させるわけにはいかない