3万人から税金取り過ぎの大阪市「20年たったら返さない」が覆る公算強まる

最高裁弁論後笑顔を見せる原告側の伊藤勝彦弁護士(右)と北名剛弁護士。左は大阪市側

 行政が違法行為をしておいて「20年たったから賠償しないもんね」なんて、あなたは許せますか?

 大阪市は、長年にわたり固定資産税を取り過ぎていたとして、約3万人に総額約16億円を返還すると2月21日に発表しました。ところが返還額が3倍前後に膨らむ可能性が出てきたのです。「20年以上前に建てられた建物については賠償責任が及ばない」という大阪市の主張が、最高裁で覆される公算が強まったからです。大阪市が敗訴した場合、返還額は40億円から50億円ほどに達すると原告側は試算しています。

違法な“独自基準”で大阪市が税金を取り過ぎ

 事の発端は、今をさかのぼること42年前。1978年(昭和53年)、大阪市は市内のビルについて、国の規準とは別の独自の規準に基づいて評価額を決め、固定資産税を課税することにしました。大阪市は地盤が軟弱なところが多く、ビルは多数の杭を使って建てることが多いため、算定方法を変えたといいます。

 これによって税額は大きくなります。この独自基準が国の基準と違うとは普通の市民にはわかりませんが、たまたまある建物の所有者が専門家にチェックを依頼して違法性に初めて気づきました。そこで「税金の取り過ぎだ」と返還を求めましたが、大阪市の担当者は「独自規準は違法ではない。計算間違いがあっても返す必要はない」と、けんもほろろの応対だったといいます。

 そこで所有者は6年前、大阪市に賠償を求めて裁判を起こしました。最高裁まで争った結果、独自規準の違法性が認められて、去年の暮れに大阪市の敗訴が確定。所有者に292万円が支払われました。

 これを受けて大阪市は2月21日に今後の対応を発表。同様の規準で課税された建物が約6000棟あるとして、約3万人の所有者を対象に固定資産税の取り過ぎ分を返還する方針を明らかにしました。返還総額は約16億円に上ると試算しています。

毎年課税される固定資産税に20年の「除斥」は適用されるのか?

 ところが、同じように独自基準に基づく固定資産税を巡り大阪市を訴えた裁判はもう1件あるのです。こちらは一審と二審で原告の訴えが退けられています。

 それは、この建物が建てられて最初に固定資産税が算定されたのが20年以上前だったからです。不法行為があってから20年をすぎると請求権がなくなる「除斥」という民法の規定に基づき、原告に請求権はなくなったという大阪市の主張が認められたのです。

 これに対し原告は「固定資産税は完成時だけではなく毎年課税されるのだから、違法な規準に基づく不法な課税が毎年行われ続けてきた。だから除斥は適用されない」と主張し、最高裁に上告しました。

20年以上前の建物も賠償対象なら大阪市に甚大な影響

 上告を受けて最高裁はきのう2月25日、双方の主張を聞く弁論を開きました。

 最高裁は、元の判決を見直さずに上告を退ける場合は弁論を開かず、いきなり判決や決定を出します。逆に弁論を開く場合は、何らかの形で二審の判決を見直すのが通例です。今回の場合は「除斥により請求権はなくなった」という大阪市の主張を認めた二審判決を見直し、「除斥は適用されない」という原告の訴えを認め、高裁に差し戻す公算が強いと原告側弁護士は見ています。

 大阪市が21日に発表した返還額の試算は、20年以上前に建てられた建物には除斥が適用されて賠償の対象にならないことを前提にしています。もしも最終的に原告側が勝訴すれば、20年以上前の建物にも同様の返還を行わざるを得ません。原告側の試算では、その総額は大阪市の試算の3倍前後、40億円から50億円に達するといいます。さらに再算定や返還事務にあたる市の職員の業務負担も膨大なものになると見られます。

 これほどの大問題を大阪市はどうしてこれまで放置してきたのでしょう? 除斥を盾に納税者に誠実に対応してこなかったツケが傷口を広げたと言えるのではないでしょうか? 大阪市課税課は「判決の前でもあり、今日の時点ではコメントはできない」と話しています。

 裁判所はどこも厳めしいものですが、とりわけ最高裁判所は威圧的な外観です。注目の最高裁判決は3月24日、ここで言い渡されます。

【執筆・相澤冬樹】

この厳めしい建物で3月24日に最高裁判決が出る(記事中の画像はいずれも相澤冬樹撮影)
この厳めしい建物で3月24日に最高裁判決が出る(記事中の画像はいずれも相澤冬樹撮影)