児童手当。コロナ禍での迫られる将来を見据えた選択とは

(写真:mon printemps fleuri/アフロイメージマート)

児童手当、その制度はどのような仕組みになっているのだろうか

昭和47年に、家庭の生活の安定に寄与し、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資するために創設された児童手当。その考えに基づくのであれば、児童を持つすべての家庭に対して支給されるのが確かに望ましいであろう。現在、児童手当は、「中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方」に支給されている。その金額は、児童の年齢と養育者の収入によって異なる。3歳未満であれば、月額一律15,000円である。3歳以上小学校修了前であれば、1人あたり 月額10,000円(第3子以降は1人あたり 月額15,000円)である。中学生であれば、月額一律10,000円である。

但し、この支給には、所得制限が設けられている。つまり、養育者の収入が一定以上ある場合には、給付が受けられない仕組みになっている。だが、ゼロではない。確かに低所得者対策として、住民税であれば非課税世帯であるか否かで、受給対象を線引きしている。そこには「もらえるか否か」の二者択一がある。そのため、ある所得を超えると支援が打ち切られ、稼ぎを増やす意欲をそぐ「貧困のわな」に陥りやすい。だが児童手当は違う。制限をオーバーした高所得者と称される養育者への救済措置として、児童手当には「特例給付」がある。児童1人あたり月額一律5,000円支給されている。この特例給付の廃止、もしくは特例給付の所得制限の判定を「主たる生計者」から「世帯合算」への見直しが問題となっている。

確かに、多くの子育て世代にとって、お金のやりくりは切実な問題である。常々得ていた児童手当による支給が、給付対象外になるということは、事実上の収入減少を意味する。慎重な検討が求められる。だが、引き続き支給していくのであれば、財源の確保が必要である。児童手当は、国、地方(都道府県、市区町村)、事業主拠出金で賄っている。そして、今般新型コロナウィルス感染症も相俟って、財政状況が一層厳しくなっている。児童手当に限らず、様々なサービス給付に選択が迫られている。我々は、制度をよく理解し、変更によって生じる問題を把握したうえで、将来に向けた選択が求められている。

特例給付見直しによる影響を、どのように考えるべきか

当分の間の措置としての児童手当の特例給付。所得制限を超える一定の収入を得ている世帯への支給の見直し。可能であれば維持したい、だが我々は今直面する社会情勢を踏まえてどう考えるべきなのか。

ここで問題とされる点はいくつかある。1つめに所得制限のルールである。所得制限は、養育の収入と扶養者数で決まる(下表参照)。

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(出典)内閣府「児童手当」をもとに筆者作成

たとえば、養育者が民間企業に勤務する会社員。家族構成が、専業主婦(夫)と子どもが2人の場合であれば、扶養者数は3人になる。所得制限に係る年収は、960万円以上が目安になってくる。つまり、ここでいう所得制限は収入だけで決まるのではなく、扶養者数が考慮されているのが特徴だ。

2つめに、「特例給付」の廃止もしくは所得制限の判定方法の見直しによる影響の度合いである。通常所得制限とは、制限を超えた場合には、全く支給されない。だが「特例給付」は異なる。「特例給付」の場合は、所得制限を超えた養育者に対しても、月額一律5,000円支給されている。

まず、「特例給付」の廃止が実際起きた場合を考えたい。主たる世帯主の年収が1,000万円、妻が専業主婦、子どもが2人である世帯の場合には、特例給付で毎月10,000円の給付を受けており、子どもが中学生になるまで合計180万円が支給される。これがゼロになることを意味する。

つぎに、所得制限の判定方法の見直しの場合を考えてみる。主たる世帯主の年収700万円、配偶者が年収300万円、子どもが2人いる世帯を考える。今まであれば、所得制限に係らず毎月25,000円の支給を受けており、子どもが中学生になるまでの12年間で約400万円の支給を受けている。これが所得制限の判定の見直しが実現するとゼロになる。

つまり、廃止であれまた判定方法の見直しであれ、そこには子育て世帯への影響が生じるのは事実だ。そしてその影響の度合いは異なっている。

3つめに、これら見直しの議論の契機は何なのか。そして今見直しを行うとする、その理由は何か。見直し論議の引き金となったのが幼児教育・保育の無償化に端を発する。幼児教育・保育の無償化とは、全世帯を対象にしている。このことから、低所得世帯だけでなく高所得世帯も受けられる。児童手当と併せて考えれば、一定の収入を得ている世帯は、児童手当だけでなく、これら無償化の恩恵を受けられる。

一方、見直しの理由として待機児童の解消が挙げられている。現在、待機児童数は1万2,000人を超える(2020年4月時点)。そのため、今年度からの5年間で新たに14.1万人分の保育施設の整備に向けて約1,600億円の追加財源が必要となる。今まであれば、企業の拠出金を財源としてきたが、新型コロナウィルス感染症の感染拡大によって企業への打撃は大きいことが理由として挙げられている。待機児童の解消の財源の確保を理由とするのであれば、当然の如く、子育て支援政策の中から財源のやりくりが前提とした議論となる。だが果たして、子育て支援政策にキャップをかけて、結論を見出すのが望ましいのだろうか。どうしても必要と考えられる政策であるならば、全政策を対象に検討をすることも重要であろう。今一度問いたい。児童手当の特例給付が本当に必要とされる政策であろうか。

児童手当の仕組みや特例給付の影響を踏まえ、我々の望ましい選択は何か

我々は、厳しい選択の岐路に立たされている。人口減少に伴う厳しい財政状況に加え、新型コロナウィルス感染症によって新たな役割を公的機関は求められている。我が国のサービス給付において,長期展望を見出せないまま、今ある制度を維持していく場合には、更なる財源確保が求められるだろう。だが、それは将来的に1人あたりの負担が重くなることに繋がる。

児童手当の仕組み、特例給付のあり方そして、その特例給付の廃止また見直しに至った契機と理由、そして実際に特例給付が変更になった場合の影響を考えてきた。児童手当の特例給付は未来を担う子どもたちへの支給である。であるならば、確かに子育て支援政策のなかで、財源をやりくりするというパイの奪い合いでは、決して望ましい結果に繋がらないだろう。だが新型コロナウィルス感染症によって、財政状況は深刻さを増すなかで、すべてのサービスが今後も変わらず提供され続けるのは難しい。我々は、サービスの意義を理解し、果たして本当に優先されるべきサービスなのかを問いなおし、充分検討したうえで、将来を見据えた選択を決断する時代に来ているのであろう。