中核市の子育て支援政策の充実化。そこに潜む財政的課題。解決の糸口を民間企業の参入に期待する。

(写真:アフロ)

待機児童問題への対応

 待機児童が社会的問題として浮上し、安心して働きながら子育てをできる地域を目指し、待機児童加速化プランをはじめ様々な策が講じられてきた。各地域で、新たに保育所を増やし、勤務する保育士を雇用し、児童の定員数を増加させた。だが、一向にゼロにはならない待機児童数。建設事業費であれ、人件費であれ、政策の充実化には多くのコストが生じる。将来のシナリオを刻む財政負担をどう捉えるのか。財源の捻出は、行政政策を継続的に進めていくうえで、どうしてもつきまとう課題である。

 新たに政策を打ちだして制度の充実化を図る。これ自体は、確かにとても望ましいことだ。だが一度打ち出した政策は、やめることが難しい。少子化人口の割合を上昇させることは、自治体の将来の姿を描くうえで欠かせない。一方で、少子化人口の増加を目指して、子育て政策の充実化を図ることは、潜在的利用者が相対的に多くなり、将来世代への負担に繋がるという課題にぶつかる。そこには、政策を検討するなかで、慎重な対応が求められる。

中核市である姫路市の女性の就業と出産

 人口規模53万都市(2018年10月時点)である中核市としての姫路市では、図1で示すように、2000年代後期に比べ、2010年代前期のほうが、さらには2010年代後期のほうが、20歳代後半から40歳代の女性の就業率は増加しており、70%前後で推移している。しかも、結婚・出産時期の就業率が低下するとされるM字カーブの底部部分の上昇がはかられている。また、1人の女性が生涯に産む子ども数を示す合計特殊出生率は図2にあるように、国の平均よりも、県内平均よりも、姫路市は高い値で推移しているものの、人口規模が一定の規模を保持するとされる人口置換水準には下回る。

図1 姫路市の女性の年齢階層別就業率

画像

出典)総務省「国勢調査」より筆者作成

図2 姫路市の合計特殊出生率

画像

出典)厚生労働省「人口動態統計調査」より筆者作成

活躍する私立認定こども園、私立保育所そして認可外保育所

 働きながら子育てをするのに、子を預ける場所は欠かせない。姫路市では子を預ける施設として幼稚園、認定子ども園そして保育所を提供している。その提供施設の特徴として、図3で示すように、姫路市圏内では、幼稚園が減少するなかで、認定こども園および保育所の施設数が増えている。なかでも公立と私立とに運営形態を区別した場合に、認定こども園であれ、保育所であれ、公立と比較し私立の施設数が著しく多い。減少傾向にある幼稚園では、公立幼稚園数には変化が見られないものの、私立の幼稚園数が減少し、それらの多くは私立の認定こども園に移行している。この傾向は入所児数からも同様の動きがみられる。

図3 施設数および利用者数の推移

画像

出典)厚生労働省「人口動態統計調査」より筆者作成

 さらに、認可外保育施設が多いことも姫路市の特徴である。その数は市内で80程度施設数があり、幼稚園数や認定こども園数と比べ、はるかに認可外保育施設の数は多い。利用している入所児数は3,000人を上回る。入所児の内訳を年齢別にみると、3歳以下で5割を超えており、不足する認定こども園および保育所に対して認可外保育所は重要な役割を果たしている。これら認可外保育所の施設数も含め、姫路市では待機児童問題はマクロベースでは一定解消されている。だが区域単位で確認した場合には、必ずしも充足しているとはいえない現実がある。

図4 認可外保育所の施設数および利用者数の推移

画像

出典)「姫路市統計要覧- 平成29年(2017年)版 -」より筆者作成

子ども支援政策における区域提供体制

 姫路市は全域で534平方キロメートルの面積を持つ。そして子を持つ世帯が集中している地域もあれば、そうでない地域もある。子ども・子育て支援政策を行うにあたって、姫路市では市内を13区域に分けてサービスの提供を検討している。これは、子ども・子育て支援法第61条第2項において、地理的条件、人口、交通事情、その他の社会的条件を踏まえて、教育・保育の施設の整備を行うとしている。そこで昭和 45 年度策定の姫路市総合基本計画以降、地域面積や人口比、土地利用などを勘案し、安富、夢前、香寺、北部等などのコミュニティのまとまりを表す13の地域ブロックを採用している。

 図5で示すように、5歳児以下の子をもつ世帯の居住地域は、土地区画整理事業によって宅地開発が進む中部第二区域に集中しており、次いで播磨区域および広畑区域に多くみられる。児童数が少ない家島区域と比べた場合に、中部第二区域に居住する子ども数は27倍にのぼる。子の数を比較しただけでも区域間格差が生じており、子を預ける施設へのニーズも区域ごとに異なってくる。中部第二区域では子を持つ親が預け先として、区域外の施設を利用することも多い。このことから、区域間調整が必要とされている。

 

 姫路市で施設数の検討をするにあたって、区域ごとに第1・2号認定と第3号認定の各ニーズの見込み量を調査し、区域間調整を行ったのち、区域ごとの必要施設数を算出している。ニーズ見込み量には、市民意向調査を就学前児童及び小学生の保護者を対象に「姫路市子育て支援に関するアンケート」を利用している。不足する施設数に対して、市による施設整備だけでは、供給体制の確保が困難であるため、民間参入を促進している。具体的には、供給量不足が解消されていない小学校区に対して、民間事業者を活用し量的拡大を検討している。また、継続的に事業運営が見込める市立施設については、指定管理者制度の導入を取り入れている。

図5 市内13区域の地理的概要と人口構造

画像
画像

出典)「姫路市統計要覧- 平成29年(2017年)版 -:市域のうつりかわり」より抜粋

姫路市保育所等設営運営事業者の募集

 実際に姫路市では、「姫路市児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例」に基づき、特定教育・保育施設が不足する地域に民間からの応募を求めている。対象は中部第二区域の城陽小学校区に1施設、荒川小学校区に1施設である。応募者の資格に求められている要件は、法人格を有し、2018年4月1日時点で保育所または認定こども園を運営していることのみである。

 

 事業内容は、建設用地を見つけるところから求められている。施工業者の選定、施設の運営、建設資金・運転資金・施設開設に至るまでの法人運営および施設運営に要する経費などの資金確保、資金借入の確保、近隣への説明に至るまでの全てを応募者である民間事業者に任せている。

 

 なお、社会福祉法人または学校法人には施設整備費への補助が用意されている。その金額は、本体工事費、設計料加算、保育所開設準備費加算で積算されており、2号および3号定員に応じて補助見込額が決定される。それ以外の法人に対しては、補助金は交付されないものの、施設運営開始後に施設型給付費と減価償却費加算が適用される。

 施設整備費には莫大な費用を要する。これらを全て市が供給するには限界にきたしている。現在および将来の利用者が受けるであろう総便益に対して、初期投資を含めた総コストをどう捉えるか。サービスの提供方法は一つとは限らない。質を担保することが前提となるが、民間参入を促進し量的拡大を図り、かつ既存の施設に対しても指定管理者導入を検討する姫路市の方針は、限られた財政予算のなかで考えうる方向性であろう。