世界を相手に挑む医療:サービスに見合った収益を狙う医療のグローバル化。アウトバウンドに期待が膨らむ。

(ペイレスイメージズ/アフロ)

 優れた機器とサービス。それを武器に海外展開を図りつつある我が国の医療。それぞれの国のニーズに応じた提供を講じるアウトバウンド。そこには適切な収益・対価を得ることを目指すビジネスとしての医療における海外展開がまさに進められようとしている。この医療の国際展開は国を挙げての施策としても位置付けられている。2013年「日本再興戦略」で閣議決定され、翌年の「日本再興戦略 改訂 2014」、翌々年の「日本再興戦略 改訂 2015」、さらには「日本再興戦略 改訂 2016」及び「未来投資戦略 2017」で、日本の優れた医療サービスの国際展開をアウトバウンドから推進していく旨が明記され、医療の国際展開は経済成長を図る上での重点施策として位置付けられた。

 アウトバウンドと一言でいうが、その道のりは決して平坦とは言えないだろう。最初の取り掛かりは実証調査。現地に赴き、日本製の医療機器を持ち込み、デモンストレーションを実施する。次いで、日本人の医師を現地に派遣し、現地スタッフへの日本製の医療機器のトレーニングを行う。それからが事業展開だ。事業化の準備に挑むことが求められる。経営という軸を柱に、収支を見据えた具体的な事業計画を練る、現地事業を展開するためのパートナーの選定そして運営体制の構築と一つひとつステップを踏んでいく必要がある。

 その実践化した事例としてカンボジア救命救急センターがある。東京都八王子にある北原国際病院が、カンボジアのプノンペンで救命救急センターを2016年に開業している。この事業に、日揮、産業革新機構、JICAが出資している。その規模は、脳神経外科や整形外科等を持つ病床数50床の医療機関であり、段階的に病院の高機能化を図り、人材を育成するための施設が整備されてきている。センターができることで、従来であればカンボジア国内で治療を受けることができなかった人々、なかでも交通事故による負傷者に対して、高度治療の提供がなされるに至った。これら事例は下記のように、今世界を相手に進められている。

図 アウトバンドの事例

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出展)経済産業省「経済産業省の支援により事業化・拠点化に結びついた主なプロジェクト例」より抜粋

  一方で、課題も浮き彫りになってきている。確かに、 拠点を設定し、運営実績もでて、そこには一定の収益が得られることが実証されてきている。とはいえ、経営主体になる投資家の圧倒的な不足は否めない。たとえ資金は出すに至ったとしても、経営責任は取れないと主張する投資家が少なくない。課題はそれだけにとどまらない。医師を派遣する仕組みにも検討が必要とされている。単発ではなく、あくまでも継続的な医師派遣が求められる国際事業。そこには海外医療者を受け入れる研修制度の確立もシステムの中に組み込むことが重要である。さらには、海外で病院の計画・設計・建築・開設・運営といったトータルプロデュースをするノウハウの不足。問題は山積みである。だが、日本のみならず、新興国においても経済成長に伴う社会の急速な高齢化への対応は大きな課題となるなかで、医療の国際展開を促進するための取組みは、世界の健康課題に貢献しながら、日本の経済成長に資するものであり、重要な施策であろう。